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第一章 終話 快晴なり

「メイトさんの二年分の貯金が全部消えましたね」

「あぁ、ほんと不景気には痛い出費だった」

 昼下がりの森の中、踏み固められて草の生えていない畦道(あぜみち)を四つの軍服が進む。

「少しだけ、メイト中尉の事を見直しました」

 コリーが珍しく、水で濡れて生乾きの軍服を纏うメイトを尊敬の眼差しで見詰める。

 恥ずかしさに頬を染めるメイトは「ふんっ」と鼻息を鳴らすだけでそれに応じた。

「最後、お姉さんに渡したビリュキルモの種、今の相場では確か一粒1万マルーでしたっけ~」

「良く知ってるなジョーカー」

「そりゃあもう、野原のダイヤモンド、結婚式では指輪の代わりに渡されたりするほどの高価なものですしねぇ。女性の憧れですよぉ」

 恍惚な表情で大袈裟に手を合わせるジョーカーを見て三人はクスクスと笑う。

「一粒が開花する可能性は約1%以下。育てるのは大変難しく蕾の状態ですら一本30万マルー、花が咲こうものなら一本150万マルーで取引されるような物……そんな種を計三百粒も無償で渡すなんて、もう泣けてくる程の姉弟愛ですねメイトさん」

「馬鹿野郎、そんなんじゃねぇよ」

「ユーシアの奴等と一緒に頑張って育てるんだな……その代わり、俺の剣は返してもらうぜ? なーんて、痺れまくっちゃいますよ~メイト中尉ぃ」

「う、うるせぇ!」

 メイトの声の真似をしながら腕にまとわりついてきたジョーカーを、満更でもなさそうな表情をしつつ振り払ったメイトは少しだけ歩くスピードを上げた。

「ユーシアの村長さん、メイト中尉にわざわざ依頼したのももしかしたらこうなるって見越していたんじゃないですか? それにほら、最後渡そうとしてきた大金、そっくりそのままではないにしろ、中尉達のお母さんの――」

「さぁな、今さら戻って聞くのは面倒だし、知らねぇままでいいだろ。依頼も討伐はしてねぇし、半分だけで十分だ」

「歳の甲は侮れませんね」

 コリー、イオス、少し遅れてジョーカーは灌漑深く頷きながらメイトの隣へと追いつく。

「たださ」

「「「ただ?」」」

 メイトが空を見上げるのに倣い、三人も上へと目を遣る。

「母さんが返ってきたとき、悲しい顔されると俺が親不孝者みたいだろ」

 晴れ渡った空、雲が疎らに散らばる快晴の下、四人は独立軍本部を目指して歩き続けた。


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