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第3話:魔王城前での遭遇と、奇跡の会議キャンセル、そして先輩との朝デート!?

逃げるようにして出社し、そびえ立つ自社ビル――別名『魔王城(ブラック・キャッスル)』を見上げて、俺は深々と溜め息をついた。


「溜め息をつくと、幸せが逃げちゃうわよ、日向くん」


不意に背後から声をかけられ振り返ると、そこには同じ部署の先輩・(たちばな) 詩織しおりの姿があった。


29歳(自称)の彼女は、肩口で切りそろえたブラウンの髪がよく似合う大人の女性だ。社内にいる時はデキるキャリアウーマン風に髪をキッチリとまとめているが、今は完全に下ろしており、左側の前髪だけを紫色のヘアピンで留めている。

パリッとしたシャツにグレーのテーラードジャケット、同色のタイトスカートにヒールという、絵に描いたような見事なオフィスカジュアル。


その出で立ち通り、仕事は完璧で後輩の面倒見もよく、おまけにルックスも抜群とくれば、社内での人気がダントツなのも頷ける。


「お、おはようございます、橘先輩!」

俺が慌ててお辞儀をすると、先輩は気にする風でもなくヒラヒラと手を振り返してくれた。


「朝早いじゃない!」

「……これから始まる地獄(クソ会議)に向けて、心の準備をしておかないと……」


橘先輩の良いところは、妙な気を遣わずに素の愚痴をこぼせる点だ。


「地獄?」

キョトンとした表情を浮かべた先輩だったが、すぐに合点がいったようにポンと手を叩いた。

「ああ、朝の全体ミーティングのことね? ねぇ、スマホ見てないの?」


先輩の苦笑いに急かされるように、俺はビジネスバッグの中から私用のスマホを取り出した。

画面を開くと、チャットアプリに通知が来ていた。


『【上司】:クライアント側で緊急トラブル発生。俺が直接対応に向かうため、明朝のミーティングは一旦キャンセルとする』


「……あ」


現実逃避のために、昨夜家に帰ってからチャットの通知を意図的に無視していたのが完全に裏目に出た。

じゃあ、俺が満員電車に揉まれながら30分も早く出社してきた意味って一体!?

今の俺、赤い付け鼻を被ればそのままサーカスで立派なピエロとして働けそうだぞ。


『だったら、明日の朝、クソ上司に怒られないようにしてくれよ!』


ふと、昨夜あのガラケーに向かって打ち込んだ願い事が脳裏をよぎった。


(……まさか、な)


バッグの中の底で、あの古臭いガラケーは相変わらずただの電子ゴミのように沈黙を保っているはずだ。偶然に決まっている。


「そういうわけ。30分も時間が空いちゃったわね! 日向くん、この後なにか予定ある?」

先輩の明るい声で、俺は我に返った。


「えっと、特に何も……」

(自席でソシャゲのデイリーミッションを消化するくらいしか……)


「だったら、これから私と一緒に近くの神社へ参拝に行かない?」


……えっ!? これってデートのお誘い!? 絶対デートですよね!?


「い、行きます!」


ソシャゲのデイリーなんていつでも出来る。だが、橘先輩とのお出かけイベントなんて、SSRを引くより確率が低い激レアなのだ。


俺は尻尾を振る犬のように、足早に歩き出す先輩の背中を慌てて追いかけた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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