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スティグマ  作者: 髪槍夜昼
一章、史上最弱の異能者
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第六話 学校一の不良の悪友


「全く、お前の兄貴があんな感じの人だとは…」


口論が白熱する色雨と炬深を放置して、外に出た棺が隣にいる衣に言う。


「言わないで下さい、あれでも昔は熱く、優秀な人だったんですよ」


「熱い…あの人に一体何があったんだ…」


のんびりとした色雨を思い浮かべ、信じられないと言った様子で呟く棺。


「それは…」


それに心当たりがあるのか衣は俯く。


「ま、深くは聞かねえよ。オレも記憶喪失とは言え、自分の過去を話してねえからな」


「ありがとうございます」


笑みを浮かべながら衣は棺に言った。


「で、これからどうするんだ?調査って言っても何をすればいいか…」


「そうですね…基本的には普通にしていて下さい。そして、貴方の学校のポルターガイストみたいに噂が立てば、そこを調査します」


「それ、結構途方も無いことじゃないか?」


「まあ、私達が暇なことは良いことです」


「………」


確かに、その通りだと棺も思う…


しかし、折角、正式に協力者となり、珍しくやる気が出たところでそんなことを言われれば、やるせなさを感じてしまう。


「なら、明日学校が終わったら、先輩に会いに行きますか?」


「先輩?」


「私達のような隙間の神と協力者の二人でこの町の平和をひそかに守っていた先輩ですよ」


「守っていた? 過去形?」


衣の言葉に棺が気になったことを言う。


「そうです、今は引退して病院にいます」


「病院だと?」


「ええ、詳しくは明日、学校で話しますよ」


衣はそれだけ言うと歩いて行った。


「…病院か」


引退して、今は入院中…


何となく、その意味を棺は理解していた。


「………ん? 待てよ、あいつ、『学校で』とか言ってなかったか?」


今までは棺が衣と会うのは学校帰りに待ち合わせをしていて、学校で会ったことは一度も無かった。


何せ、棺は学校で有名な不良少年、衣は最近転校して来た転校生。


「………」


何となく、嫌な予感のする棺だった。








「神無棺君、いらっしゃいますかー!」


「…悪夢だ」


棺の嫌な予感は見事に当たった。


衣と第185支部へ行った次の日、いつものように、学校へ行き、いつものように、周りからやや敬遠されながら棺が学校で過ごしていると、


昼休み、突然、ドアが開き聞き覚えのある声が…


「…あ! 棺、見つけましたよ! ほらほら、お昼休みは短いんですから!」


何故かややテンション高めで衣が言う。


「…悪夢だ」


呼び掛けられた赤髪赤目で有名な不良、神無棺はもう一度言った。


と言うのも、


「ええ! あれって、この間転校して来た江枕さんじゃない?」


「何であの神無に…って言うか親しげ?」


「あの二人にどんな共通点が…って言うか、羨ましいぜ! オレ、江枕さんスゲータイプなのに…」


「実はオレも…」


などと言った声が周りからちらほらと聞こえるからである。


「…意外とモテるんだな、お前」


「え? 何ですか?」


「いや、何でもない、さっさと行こう」


これ以上ここには居られないと、棺は教室から出た。








「全く、絶対に誤解されたぞお前。学校でオレなんかと関わって、イジメに遭っても知らねえからな」


人気の無い屋上にやって来て、座りながら衣に言う。


「イジメ?」


「…はぁ、天然の妹は天然だよな…」


「それ私のことですか?」


「他に誰がいるんだ」


棺は呆れたように溜め息をついた。


この屋上は手摺りが壊れかけていて危険な為、滅多に人が来ないので、よく棺はここで昼寝をしていた。


ちなみに、衣はここを調べていて、危うく転落死しかけて、棺と出会った。


「で、何の用だ?」


「先輩ですよ、先輩! 今日の放課後行く予定でしたでしょう!」


「…ああ、そうだったな」


今、思い出したように棺が言った。


「行くのは直接でいいですよね? また、放課後に迎えに行きますから」


「頼むから、もう教室には来るな。今、どんな噂が流れてるかも分かんねえし、もし、『あいつ』に知られでもしたら…」


「あいつ?」


衣が嫌そうに言う棺のその言葉に首を傾げる。


「もう知ってしまったのであるよ?」


屋上の扉が開く音と、奇妙な口調の声がした。


「はぁ…最悪だ」


棺が魂を吐き出すような深い深い溜め息をついて、その人物に目を向けた。


日本人では有り得ない綺麗で自然な銀髪をしている、端正な顔をした美少女であるが、何故か、棺と同じ、男子の制服を着ていた。


「親友に向かってその態度は何なのであるよ!」


「誰がだ。せいぜいお前は悪友止まりだ『レイヴ』」


そう棺はその女、レイヴに言った。


「えーと、棺のお知り合いですか?」


「その通り! 今話題の棺の彼女(仮)さん! 私はレイヴ・ロウンワード! 棺と愛を誓った許婚であるよ! この泥棒猫!」


「ええー!」


「今度は許婚か…」


堂々と嘘をつくレイヴと、それをあっさりと信じる、やや天然の衣に棺はまた深い溜め息をついた。








「まあ、こいつは、何だ、知人だ」


「冷たい! 冷たいのであるよ! 一年の付き合いだと言うのに…まさか、もう倦怠期が!」


「棺の友達…ってことでいいんですよね?」


「その通りである! あれは一年前、私が自分探しの旅をしている途中に個人情報を偽造してこの学校へ入学した時のこと…」


「えーと、どこまでが本当の話ですか?」


「分からん、こいつの嘘は真実を交ぜて言うから、いつもどこまでが本当なのか分からない」


衣の疑問に棺が溜め息をつきながら答えた。


「私が外国人であることと私の素晴らしい会話について来れないと言う理由で、私はいつもイジメられていたのである」


「これはどこまでが?」


「孤立していたのは本当だが、イジメられてはいなかったぞ、確か」


衣に聞かれ、棺がレイヴの嘘を訂正する。


「そんな時、私をイジメていた主犯格を棺は格好よくぶっ倒し、私を助け出してくれて…」


「棺、これはどこまでが…って棺?」


「………」


衣がまた棺の方を向くと、棺は俯き、プルプルと震えていた。


「それから私は…」


「ふざけんじゃねぇー! 捏造にも程があるわ! それはテメエが勝手にオレの名前で果たし状なんて渋い物を出してオレを嵌めたんだろうが!」


「あれ? そうだったかな? 最近物忘れが激しくてな」


キレる棺と更におちょくるレイヴ。


「…友達、一人はいたみたいですね」


それを見て、二人の関係がよく分かった衣だった。

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