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初日
「白峰君。おはよう。宜しくね。」
「あ、あの名前は何ですか?」
「私は、湯殿美姫。」
「宜しくお願いします。僕、都会から来てよく分からないと思うけど。」
「都会ってどんな感じなの?」その少女、湯殿美姫は白峰咲耶に話し掛けた。
「都会って中々シビアな世界だよ。今でも、きっと昔のクラスメイトは耐えきれなくて逃げ出したんだ。そう俺を後ろ指差してるんだ。でも良い。あんな地獄なんて僕には似合わないよ。」
気が付くと泣いていた。都会であったのは、残酷な苛め、過度な教師の期待。空回りする自分の成績、格差社会。学力で全てが決められる。給食なんて上位はフランス料理のフルコースで、底辺はパン一枚。
いつしか、底辺は逃げ出し自宅に籠る人が増えていった。あるものは家で辞世の句を詠んで失踪したり、あるものは特高に逮捕されたりした。
僕は逃げ出して正解だった。
都会は恐ろしい。田舎こそ我が生きる場所だと初めて悟った。
勿論。僕は本当の馬鹿ではない。エリートの中で少し劣るだけだ。だがここでは楽しめそうな気がした。