表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
咲耶伝~The secret of mind reading~  作者: 恋住花乃
咲耶伝1st Ver
5/9

湯船

湯殿高校には、温泉施設があると言ったが、在校生及びその家族には金は掛からないのである。

男湯の暖簾をくぐると脱衣所があった。約1名先客がいるようだ。

普通はそこにズボンがある筈なのだが、メイド服があった。


『えっ?これはまさか、間違えて女の子が男湯に?』念の為、自分が間違っているのかと思い暖簾の前に、青地に白で男湯と書いてあった。

間違いない。これは事実である。

まぁ、損するのはその女の子である。きっと嫌なものを見てしまったと思うだろう。しかし、悪いのは彼女だ。そう思って、服を脱ぎ風呂に入った。


風呂には長髪の人が居た。間違いだと教えてやるのが、紳士というものよ。

「あの…ここ?」

「ん?どうしたの?君。」その声の主は振り返った。カワボではあるが男であった。

「いや、何でもありません。」僕は動揺した。だって、普通はメイド服なんて女性が着るものだろう。なんでこの少年が来てるのだろうか。

「あ、もしかしてメイド服で、女の子が入浴していると思った?」

「やっぱり、顔に出ちゃってます?」僕は彼に聞いた。

「そうだよね。やっぱり変だと思っちゃうか。」彼は落胆していた。

「いやいや。そんなこと無いですよ。僕もよく女装しますし。」

「えっ?君は自発的女装なの?」彼は訊いた。


「僕もね。たまに女装して、自分ならざる自分を愉しむんだ。」

咲耶はそう言って、浴槽に入り、その人と肩を並べた。

「へぇ。何か難しいな。あっ!自己紹介してなかったね。僕は立花楓。高校二年生だよ。」


「僕は白峰咲耶だ。宜しくね。」

「あっ!白峰君ってあの都会から来た人?なかなか可愛い子だって聞いたけど。」

「可愛いか?オレ。」咲耶は尋ねた。

「うん。なかなかの美形だとは思うけど。」

「そうか。分かった。それより、何で楓っていう女の子のような名前になったんだ?」

「本当ははやてになるはずだったんだけど、お父さんが酔っ払っていた勢いで、かえでって書いちゃったんだ。」


「漢字難しいからな。だけど、女っぽくなって嫌な思いはしなかったか?」咲耶は訊いた。

「それは無いよ。かえって、楓という名前が好きになって来た。男子としての楓と男の娘としての楓、何て言うのかな。さっきの言葉を借りると、自分ならざる自分を愉しむことが体に染み付いてきたのかな。」


「こりゃあ、なかなか頭良いな。お主、何処の部活だ?」

「僕の部活?哲学・心理学応用研究部。」


「また小難しくて、メジャーな部活を。活動内容は?」


「まぁまぁ、そろそろ僕も逆上せてきたから出るよ。詳しくは特別棟の二階、資料室に来れば分かるよ。明日あたりでも来たら?」

「分かった。明日行ってみるよ。」

「ありがとうね。じゃあまた。」

楓は風呂を出て行った。

1人しかいない湯船で咲耶は、この硫化泉を思い切り愉しんだ。


「あぁ、いい湯だなぁ。」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ