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過去アルバム~5枚目~

翌日―――――。


学校から帰ってきた瀬奈は、まだ両思いの幸福に浸っていた。


(私が・・・優輝と・・・両思い・・・。信じられない)


「何ボ~っとしてんのよ。はい、お茶」


そう言って冷たい緑茶を出してきたのは李媛だ。


「あ、おかーさん。ありがとう」


李媛が去った後、瀬奈は緑茶を一口口に入れた。


清涼な味が口の中に広がる。瀬奈はもう一口飲んだ。


そして机の上におかれたメモを見る。


『運命に逆らうな』


・・・何のことだろう。そして私はリュックの中にある一つのメモを掴んで引っ張り出した。


『ずっと好きでした。よければ付き合ってください』


なんとまあ告白の手紙だ。でも、生憎瀬奈には心に決めた相手がいる。


一応お返しの手紙を書こうと自分の机の中から可愛いメモを取り出した。


『ありがとうございます。でも、答えることはできません。

私には好きな人がいて・・・。もう両思いなので』


と書いておいた。


思案に耽るうちにその行き先は優輝のほうへと向かっていく。

もし優輝が私と同じように他の人から愛の告白を受けたら・・・。

イヤだ。優輝は人気だということをさしおいて、ものすごく嫌気が差してくる。

心がモヤモヤして、早くその考えを追い払いたくなる。


・・・・・私はやきもち焼きなんだろうか。


思わず時計を見ると、もう優輝とコートで落ち合う時間だ。

瀬奈はいそいそと家を出た。



早く優輝に会いたくて走った。


両思いになってから始めて好きな人に会う。


「瀬奈!」


優しげな優輝の声がする。


「優輝・・・」


私は水が零れ落ちるかのように言う。


なんか気まずい。話しかけたいのに、恥ずかしくなって、話せない。

それでも優輝の視線は私の目を捉えた。ドキッとする。

射すくめられるようで。


「やろっか」


優輝が私に言った。手にはもうボールがある。


「うん・・・」


でも優輝と練習をし始めても恋心は解ける事が無い。

優輝の姿が私の目を引きつけて離さない。ものすごく格好良く見える。


その瞬間――――――――。


「わっ!!」


優輝しか見ていなかった私は自分の足に転んで優輝のほうに突っかかってしまった。

二人とももつれ合うようにして倒れる。


「痛・・・」


優輝が苦しそうに言う。


「だ、大丈夫?!」


「ウッソー」


「ちょ、ちょっと、何人のこと騙してんのよ!」


「でも、チャンスかなぁ、って思ってさ」


そう言って優輝は私の体を包むようにして私を見た。


「・・・・・っ」


思わず顔が熱くなる。


優輝はそれを可愛がるかのようにしてこっちを見ている。


恥ずかしい。その思いで目を反らした。

だけど優輝はその反らした視線を追ってくるようにしてまた私と見詰め合う

形に戻る。


「ゆ・・・優輝」


声を絞りだして、言った。


「何?」


「・・・私だけを見ていてくれる?」


自分でも何を言ってるんだろうと思いながらも止められない。


「瀬奈だけを見てるよ」


優輝は即答する。


「本当に?」


「うん」


「離れていても?」


「・・・当たり前だろ。浮気なんてしないよ」



・・・もう、ヤバイ。溢れる気持ちを止められない。

優輝が愛しいという真実を。目の前の人物を恋しいと思っていること。

なのに、自分はそれを表現できるものを持っていなくて。

素直に言葉に出せばいいの?「好きだ」って囁けばいいの?



瀬奈は優輝の服をギュウっと掴んだ。それが彼女なりの愛情表現なのである。


どこにも放出できない想いを。掴む力にこめるように。


愛しさと、強さを込めて。



二人はバスケの練習を忘れてずっと座り込んでいた。



次、このように甘い時間が訪れるのは、いつになるのだろうか。


二人っきりで見つめ合える時間を。心のままに相手を抱き寄せる事も。


今は、・・・・・嵐の前の静けさ。


けっこう今回は甘め。(なのかな?)

ふふふ。なんか怪しい笑い。

優輝が優しいですね。さすがに名前の通り。

                   by姫ちゃん

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