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スティグマ  作者: 髪槍夜昼
一章、史上最弱の異能者
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第一話 脆弱な超能力者

髪槍夜昼です。


バトルシーンがかなり苦手ですけど、どうか読んでください。


バトル系だけれどシリアスが少ないです。


「はぁ、面倒臭えな」


赤い髪に赤い瞳をした不良男子高校生、神無棺カンナ ヒツギは呟いた。


その風貌でそれなりに目立つ棺は、不良の中でも、よく教師に目をつけられることがあり、


今日は授業をサボったことの罰として放課後の校庭の整備をさせられていた。


動かされたサッカーゴールを元の場所に移動させた時は他の人間の力も借りたがその後はずっと一人で校庭の整備をしており、


昨日の風で凸凹になった校庭に土を運び、穴を埋める作業を長い時間繰り返していた。


「しっかし、台風じゃあるまいし、こんな穴が風で空くか? 普通」


穴を埋めながら棺が言う。


「…そういや、サッカーゴールとかが勝手に移動してたことから『ポルターガイスト』だ、とか言ってる奴もいたな」


朝の様子を思い出しながら棺が言う。


奇妙な穴が大量に校庭に空き、物が移動している。


朝の校庭はそのようなことを言い出す者がいてもおかしくない状態だった。


「ま、実際、不明な点が多いが、『それしか考えられないから』そういう結論になるんだよな」


含みのある言い方をすると棺はふと小石を手に取る。


「………」


それを握りしめていると、右腕に青白く光る入れ墨のような傷痕のような紋様が突然浮かび上がった。


それを確認した後、棺は拳を開く。


すると、小石は地面に落下せず虚空を漂い始めた。


「触れたものの重力を一時的に奪う力…下らねえ」


ふざけた調子で言った後、吐き捨てるように言う棺。


そうしてる内に、漂っていた小石は地面に落下した。


「誰かを救う力でも無ければ、誰かを傷つける力でも無い。世界一無駄な超能力だな」


棺は自嘲気味に言った。


棺は昔からこの世に不可思議な現象があることを『知っていた』


触れたものを十数秒、無重力にする矮小な超能力しか持っていないが、


確かにこの世に不可思議な現象が存在することを知っていた。


だが、棺はそれに関わろうとかそれを利用しようと考えたことは無く、


幽霊などと同じで、どこかにはいるんだろうけど、興味は無い。


いてもいなくても一緒と考えており、今までそれを気にしたことも、他人に力を見せたことも無かった。


知ってはいるが、考えることはしなかったのだ。


そうして生きてきたのだ。


「超能力があるんだし、幽霊もいたりしてな…そういえば、ウザイ体育教師が怪我したって言ってたな…」


(やべ、マジで幽霊の仕業に思えてきた。生徒の恨みの生き霊ってやつか?)


少し薄暗くなってきた校庭でぽつんと一人で立っている状況を考え、背筋が寒くなる棺。


「……あ?」


気を紛らわそうと、上を向いた時、何かが棺の視界に入った。


屋上の手すりで何かをしている人影だった。


屋上はフェンスが老朽化で壊れていて危険なので、立入禁止になっていたはずだった。


そして、その人影は老朽化した手すりに触れている。


「…おいおい…」


棺は何となく嫌な予感がして、作業を止め、人影に声をかけられる位置まで行こうと、歩き出す。


(あの手すりはフェンスと同じくらい古いんだぞ、あれに万が一にでも、寄り掛かりでもしたら…)


ベギッと嫌な音が棺の上の方からした。


「こうなるんだよな! やっぱり!」


音と共に全速力で走る棺。


手すりが壊れたことで落下してきた人影まではそれほど離れていない。


漫画や映画のように落ちてきた者を抱き留めることは現実では不可能だ。


しかし、棺には矮小ながら不可思議な現象を引き起こす力がある。


抱き留めるれば、重さを無くすことが出来るし、最悪でも指の先が触れることが出来れば助かる。


棺の秘密がばれてしまう為本当に『最悪』だが、


「ギリで間に合う!」


棺は叫びながら、落下点に辿り着き、落ちてきた人影をキャッチした。


正に間一髪だった。


「…はぁ、大丈夫か?お前…は…」


「…ありがとう…ございました」


呆然とした様子で手の中の落ちてきた少女が言った。


「………」


何故か棺は手を放した。


「キャン!」


当然、少女はそのまま地面に落下した。








「痛いじゃないですか! 何で手を放すんですか!」


栗色のふわっとした髪をした優しそうな目が特徴的な少女が言う。


「うるせーな、自殺者」


「自殺者じゃありません、江枕衣エマクラ コロモです。今日、転校してきました」


「ああ、そうかい。屋上には何でいたんだ?」


「学校の見学をしてたんですよ、そしたら、手すりが壊れて…」


「はぁ、真面目だな。学校なんて、どうだっていいじゃねえか」


「何を言ってるんですか、高校生活は人生で一度っきりなんですよ!」


「一度っきり…ね」


学校に特に意味を感じられない。


青春とか言われても自覚が無い。


親身になってくれる教師もいなければ、


同級生も、学校を卒業したら連絡も取らないような薄い関係ばかり、


そんな、今時の無気力に生きているだけの若者が神無棺だった。


「さて、もう学校には誰もいないような時間になっちまったぜ? オレみたいな奴と一緒にいたら襲われるかもしれねえぞ、転校生」


少し脅かすように棺が衣に言った。


真面目で、自分と合わない衣と早々に離れたくなったのだろう。


「…そうですね、都合よく周りに誰もいません」


辺りを見回しながら衣が言った。


「そうだろう…って、都合よく?」


言い間違い? と棺は首を傾げた。


瞬間、レーザーのように光る細い縄のようなものが棺に襲い掛かった。


「うおっ! 何だ!」


それを躱しながら棺が混乱しながら叫ぶ。


「すいませんが、大人しくついて来て下さい」


その光る縄のようなものを手から出しながら、衣が言った。


「大人しくって感じじゃねえだろ! 無理矢理連れていく気満々じゃねえか!」


聖痕スティグマを悪用する人間に容赦はしません! 弁解はありますか?」


「説明が色々足らねえぞ! 大体…」


「問答無用です!」


「矛盾してんじゃねえか! 襲う所か襲われたぜ!チクショウ!」


棺は叫びながら衣から逃げ出した。








「何だってんだよ、何をどう間違えれば、夜の校舎で鬼ごっこなんだよ」


棺は男子トイレに隠れながら呟く。


「…そういや、スティグマがどうとか言ってたな…」


(まさか、あの下らない超能力のことか? あいつも変な縄を出してたし…)


棺は壁に寄り掛かりながら考える。


すると、


「ようやく見つけました、心理的にここに入りたくは無かったのですが…」


男子トイレに入るのを躊躇いながら衣が言う。


「何なんだ、何故、オレなんだ!」


「貴方がスティグマを悪用したからですよ」


「スティグマ? 超能力のことか?」


「自白しましたね。その通りです、超能力や魔法などの超常現象を引き起こす、『力』、それが聖痕スティグマです」


「………」


「私の聖痕は『観念動力サイコキネシス』、超能力の中ではポピュラーな部類で、離れた物を動かしたり、逆に止めたり、様々なタイプがいます」


そういうと、衣は再び手から光る縄を生み出す。


「私は思念を物質化することに特化した聖痕使い(スティグマータ)です、敵を束縛する縄など、簡単な思念イメージを物質化出来ます」


自分の力を誇るように衣は言った。


「…ああ、そうかよ。便利な能力で羨ましいぜ」


そういうと、パチンと棺は指を鳴らした。


「何を?…ハッ!」


衣が何かに気づいたその瞬間、バシャッと衣はずぶ濡れになった。


カランと軽い音を発てて、近くに落ちてきたのはバケツだった。


棺は衣が話をしている最中に水の入ったバケツを浮かばせて頭上に持ってきたのだった。


「………」


「戦意喪失したか? 女を殴るのはあまり気が進まないんで…」


棺が転がっているバケツを蹴飛ばしながら言う。


「…こ…」


「こんなことを…ん?」


俯いていた衣がボソッと呟き、棺が気づいた。


衣の肩がプルプルと震えていることに…


(や、ヤベー、泣かしちゃったか?)


「お、落ち着けって、夜の学校で女子を泣かせたって知られ…」


棺の言葉はズガンと言う音に遮られた。


音の方を棺が見ると、トイレの壁に大きなひびが入っていた。


「………」


だらだらと冷や汗をかきながら衣を見る棺。


「殺します! 絶対殺してやりますよ! ウワーン!」


衣が泣きながら叫んだ。


先程の光る縄が鞭のように変化し、壁や床にぶつかっては、破壊する。


「し、死ぬー!」


目茶苦茶に鞭を振り回す衣に棺が叫びながら逃げる。


「学校で悪戯する程度ならまだしも、罪を重ねましたね! 許しません!」


後ろから走って追い掛けながら衣が叫ぶ。


「…?…どういう意味だ」


(学校で悪戯? 罪を重ねる…そういえば、スティグマを悪用とか言ってたな)


「まだしらを切るつもりですか!極悪人!校庭を聖痕スティグマで目茶苦茶にしたことですよ!」


(つまり、何だ? オレが学校の校庭をあんなにしたと思ってるのか? 馬鹿な、オレにあんなこと出来る訳が無い…)


「いい加減、お縄につきなさい、今なら、鞭百叩きで許しましょう!」


「それは全然許してない……ん?」


逃げ続け、再び校庭に出た時、棺は何かを見た。


机や椅子を手にした怪しげな男だった。


「あいつだー!」


棺が叫んだ。


「え?」


「あいつが犯人だ!」


男を指差して棺が大声で叫んだ。


「チッ、まだ人が…」


男の持っていた机や椅子が浮かび上がった。


「ほれみろ、やっぱりあいつじゃねえか!」


「ええ! じゃ、じゃあ、貴方は…?」


「いいからさっさと捕まえるぞ!」


「は、はい!」


いつの間にか主導権が棺に移動していることも気付かず、二人は男に向かって走り出す。


「クッ、死ね!」


机と椅子が勢いよく二人に襲い掛かる。


「無駄です!」


バチィンと言う音と共に衣の鞭に全て薙ぎ払われた。


「悪いが、勘違いで襲い掛かられて疲れてるんだ」


男の前に辿り着き、棺が静かに言う。


「ハ…」


「一コマで死んどけ!」


「ガァ!」


棺は思い切り、男を殴り飛ばした。








「…すいませんでした。無関係でしたのに疑ってしまって…」


「…まあ、気にすんな、これもいい思い出だ」


(忘れられない思い出になりそうだが…)


「ありがとうございます、そして、協力感謝します」


「おう………協力?」


「これからこの町にいる聖痕使い(スティグマータ)を私は捕まえないといけないんです」


「そうか、ご勝手に…」


「それには協力者が必要不可欠です」


「…おい」


(この流れは…)


「これからよろしくお願いします。神無棺さん」


「そんな馬鹿なー!」


棺の叫び声が夜の校舎に響いていた。

どうでしたか?


連載小説なので、次も呼んでくれると有り難いです


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