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晴れた夜の星は輝く  作者: YUNO
5章 彼女は分かる
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<彼の願い>



 初めて彼女を見たときは、可愛らしくて、だけれど意志の強そうな女の子だと思った。第三書庫に対する見方が王宮内でも見直されつつあり、そのために雇われた彼女は、親のコネで王宮に入ることをひどく嫌がっている様子だった。確かにコネで仕事を得るというのはあまり世間体よろしいものでは無いが、それでもチャンスすら得られないことと比べれば大層恵まれていることだろうと思う。彼女はまだ、そのありがたみに気付けていないのかもしれない。おそらくそれをオスカーも見抜いていたのだろう。だからこそ冷たい物言いをした彼に、驚いたことに彼女は反論してみせた。初めてオスカーに接する人々は皆、大体その威圧的な雰囲気と冷たい眼差しに萎縮してしまう。ところが彼女には、それを物ともしない度胸が備わっているようだった。

 そんな意外な強さが面白くて、気付けば妹のように彼女を気にかけるようになった。仕事がひとつ上手くいったと彼女が言えば、良かったねと声をかけてやる。そうやって彼女が成長していく様子を眺めることが、日々の楽しみのひとつになった。


 そしてそんな楽しみが出来たことの他にも、良い変化はあった。それはオスカーのことだ。よく他人に誤解されやすい奴だとは思っていたが、本人は別段気にしている様子もなく、このままでは要らぬ敵を作ってしまうのではと考えていたところ、彼女があらわれてからはどうやら少し丸くなったらしい。目つきも柔らかくなったようだ。

 それでも、それを本人に指摘してみれば、


 「・・・そんなことは有り得ない。」


 の一点張りで、まだまだ意地を張っているようだが。それでも、長年同僚としても仲間としても連れ添っているから分かる。明らかに変わっていく様子が。


 そういえば、前に第一書庫のジャスパーくんと話をする機会があったときも、オスカーが彼女のことをいつも気にかけていると言っていた。確か王女殿下の誕生パーティでも、ダンスのパートナーであるジャスパーくんを差し置いて、彼女が足を痛めているということに真っ先に気付いてそれを彼に教えたのはオスカーだったと言う。

 確かにオスカーはいろんなことに気が付くが、自分にとって興味の無いことであればわざわざ気にかけたりはしない。そのときはもうすでに、彼女は彼にとってどうでも良い存在ではなかったということだ。

 ところで、ジャスパーくんにこの話を聞いていたときに気付いたのは、どうやら彼が彼女のことを好きだということだ。特にオスカーと彼女とのことを語るときは、嫉妬心を剥き出しにしたようにトーンを低くする。まるで、オスカーと彼女の近くにいる俺すらも警戒するようなその雰囲気に、思わず若いなと感心したほどだ。


 オスカーは彼女と出会って変わり始めている。

 ジャスパーくんは彼女に心を惹かれている。


 では、彼女の気持ちはどうなのか。

 いつも誰にでも優しく、誠意ある態度で接する彼女のことだ、好きな相手だからといって贔屓することは無いのかもしれない。だけれど、他の人への接し方と、好きな人へのそれとは異なってしまうのが恋というもの。そう考えると、やはり、彼女は。


 想像してみれば、そうなってくれると俺にとっても嬉しい。彼女と彼のやり取りは、近くで聞いているだけでも面白いし、なんだかんだいってあの2人はお互いに気を許しているからこそああやって言い合っているのだということが分かるから。


 だけれど、そうなるためには。

 彼女にとっても、そして彼にとっても、乗り越えなければならない困難があるだろう。それを考えると、どうか彼らに幸せな未来が訪れることを祈らずにはいられない。


 どうか、親友よ、そして妹よ、きっとその強さを持ち続けてくれ。


これで第5章完結です。

今回はマーティン視点のお話でした。

お話中の「彼女」はアリシアです。


次回更新のお話より、第6章開始になります。

オスカーとアリシアにもっと焦点をあてていきたいと考えててるのですが、

まだプロット作成の段階ですので、もう少しお時間を頂きたいと思います。


次のお話も読んでいただけますように。

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