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スティグマ  作者: 髪槍夜昼
一章、史上最弱の異能者
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第二話 拒絶反応


「つまり、聖痕使いを秘匿し、犯罪を犯した聖痕使いを裁くのが、私達『隙間の神』なんですよ」


「隙間の神?」


「…この世には、科学では証明出来ないことが沢山ある。それの総称を隙間の神って言うんです」


「へー」


「科学では証明出来ないことを世に出さない為に秘匿する、それが私達『隙間の神』なんです」


「ほー」


「…話聞いてますか?」


空返事ばかりする棺に苛立ちながら衣が言う。


「興味無いからなぁ…つーか、お前、どこまでついて来るんだ?」


棺がうんざりしながら衣に言う。


「え? 家までついていくつもりですけど?」


衣は首を傾げて言った。








浮遊男の一件の次の日、


棺は学校帰りに突然、衣に話し掛けられ、


延々と衣の所属する組織、『隙間の神』の仕事内容、良さなどを聞かされていたのだった。


棺は手伝う気などさらさら無い為、髪と同じく真っ赤に塗装されたバイクを引きながら、聞き流している。


「なんで家までついて来る気なんだよ」


棺が疲れたように言う。


「そりゃあ、仕事仲間になるのですから、家は知っておかないと…」


「だから、手伝わねえって言ってんだろうが!」


「…ていうか、それ貴方のバイクですか? 趣味悪い」


「人の話を聞け! つーか、スコーピオンを馬鹿にすんじゃねえよ!」


「…名前まで付けてたんですか…その赤バイに」


「悪いか!」


若干引いた衣に棺がキレて言う。


ひそかに棺は衣のことをマイペースな天然と思っているが、この瞬間、衣も棺のことをマイペースな天然だと思った。


「…えーと、それなら乗せてって下さいよ。目的地は同じなんだし…」


微妙にフォローするように衣が言う。


「……………ダメだ」


「何ですか? 今の間は」


「…とにかくダメだ。やむを得ない理由がある」


「…そうですか」


やむを得ない理由に少し興味を持った衣だったが、妙に真剣な顔をした棺を見て黙った。


その後、しばらく会話が無く、段々と暗くなってきた道を二人で歩き続ける。


やがて一つの建物の前に立ち止まった。


「はぁ、結局ここまでついて来たな…」


溜め息をつく棺。


「え? ここが…? でも、ここって?」


その言葉に衣が言う。


棺が立ち止まった場所はある施設だった。


そこそこ大きな建物。


庭には幼稚園のような遊具がある。


「…孤児院」


衣が呟く。


その施設は孤児院だった。


「そうだ、オレは孤児院出身なんだ。まあ、もうバイトしながら一人暮らしをしているんだが、今日はここに招かれていてな…」


困ったように頭を掻きながら棺が言った。








「おかえりなさい! 棺!」


「久しぶり棺!」


「一緒に遊ぼうぜ棺!」


扉を開けると同時に待っていたのか、幼稚園生ぐらいの年齢の小さな男の子や女の子が棺に言う。


「お前ら! 年上は敬えといつも言ってるだろうが! お兄様と呼べ!」


「棺兄ぃ〜」


「おお、その響き悪くないぞサヤ


その中の一人の女の子が言った言葉に笑顔になる棺。


「………」


それを信じられないものを見るような目で見る衣。


赤髪に赤い瞳。


制服は着崩し、真っ赤に塗装したバイクに乗り、


口調は不良。


どう見ても子供が好きそうに見えない棺は、意外にも子供好きだった。


「何だその顔は」


「いえ、少々私には衝撃映像だったもので…」


「人を見かけで判断するんじゃない。オレは意外と面倒見がいいぞ」


「外見が柄悪い自覚はあったんですね」


「うるせえ」


その言葉にふて腐れたように棺が言った。


「なら、髪を染めるのを止めればいいんですよ」


衣がその印象は、赤髪が原因と思い、言う。


すると、棺はその言葉にムッとした様子になり、


「おい、衣、良いことを教えてやる」


「何ですか?」


「これは自毛だ」


「…は?」


「オレは染色したことなんざ、一度もねえんだよ、両親の顔を覚えてねえから確証はねえが、ハーフなんじゃねえか?」


あっけらかんと棺は言う。


「…両親の顔を、覚えていない?」


「ああ、オレは…「棺! 帰って来たなら、早く来て座りなよ!」…また、面倒な奴が…」


棺の言葉を遮り、奥の方から大声が響く。


どうやら、誰かが玄関でずっと話している棺と衣に痺れを切らしたようだ。


「…腹を空かせたあいつが暴れ出す前に行くぞ」


今日何度目かの溜め息をついて棺は歩き出した。


「あっ、話は途中ですよ」


慌てて衣も追いかけた。








「遅い! お腹空いた!」


「はしたないとか思わねえのかクシ


棺が髪が短く、ボーイッシュな少女に言う。


少女の名前は風夏櫛カザナツ クシと言って、棺とは同い年の孤児院での幼なじみだ。


今は棺同様に一人暮らしをしている。


櫛も棺のように招かれていたのだった。


「…って言うか、その連れてる女の子は誰?」


櫛が衣に気づき、聞く。


「ストーカーだ」


「誰がストーカーですか」


テキトーに答えた棺に衣が反論する。


「彼女?」


「それも違います。私は江枕衣と申します。この人とは、昨日出会ったばかりなのでご安心を」


衣が何となく気をきかせて言う。


どうやら、棺と櫛の仲を誤解しているらしい。


「おいおい、気をきかせて悪いが、そういう仲じゃないぜ」


「そうなのですか? 幼なじみは両思いになりやすいと聞いたのですが…」


「漫画と現実を一緒にするな。第一、こいつ『ブラコン』だし…」


棺がさらりと爆弾発言をした。


「うわぁ! 何初対面の人にばらしてんのよ! 違うからね、私、ブラコンじゃないからね!」


それに慌てて、衣に弁解する櫛。


「別に、お兄ちゃんのお嫁さんになりたいとか、思ってる訳じゃないの。ちょこっと、お兄ちゃん子なだけなの!」


「歳が三つしか離れてない兄貴と高校生になってまで一緒に風呂に入ろうとするくせに…」


「いいじゃない別に! 結婚するのは犯罪だけど、一緒にお風呂入るのは犯罪じゃないもん!」


「………」


棺と櫛のやり取りについていけないのかぽかんとしている衣。


「…そんなこと言うなら、あんたの秘密もばらしちゃうもんねー」


「お前! まさか…」


「幼なじみを怒らせたら、恥ずかしい秘密をばらされるとを思い知りなさい! 衣ちゃん!」


「は、はい?」


突然、ちゃん付けで呼ばれ二重の意味で驚く衣。


「棺と手を繋ぎなさい」


「…はい?」


その言葉に意味不明と言う顔をする衣。


「いいから早く!」


「や、やめろ!」


棺が焦った声を出す。


その珍しい様子に衣は興味を持ち、棺の手を握った。


その瞬間、衣は棺に電流が流れたのかと思った。


「〜〜〜!?」


ぶるぶる震えながら、衣の手を振り払う棺。


手に鳥肌が立っていた。


「あはは、やっぱり直って無かったね、それ」


「今のは?」


「棺はねえ、女の子が苦手なんだぁ。喋る分には大丈夫なんだけど、手とか触れると子犬みたいにぶるぶる震えるの」


弱みを握っていることを勝ち誇るかのように言う櫛。


「………」


それを聞き、震えが収まった棺を見る衣。


「…何だよ?」


「…貴方、異性が苦手なんですか?」


「苦手なんじゃねえよ、これは恐らくトラウマかなんかだ。別に女が怖い訳でも嫌いな訳でも無え」


言い訳するように棺は言うが、微妙に二人から距離を取っている。


「…照れ屋さん」


「誰が照れ屋さんだ! だから、そういうんじゃねえって言ってんだろうが!」


「分かってます、分かってますって」


「いやその反応は分かってねえだろ!」


「…と言う訳で、私の隙間の神の話を聞いてくれますねよね」


「何がと言う訳なんだ?」


「聞かなきゃハグします」


「この卑怯者ー!」


棺は思い切り叫んだが虚しいだけだった。


衣に弱みを握られた瞬間だった。

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