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スティグマ  作者: 髪槍夜昼
四章、聖遺物
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第四十二話 邂逅


「んー、中々いい感じに暴走し始めているな…」


喫茶店で呑気にコーヒーを飲みながらベルフェゴールを名乗る男が言う。


店内にはまだ昼過ぎだと言うのに誰もいない。


実はこの店も含む、この一帯はレイヴを追い込んで、戦闘を行う場所に選ばれており、記憶操作と情報操作により辺り全て無人となっていた。


滅多に使うことを許されない聖痕装置の効果であり、特殊な電磁波を撒き散らすことで作動する。


そのような物が使われることから、隙間の神がそれだけ聖遺物を危険視していることが分かる。


一般人は電磁波を浴びて、すぐにこの場から無意識に立ち去ったが、一般人の人払い用の聖痕装置が聖痕使いに効く訳もなく、ベルフェゴールは平気な顔でコーヒーを飲んでいた。


「そろそろ、追い詰められてぶつかる。戦力はまあ、五分五分と言ったところ…かな?」


テーブルにマジックで落書きをしながらベルフェゴールは言う。


テーブルにはレイヴの名前と離れた所に棺の名前、他多数と書かれていた。


恐らく、レイヴと戦うであろう戦力の名前を書いているのだろう。


「…しかし、隙間の神も、ケチ臭いな。抵抗する聖遺物を回収するのに『たったこれだけ』の戦力しか出さないなんて…あんな連中、僕より弱いよ」


他多数にバツ印をつけて、顔を曇らせながらベルフェゴールは言った。








「見つけましたぜ」


祭月がレイヴの目の前に立って言う。


学者帽を外し、気だるそうに頭を掻いている。


「まあ、これで私の仕事は終わりました。後は武道派の皆さんがやっちゃって下さい」


面倒くさそうに力天使達に祭月は指示を出した。


「………」


それを無言で色雨は見つめていた。


祭月は隙間の神としての命令を果たすこと以外には興味がないのだ。


犯罪者の言い分も罪状も、この命令が正しいかどうかにも興味がない。


正義としてではなく、仕事として隙間の神に尽くしている。


こちらの方が正しい形なのだろう…


だが、


「妹の友人を私が…」


それは世界よりも優先している大切な人の一人である妹を悲しませることにはならないか…


「グアアアアアアー!」


色雨が迷っていた時、悲鳴が上がった。


見ると、レイヴに向かっていった力天使の一人にレイヴの持つ赤い剣が突き刺さっていた。


「なっ…」


「…喚くな、である。血も傷もない。命に別状はないである」


レイヴの言うように引き抜いた赤い剣には血はついておらず、刺された力天使の方も気絶しているが、無傷だった。


「ほんの少しだけ『奇跡を喰った』だけ、であるよ…ごちそうさま」


「喰った…?」


「そう」


棺達に普段見せている笑顔とは違い、冷めた笑みを浮かべてレイヴが言う。


「クソッ、調子に乗るな」


力天使の中の一人の手から炎が放たれる。


聖痕によって生み出された炎は意思を持つかのようにレイヴに向かっていく。


「だから無駄だって」


それをレイヴは剣を軽く横に払うだけで防いだ。


炎は剣に触れた瞬間、風景に溶けるように消えた。


「奇跡とは人間が聖痕と呼ぶ力のこと。私はそれを喰らい取り込む聖剣(魔剣)『ダーインスレイヴ』…である」


「聖痕を無力化する力……君は聖遺物に操られているのではなく、聖遺物そのものなのか…」


レイヴの口振りに色雨がレイヴの正体に気付いた。


聖痕使いの聖痕とは異なる力を扱うレイヴは人間では無いと…


「その通りである。聖痕は私には効かない。悪いけれど大人しく私に食べられてくれない?」


「それは、遠慮したいな。聖痕が効かないなら、聖痕装置を使うとか手段はまだあるんだよ」


色雨の言葉と共に力天使達が手に持った聖痕装置を構えた。


「………」


それに無表情でレイヴは剣を構えた。








「コーヒー…いや、カフェインが切れた…」


ふらふらとふらつきながらベルフェゴールが言う。


飄々としたマイペースな態度を崩し、顔がかなり青ざめている。


「…マズイ、禁断症状だ…どこかで缶コーヒーを……うん?」


「これは聖痕装置? 一体何が…」


ベルフェゴールの視界に柔らかそうな栗色の髪の少女が入ってきた。


(…聖痕使いの子?)


栗色の髪の少女、江枕衣と面識のないベルフェゴールは青い目で見た。


ベルフェゴールは普通の聖痕使いとは違う異質な所があり、聖遺物や聖痕使いを一般人と区別出来ることもその一つだ。


だが、特に興味がなかったのですぐに缶コーヒーの自販機を探す作業に戻った。


「あ、あのあなた、聖痕使いですよね! 派遣された隙間の神の方ですか?」


「うぇえ!」


完全に思考から離した時に話しかけられたので思わず変な声を上げるベルフェゴール。


「ごめんなさい、いきなり…あの、何が起きているか分かりませんか?」


「え? あ、ああ…聖遺物の回収に苦戦しているようだから、本部から派遣されたんだ」


(びっくりした…完全に意識の外だった。何か僕を隙間の神と勘違いしているみたいだから、そのままにしておくか)


「そうなんですか! 私、何も聞いてないんです…やっぱり、兄さんが…」


「………」


(うーん、お兄さんに嫌われちゃってるのかなぁ? それは気の毒だな)


「すいません、出来れば、現場に連れていってくれないでしょうか?」


「…え?」

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