過去アルバム~1枚目~
「来週あたりにお隣さんが来るらしいわよ」
母のその言葉が全ての始まりだった。
「え?お隣さん?」
「ううん。何かと関わることがありそうだし、息子さんもいるし、友達になれると思うんだけど」
「男子ぃ?」
「そう。男の子」
夢のようにふわふわした声で母は答え、また食器を洗い始めた。
(男子・・・男子・・・実感が湧かないなぁ)
花井家の長女、花井瀬奈は六年生。基本恋愛をしていてもいいという歳だが、
実のところ瀬奈が誰かに恋をしたことは無かった。バレンタインなど、もっての他。
その日もまた瀬奈は『男子』というものに悩まされることになったのだった・・・・・。
そして時は流れ、お隣が来ると聞かされた日のちょうど一週間後。
ピーンポーン。家のベルが鳴った。
「あら?来たかしら」
母はそう言い、玄関へ飛び出していった。
女性の話し声が聞こえる。
「あなた~!瀬奈!お隣さんが来たわよぉ」
(まあ、いいや。せめてどんな男子かだけ、見てやろう)
瀬奈はそう思い、仕方なく玄関へ向かった。後ろからはにこにこ顔の父も付いて来る。
ドアの外にいたのは・・・・・。
家族四人の姿。一人はお母さんらしき人。一人はお父さんらしき人。
残りの二人はきっとその『息子さん』であろう。
(この人たち・・・・。兄弟なんだ。私と歳が近そうなのは上の男子みたい)
そんなことを考えていると、お母さんらしき人が話し出した。
「蘿蔔と申します。私は朱音。夫の高彦。そして
長男の優輝と次男の涼太。よろしくお願いいたします」
と型通りの挨拶をして、頭をさげた。
「こちらこそ。私は李媛で、こちらは夫の修也。そして長女の瀬奈ですわ」
と母も型通りの挨拶をしてにこやかに微笑んだ。
私はじっと優輝の顔を見つめた。
すると優輝がなんと見つめ返したではないか。瀬奈はビックリして視線を逸らした。
なんか気まずい。
「瀬奈?どうしたの?」
母が聞いた。えっ、顔に出てる?
「えっと、なんかマンションのいろんなところを優輝君と涼太君に紹介してあげたいな、って」
気がつくと、口が勝手に喋りだしていた。
「あら。優輝と涼太に?助かるわ。お願いしてもいい?」
朱音がそう言ってきたので、
「はい。私でよければ」
と答えてしまった。
「じゃあ、行ってきなさい。私はしばらくここで待ってるから」
優輝と涼太に向かって朱音が言う。
「今は暑いでしょうから中に入って涼んでくださいよ」
母がどうぞと手招きをする。
「それではお言葉に甘えて」
朱音たちは家の中に消えた・・・・・。
「えっと、じゃあ、行きましょうか?」
私が慌てて言うと、優輝は頷いたが、涼太は
「ぼ、僕は行かない」
といって私の家の中にはいって鍵を閉めてしまった。
「あ・・・」
「別に平気だよ。あいつは人見知りする奴だから」
「そうなんだ」
私達は歩き出した。エレベーターを使って下に下りる。
こうして外に出た。
ここは最新の設備がそろっているマンション。
いろんなブースもある。勉強部屋、演奏練習部屋。
バーもあるから好きなものが食べれるし、飲める。
「ここはいろいろあってね・・・・・」
私は話し始めた。
しばらく話して歩いていると、バスケゴールが見えてきた。
もちろん、バスケを習ってる人には嬉しい場所だ。
すると優輝は走り出し、ボール収納場所にあるバスケットボールを一つ取り出し、
ゴールに向かってそのまま投げ入れる。
するとボールは吸い込まれるようにスパッと入った。
入った瞬間優輝の顔が喜びに輝く。
「バスケ習ってるの?」
私が聞くと優輝はその顔を崩さずに、
「うん。習ってる。ここにゴールがあるなんて思わなかった」
と言った。
「ここはあんまり人が来ないんだけど、優輝君には好都合だよね」
「そうだな・・・・・」
優輝は答え、さらに、
「なあ」
と言った瞬間優輝は顔を瀬奈の顔にずいっと近づけた。
「な・・・何?」
瀬奈は慌てて答える。
「バスケの練習付き合ってくれない?」
「へ?」
「だ・か・ら、練習!」
優輝は聞こえてないのかとばかりに繰り返す。
「練習?」
「そ、練習」
「どうして?」
「だって人気のない場所をお前が知ってるんだったら、お前・・・瀬奈だっけ。
瀬奈もバスケやってるんじゃないかなぁ、って思っただけ」
「ピーンポーン!当ったり~!よく分かったね!よくやるんだ。私もバスケ習ってて」
「そうなんだ!だったら・・・やろうぜ。俺毎日四時半からここに来るから」
「そっか。塾がない日は来るわ」
「よし、戻ろうぜ!」
私達は急ぎ足で自分の家へと駆け出した。
どうでしたでしょうか?感想待ってますね。




