喧嘩
17歳の桜坂杏里の遺作となります。ぜひご覧下さい。
「夏にしては寒いわね。でも心地いい風だね。」
「油断しては行けない。人影が見える。」
「こっち来いよ!オラぁ。」スキンヘッドのボディーガード系ヤクザが襲いかかってくる。
「行くよ。美姫。無理はするなよ。」
「分かってる。これでも合気道習ってたんだから。」
「おら!どうしたそこの女っぽい奴。逃げんのか?」
「馬鹿野郎。逃げるかってんの。」
おもむろにメイド服から警棒を取り出す。
「そんな警棒効かねぇぞ。俺達の身体は強いんでな。」
「本当かな?ならその強さ試してみるかい?」咲耶は挑発した。
「舐めてんじゃねぇぞ。このガキ!」
「勝負あったな。」咲耶は警棒に有るボタンを押した。
「痺れたい奴はこっち来いよ。あぁん!」咲耶が一喝する。
何人ものヤクザ系の人が殴り掛かるが、その警棒から発生した電磁波によって腕が痺れて倒れた。
美姫も得意の合気道で上手いこと倒しているようだ。
「畜生。ただで帰れると思うなよ。綾ならお前なんて倒されるぜ。」倒れながら兵長格の男が言った。
「さぁ、それはどうかな。負ける気は無いんでねぇ。」思いっきり咲耶は殴る。
「美姫行くよ。立花愛也の喧嘩は俺達が制す。」咲耶はそう言って。湯殿トランプホテルを目指して進んだ。
湯殿トランプホテル、トランプのようなデザインの洋館のホテルであったが、アクセスが不便であり、心霊現象の噂も立てられて閉館となってしまった廃墟だ。
そんな所で争うというのは、納涼的情趣を感じさせるが、俺の家系は科学者が多い。科学は心霊現象とは無縁である。何も怖いことは無い。
「美姫寒くないか、大丈夫?」
「オレは、別にズボンだから大丈夫だけど。咲耶は?」
「大丈夫だよ。気にしないで。」
メイド服とは言え、タイツを履いている。そこまで寒くは無い。
「立花愛也に恋人は居たか?」
「居たね。でもなんでそんなこと聞くの?」
「きっとその男も戦うことになるだろうから。で名前まで分かるか?」
「確か、今井椿とかいう名前だったはずだわ。その男も女装癖が離れなくなって学校を退学したんだけどね。でもあの子は人を殴れるような性格じゃなかったと思うんだけど。」
「人は見かけに拠らずということもある。鬼の中の仏もいるが、仏の中の鬼というのも居るのかもしれないぜ。今井か。分かった。気をつける。美姫、念の為にこの銃を渡しておく。」
咲耶は美姫に一丁の銃を手渡した。
「これは何?中身は、まさか本物の銃弾じゃ無いよね?」
「あまり大きな声では言えないけどな。これは、引き金を弾けば網が出て捕捉する。そしてそこには効き目即効の睡眠薬が塗ってあるから、すぐに目を瞑ってしまうだろう。後遺症の心配はないから心配するな。」
「咲耶、有難う。私頑張る。」
「おうよ。先行こうぜ。」
恋人二人はトランプホテルを目指して進む。
17歳の桜坂杏里は今日を以て居なくなりますが、これからも18歳の桜坂杏里を宜しくお願い致します。