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晴れた夜の星は輝く  作者: YUNO
6章 彼女は想う
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49話 彼女と彼の考え

 結局、わたしは勝手にローランドさんを巻き込んだ挙句、そのまま帰ってしまった。


 ふたりの会話を盗み聞きするのはやっぱり良くない、なんていうのは建前で、どうしたってわたしが聞くべき内容ではないこと、そして単純に聞きたくなかった、それだけである。


 「もう辺りも静まり返っているし、トラブルも無いと分かった。先に帰ろう。」


 それがローランドさん自身の考えだったのか、わたしに気を遣ってくれた故の言葉だったのかは分からないが、それに甘えてしまう他なかった。

 「そうですね・・・」と力なく返事をして、ふたりに気付かれないように帰っていく。自分で自分のことを、ひどく惨めだと思った。



 そのまま門番の業務に戻ると言ったローランドさんに深く感謝をして、マーティンさんに報告するべく統括室へ戻る。自分がどのような表情を浮かべているのかは分からないが、マーティンさんが少し心配そうな眼差しを向けてくれていることから、あまり良いものではないのだろう。


 「とにかく、無事でよかった。通り魔のことも、さっき警備室へ行ったときに聞かされたよ。もっと情報の共有を早く行えるようにしないとね。」

 「・・・はい。」


 疲れたでしょう、少しコーヒーでも飲んで休んだら、と声をかけてくれたマーテインさんは、そのまま来客用ソファに座るよう促してくれた。その優しさに甘えて腰掛ける。

 あのあとふたりがどうなったかなんて、考えても分かるわけがない。それでも考えてしまうのも、恋をすれば当たり前のことなのだろうか。


 マーティンさんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、しばらく警備室と軍の面白い人たちの話を聞いていると、統括室の扉が開き、少しだけ髪を乱した室長が入ってきた。

 ドクン、と、確かに胸が鳴るのが分かった。


 何て声をかけようかと考えている間、いつも冷静な彼の様子がどこか変だと気付く。

 何かに怯えている、いや、もしくはとてつもなく大変なことを知ってしまったときの、動揺、のような。まるで彼には似つかわしくない様子に首をかしげていると、


 「あいつは家の迎えの者と帰った。・・・もうお前たちに迷惑をかけることもない、悪かった。」


 室長が謝るだなんて、珍しいこともあるものだと考えてしまう自分を反省しながら、それでもやはり様子がおかしい彼を不思議に思う。


 「なにはともあれ、無事でよかったよ。ね、アリシアちゃん。」

 「あ、はい。・・・じゃあわたしは、これで。」

 「ああ。・・・・・・君、」


 コーヒーカップを洗おうとしたところを僕がやるからと視線で合図され、そのまま帰ろうとすると、隣を通り過ぎる瞬間に声がかけられる。

 息を呑んで歩みを止めると、


 「・・・・・・いや。気にするな。」


 と、こちらへ向けられたその鋭い瞳をすぐにそらされてしまった。

 ほっとしたような、どこか残念なような、どっちにもつかない気持ちを抱えたまま、一礼して統括室を後にした。

 結局その日はマーガレットに話を聞いてもらう機会もないままに、疲れた身体を休めるためすぐに眠ってしまった。










 そして翌朝、仕事に行こうと支度をして食堂へ向かうと、ふとマーガレットから声がかかる。


 「アリシア、今日からあなた、連休でしょう?」


 そう言われ、は、と気付く。

 そう言えば今日から4日間の休みを与えられていた。年に2回与えられる王宮勤めの人々への連休は、従業員が3分の1に分けられ、それぞれが同じ期間に休むこととなっている。その期間中王宮内の仕事の動きはかなり緩やかにはなるが、国王陛下の王宮勤めへの感謝のあらわれであるといわれ、決してその制度が廃止になることはないだろうという。


 「そうだったわ。すっかり忘れてた。」

 「あなたって本当に仕事人間なのね!」

 「最近はそうでもないけれど・・・。」

 「ああ、室長への恋、ね?」


 そう言われ、思わず恥ずかしくなって視線を泳がせてしまう。

 それを見てマーガレットはくすっと笑ったのち、面白いことをひらめいたかのように口を開いた。


 「そう言えば、連休は室長とかぶっているんでしょう?どこか誘ってみたら?」

 「そ、そんなこと出来るわけないわ!」


 彼にそんなことを持ちかけてみては、またしても寝言だと言われかねない。それに今はまだ、そうする勇気も覚悟も充分ではない。

 どうして、と何度も問いかけるマーガレットに何とか言い訳をしながら、朝食を終えたわたしは連休をどうやって過ごそうかと一応考えはしたものの、結局与えられた4日間の休みはだらだらと過ごして終わってしまった。









 「さて、今日からまた頼むね。」


 と、4日ぶりに訪れた統括室でマーティンさんに声をかけられる。

 見れば、室長はいないようだった。机の上は綺麗に整頓されていて、どうやら今日はまだ来ていないみたいだ。誰よりも早く出勤する彼がいないとは、何かあったのだろうかと考えていると、それに気付いたマーティンさんがいつもよりも暗い表情で言った。


 「オスカー、今日は来ないそうだよ。」


 さっき連絡を受けたんだ、と付け加えた。

 そしてそのあと、暗い表情に確かな心配と同様を含ませて言った言葉に、わたしは何も考えられなくなった。





 「もしかしたら、もうここには帰ってこないかもしれない。」



ここまで読んでくださって有難う御座います。

次の章では、物語が大きく動き、ラストに向かって雰囲気も変わっていきます。

おそらくあと1章か2章で完結になるかと思いますので、最後までお付き合いいただけると幸いです。

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