放課後
白峰咲耶は、外を眺めていた。長閑な風景だ。
こんな風景を眺めるのはいつぶりだろうか。
ここは自分にとって良いところになるだろう。
都会の学校に通っていた時は、昼休みも私語を交わすこともなく、皆教室に立て篭り…じゃなかった。閉じこもり。
熱心に勉強していた。これは高校一年生の時だ。
勿論、熱心に勉強することは悪いことではない。むしろ、素晴らしいことだ。しかし、何かをするということは何かを失うことで、その高校生活という名の青春を失っているのではないかと思った。
受験は団体戦と言われるが、結局は自分が勝負するんだ。
彼らには心が無かった。放課後でも課外の有無に関わらず、皆、教室に居残る。さっきは訂正したが、立て篭りの方があっているかも知れない。見えない力が働き、帰りにくくなっている。
こんな奴ばかりが集まっていたかつての高校で1年間辛酸を舐めた。僕は1年間、あのエリート校という名の監獄で刑務所暮らしをして、精神障害で責任能力無しになり不起訴及び出獄したのだ。
一体僕は何の罪を犯したというのか。
そんな難しいことを考えていた。日は落ちていく。
「白峰君。どうしたの?」美姫の声がした。
そして後ろには柔らかい感覚が。
「な!何するのよ。」僕は急に口走った。咄嗟の事でオカマ口調になってしまった。
そして、体ごと反転した。
美姫は壁ドンした状態でこう言った。
「白峰君。いや、咲耶…私、あなたの事が好きなの。」
中学時代は恋愛もしていなかった。そして高校一年の時もあの感じだ。恋愛なんて無理であった。
そんな僕が目の前にいる可愛い美少女に壁ドンされて告白されたのだ。訳の分からないことこの上ない。
「待ってくれ。俺には許婚が居るんだ。だから、もう少し待ってくれ。」
「良いわ。その前に…」不意に甘い口づけをされた。
ファーストキスだった。
性的なものに疎かった僕は、もう混乱しまくりである。
英語が全く話せない日本人が、目を覚ましたら英語で会話しなければならないようなことであった。もう状況が読み込めなかった。