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ドールめいかー  作者: 針山田
1/6

:ウサギさん

ウサギが、眠ってる

布団をかけて目を閉じて。


そこは兎の、俺の妹が寝ている筈の布団だった。



普通に考えてぬいぐるみなんだけど、抱き枕なのかな?


やばい、心拍数上がってきた・・・


めくると兎がウサギの背中にキスするように、目をつぶって寝ていた。

しかしこれは抱き締めているというより、は・・・


晴「ふ・・・くくっ、潰れてんじゃん・・・」


ズボンのポケットから携帯を取り出し、スピーカー口を押さえ撮影ボタンを押す。

うん、写真写りも完璧。

データはプライベート用の鍵付きのフォルダに移動させて、こちらも完璧。

これで25枚目、初対面から二週間経過するがまだまだか・・・。



この体位も気になるが、兎も苦しそうには見えないのでそっとしとこう。



朝食は義母さんがハート型に握ってってくれた鮭の握り飯。

時刻は9時半と遅めだが、今は夏休みなのだから問題ない。

兎の朝食も同じものが用意されているが、赤い種類の野菜ジュースがセットになっているようだ。


何でも兎は野菜が苦手で、義母さんが一緒についていないと食べないらしい。

その為今日のように出掛けなくてはいけない時は、こうして野菜ジュースを置いていくのだとか。


意外だった。

兎は物分かりもよく、手の掛からない大人しいタイプだと思ってたからだ。


・・・と、小さな足音が聞こえてきた、兎だ。


扉の方に目を向けていると姿を見せたのは一匹のウサギで、何やら手を振っている。

おはようって言いたいのかな?


晴「おはよう。」


今度は首を縦にブンブン振っている。

やった、正解。


ウサギの顔の横からちらりと覗く眼が愛しく、そっと近づいてみると顔を完全にウサギで隠された。


だがこのくらいでめげたら、ロリコンなんて務まらない。


晴「ウサギさん、一緒にご飯、食べませんか?ジュースもありますよ。」


手に取った野菜ジュースを差し出してみると、ぺこりとされた

それからジュースを受け取り・・・後ろ姿は兎で部屋に戻っていった。



俺とご飯は・・・!?

俺よりもジュース、俺よりもウサギ!?


事実

俺は振られた、ウサギさんに。



そして56分後


やっと、食べ終わった・・・

一人の食事が切なかったことなんてないのに、飲み込むのも若干きつかった。



今の俺を癒せるのは兎だけなのに

兎に嫌われて・・・いや、あまり好かれてないなんて・・・。


悲しみに暮れ、流しの前でうなだれていると、再び兎の足音がした

いや、ウサギか?


もうどっちでもいいよ・・・。


そう思いながらも振り返ると、兎が一人で立っていた。



兎「おにーさま」


嗚呼・・・

今日初めて聞いた兎の声が

おにーさまと言った。


先程のことなんて、どうでもいい。

寧ろ過去なんて捨ててやる!!


晴「どうした?」


下から覗きこんでみると、顔色が青白くなっていた。


晴「どっか痛い?ぶつけた?ん?違う?」


俺の問い掛けに首を振って否定し、何か言い掛けてる。


晴「・・・どうした?」


さっきよりも小さな声で聞いてみる。


兎「おもらし、しちゃいました」


ぁー・・・


服を掴まれ、兎の布団へと連れていかれるのだが、

どんなに小さいって言っても女の子だし、お兄さんって言ってもただの高二の男子だぞ。

俺でいいのかな?


そんなことを考えていたら兎の足が部屋の前で止まった。



そうだよな、やっぱり恥ずかしいよな。心配しなくても、義母さんにはお兄さんが上手く話しとくよ―



そう声をかけようとした瞬間、


「この子が、おもらししたんですっっ。」


・・・この子?

指さす方を見てみると、さっきのウサギがいた。


ぇえぇぇ。

兎さん、それは無理がありますってー。


って、こっちには血溜まり!?


兎の手をとって傷痕がないか、確認する


よかった、兎じゃない。じゃあ・・・ウサギさん!?・・・も、特に外傷はなく、もう一度兎に向き直った。



晴「兎?これ・・・」


兎「おもらししましたぁ・・・」


これを・・・!?

兎ってまだ小学校低学年だよね、早くない?


いや、落ち着け・・・

俺が慌てたら兎を不安にさせるだけだ。

とは言っても男の俺にはかなり難しい。

こんな時、元カノはどうしてたんだっけ・・・どう?

知らねーよ・・・。


そうだ、状況を整理しよう。

兎とウサギが一匹にジュースのパック・・・ん?

あぁ、さっきの野菜ジュースか。


待てよ、確か赤い種類の、赤い・・・。


晴「兎?」


名前を呼んだだけで肩を震わせている。


晴「ジュース、こぼしちゃったの?」


ゆっくりと頷き、

兎「ウサギさんに飲んでもらおうと思って」

と泣きそうになっている。


だから一緒に食べてくれなかったのか。


晴「よーしよーし、もう大丈夫だよー」


やばい俺、兎を抱き締めてるんだけど。


撫でていると、兎がこっちを見た。


兎「怒らない、ですか?」

晴「怒るのは俺の役目じゃないから。俺の役目は、困ってるウサギさんをフォローすること。」

兎「ほろー?」


頷いて立ち上がり、目の前の血溜まり、ではなくてこぼれたジュースに目を向ける。


どうにかしないと、間違いなく兎が怒られるよな・・・俺がやったって言っても兎に罪悪感与えるだけだし、絶対バレる。


消すのは無理だし、新しい布団なんてないし・・・赤、あか、布に・・・


布に・・・それだ。


夏休みの課題に丁度いいのあったし、時間かけて兎を不安にするなら・・・

クローゼットから引っ張り出してきた道具を見て、兎は目を丸くしている。


兎「おにーさま・・・」


晴「いいから見てて」

口元に指を立て、開始の合図―



母「ただいまー。ごめんね、遅くなってー。晴くん、うさー?」



よっしゃ、間に合った!!

筆を水入れに立て、兎に笑いかける。兎は夢中でジュースのシミを見ていた。


成功、かな。

後は義母さんがこれを見て・・・



母「えぇー、どうしたのー!?うさぎー!?」


晴「わかってもらえました?」

母「晴くん、これ・・・!!」

晴「兎ちゃんです。」

母「すごーい!すごーい!!かわいー!」

晴「女の子の布団にしては殺風景だったし、いいかなーと思って」

母「ありがとー!うさぎ、よかったねぇ!!」


今は帰宅部オンリーだが、中学までは美術部員として小さな賞は貰っていた。

小さい子が描きたかったのに景色ばかり描かされた為、すぐに辞めたがこんなところで役に立つとは思わなかった。



しかしながら課題がある。

いくら本物の方がずっと可愛いと言えど、これをクラスの奴らに見せるなんて・・・俺には出来ない。


違うの描くか・・・


自室へ戻ろうとするとまた服を掴まれた、勿論兎だ。


兎「おにーさま」

晴「うん?」

兎「この子、ウサギさんがね、おにーさまのこと、だいすきーって。きゃーっ」


逃げることないのに・・・急いでその後ろ姿を連写した。



俺も好きだよ、ウサギさん。




やばい・・・顔が熱い。


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