事始め。
白峰咲耶は、マッドサイエンティスト・シラミネの名で知られる一族の末裔である。
彼は、その変哲ぶりに虐めを受け、ついに女装し始めたのだ。
名前が「さくや」である為、女の子みたいだと嘲笑され家出をした。
鉄道に揺られ、行方をくらました。
地元の高校を自主退学し、温泉地、湯殿を目指した。
全く、知る人が居ないはずの湯殿。
しかし、「おう。咲耶じゃねえか。どうしたんだ。その女っぽい服装は。」
逃げたが、あっという間に捕まった。
「貴方は何故、僕の名前を知っている。」
「がっははは。何を御冗談を。このワシが誰だかわからんのか。」
「さあ。」
「ワシは、お前の祖父じゃ。長い旅をしとったがこの湯殿に辿り着いたんじゃ。」
「鴎耶様。もしや貴方は。」
「そうじゃよ。お前が小学一年の時に失踪してな。もう、死んだものだと思っただろう。だが、ワシはお前に会えて本当にうれしい。現在64歳であるワシは、もうしばらく会えんかと思っていたぞ。」
「でも何で僕の事が分かったの?」
「分かるんじゃよ。ワシにはな。それより咲。逃げてきたんだろ。マッドな父から。」
「いや。虐めに遭って。」
「その名前も父が付けたからのお。アンタは大変じゃ。家も無いだろうから、我が家に住めばよい。ちょっと借りてる要件が大変じゃがな。アンタが来れば問題ない。」
「その要件とは。」
「村の地主の娘と結婚するということじゃ。」
「僕は、恋愛結婚しかしないつもりだよ。おじいちゃん。今どき、政略結婚なんて古いよ。」
「そうかい。なら分かった。政略結婚なんてしなくて良いよ。」
「お爺ちゃんごめんね。」
「大丈夫。咲耶、湯殿一高に入学しないか?編入だが。あんたのレベルじゃ余裕だろうがな。偏差値52は。」
「考えておくよ。」
二人は暫くバスを待った。会話が続く。