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スティグマ  作者: 髪槍夜昼
二章、隙間の神
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第十九話 反逆者


「組織…かね。ガセネタだとしても、一応確認した方がいいかもね」


難しい顔をしながら天士が言う。


若くて気さくだが、この辺りがトップに推薦された証拠に思える。


「未だに捕らえられていない反逆者レベルのデータでも見直すかね」


ふぅ…と溜め息をつきながら天士が言う。


反逆者レベルって、そんなにいるものなのでありますか?」


それを見て、皆代が天士に尋ねる。


収容所の管理しか任されていない部隊だからか、まだ若いからか、皆代は隙間の神の内情にあまり詳しく無いようだ。


「戦闘系の座天使スローンズ力天使デュナメイスからはしょっちゅうだよ。まあ、大体はすぐに捕らえられるのだけど…」


近くの棚からノートパソコンを取り出しながら天士が言う。


「『強烈な奴』は中々捕まらなくてね。国外に逃げられたらお手上げだしね」


「『強烈な奴』…でありますか?」


「色々いるよ。聖痕名や経歴が載っている…」


パソコンを操作しながら天士が言う。


軽い言葉とは裏腹にうんざりするような声だった。


「やはり、所詮、金銭で集めた組織では限界があるのかね…」


その言葉に色雨達は何も答えられなかった。


色雨達のように心から人を救おうと考えているのは一握りであり、


仕事として仕方なく人を救っている人間がほとんどだと言うこと。


警察が皆、正義を志しているとは限らないことと同じことだ。


「とりあえず、その捕まった違法聖痕使いを…」


ピピピピピピー


天士が言いかけた時に、携帯の着信音がなった。


「す、すみません!」


「いいよいいよ。大事な用だと困るからね」


慌てて皆代が携帯を取り出して謝るが、天士は気にしていないようだ。


電話だったようなので、天士に言い、皆代が申し訳なさそうに電話に出る。


だが、どうも電話の相手は慌てているようで、会話にならない。


「落ち着いて下さい、どうしたのでありますか?」


落ち着かせるようにゆっくりと皆代が言う。


相手は同僚のようだ。


「…え?…わ、分かりました! すぐに!」


そして、何かを聞くと、慌てて電話を切った。


「どうしたのかね?」


ただ事では無いと思い、天士が尋ねる。


「大変であります! 例の違法聖痕使いが、その仲間と思われる者と共に逃げ出しました!」








「危ねー、もう少しで尋問と拷問のフルコースだったぜ…ありがとうございました逸谷さん」


隙間の神の本部から少し離れた古びた公園で、耳と鼻にピアスをしたチンピラ風の男が言う。


「聖痕があると言っても、所詮は人間だからなー、油断すりゃ、あっさり捕まるわなー」


その隣の男が言う。


その逸谷と呼ばれた男は、特に目立ちそうにない外見をしていた。


どこにでもいそうな顔に、どこにでもありそうな服、


殺人犯として報道されたら知人にそんな風には見えなかったなどと言われそうなタイプだ。


だが、周囲に転がった死体を見ても、表情が変わらない点が、異常だった。


「いやぁ、聞いて下さいよ逸谷さん。オレ、適当に女を見つけては襲って、殺したりしてたんだけどよぉ。まさか、あんな美人が隙間の神だったなんてよぉ、姦計ってやつだぜ!」


下品な笑みを浮かべながらチンピラ風の男が言う。


「いやいや、気持ちは分からないでもねーが、無理矢理組み伏せたってつまらねーだろ。女は口説くのが楽しいんだよ」


考えが合わないとでも言いたげに逸谷が言う。


「へっ、オレは逸谷さんと違って不細工だからよぉ、無理矢理やるしかねえんだよ。ハハハ、結構楽しいもんですぜ?」


「…理解出来ねーな。つーか、暴君ボスには言うなよ? あれで結構潔癖だからなー」


「そうなんスか?」


「ああ、性犯罪とか快楽殺人とか大嫌いでなー、仲間でも殺しかねない」


「マジですか…」


今まで浮かべていた下品な笑みを止めて、青ざめるチンピラ風の男。


それだけ、自分達のリーダーの怒りを恐れているのだろう。


「それぐらいは把握しとけよ。はぁー、オーミー程、従順になれとは言わねーからよ。とりあえず、ボスの機嫌は損ねるなよ」


溜め息をつきながら逸谷はごそごそと懐を探る。


やがて、見つけたらしく、それを右手に持つ。


錠剤の入った瓶だった。


「あれ? 逸谷さん、ヤクやってましたっけ?」


「馬鹿ヤロー。違う、誰が麻薬なんかするかよー。これは医者に処方された、れっきとした薬だ」


そういいながら、逸谷は手に錠剤を出し、飲み込む。


「それにしても、最悪だ。出来るだけ静かに動いてるつもりだが、隙間の神にはほとんどバレてやがる」


「捕まって自白する奴がいるんじゃねえですか?」


自分もべらべらと喋ったことは隠して、チンピラ風の男が言う。


「だから、余計なことを言う前にオレが出てきたんだろーがよ」


「ああ、逸谷さん、ボスの『右腕』ですからね」


「右腕なー、左腕も決めた方がいいかもなー…」


溜め息をつきながら疲れたような顔をする逸谷。


すると、


「見つけたよ」


古びた公園に人影が入って来た。








皆代に連絡が入った後、すぐに天士は、本部の人間に捜索と、念の為に一般人を誘導し、避難させた。


この本部のある町では、違法聖痕使いが暴れることはよくあることなので、他の町より特に秘匿に力を入れている為、町中の人間の記憶操作も可能だった。


しかし、のんびりしていては町の外に逃げられてしまうので、先に色雨や皆代達が捜索に出ていたのだ。


「テメェ、隙間の神か! どうしてここが分かった!」


チンピラ風の男が焦りを隠さずに言う。


「…登録していない聖痕を探知する聖痕装置…最近開発された物さ」


「成る程な、さっきこいつらを殺した時に感知されたのか」


チンピラ風の男のように焦らずに逸谷が言う。


「その人達を殺したのは君だね?名前は何だい?」


逸谷不戒イツタニ フカイ


逸谷は簡潔に言った。


「そうか、私の名前は江枕色雨だよ」


座天使スローンズ? いや、力天使デュナメイスか?」


逸谷が聞く。


色雨の実力を知る為に聞いたのだろう。


「反逆者がリーダーをしていると言うのは間違いではなさそうだね…でも、私はただの権天使アルヒャイだよ」


権天使アルヒャイ? 人員不足かよ」


それが予想外だったように逸谷が言う。


「まあ、そんなところ」


「フン、何だろうと関係無えよ!」


チンピラ風の男がそう叫ぶと同時に、男の手元に燃え盛る炎が現れる。


「………」


色雨はそれを見て、無言でステッキのような聖痕装置を構える。


「くたばれ!」


炎が爆音を発てて、色雨の下へ向かう。


瞬間、バァン!と爆発音が響いた。


「ガハッ!」


しかし、吹き飛ばされたのは色雨ではなく、チンピラ風の男の方だった。


「聖痕装置『ウリエル』。


自然発火パイロキネシス系の聖痕を参考にした炎を撃ち出す銃だ」


煙を吹いているステッキのような聖痕装置をくるくる回しながら色雨が言った。

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