3話 魔法の発動
「今ざっと全体を見てきたが、これは全部炎や爆発のような魔法で行われたようだ。全部最近は地下に籠ってたせいで気が付かなかった。」
村の様子を見に行っていたレオンが戻ってきて俺に言った。
「そ、そうか。その、お前は大丈夫なのか。」
どこを見ても瓦礫でとても助かっている人がいるようには思えない。恐らく、こいつの家族も巻き込まれたかもしれない。
「僕は大丈夫だ。家出中だからここに親族はいない。」
家出中なの!?他人の家族関係にはあまり首を突っ込みたくないからこれ以上は聞かないでおこう。
「そうだったのか。それはよかったね。」
「いや、全然よくない。ここは魔法のプロ『魔女』たちが住んでた村だ。ざっと20人は居る。その村をこんな有様にしたやつがいるなんて考えられない。もしいたとしても魔王レベルに危険な奴だ。それに、それに僕はここに居る魔女たちのおかげで異世界召喚を成功させたんだ。友達のような母親のようなひとたちだった。」
レオンは血が出そうなほど拳を握りしめていた。
「もしかしてその魔王レベルの奴を追いかけるのか?そしたら俺はどうすんだよ。まだこの世界に来たばっかなんだぞ。」
くっ、まずい。俺はまだこの世界について知らないことが多すぎる。レオンについていったとしても足手まとい。ここで別れても周りは森だらけだ。迷って飢え死。俺が死なないようにするためにもレオンを引き止めないと。
「じゃあついてこい。とりあえず1年以内に家に帰れば学校には間に合うだろ。」
「いや俺魔法とか使えないぞ。足手まといはごめんだ。」
「大丈夫。君の体も大分いじってある。おかげで魔力はほぼ無限に等しい。ちょこょっと基礎を覚えたらすぐ強くなるよ。」
「本当か!それはありがたい。じゃあ俺もついてくよ。」
俺の不安は魔法が使えることが分かるとすぐに消し飛んだ。
「じゃあ荷物をまとめたらさっそく出発するか。」
レオンがそう言い、俺は修学旅行に行く前日のような気分になっていた。
まずは服を着ることにした。今羽織っているマントじゃ股下がスースーして気持ち悪い。レオンは特に荷物がないらしく今は巻き込まれた村人たちを埋葬している。
「おーいレオンこっちの支度は終わったから手伝おうか?」
俺は支度を終えたため墓地にいるレオンを呼んだ。レオンは沢山の墓石が並んだ前で深く手を合わせて黙祷していた。僕もそれに習って一緒に手を合わせた。
いよいよ出発の時が迫っていた。俺は結局杖に使う棒以外は持たないことにした。というかほとんど壊れてたり、土まみれだったり血で汚れていたりで結局使えそうなものがなかった。
「じゃあ行くか。」
そうレオンが言い、今俺の異世界生活が始まった。
まず俺たちは魔女村から一番近くにあるプルセリア王国の一番北、城塞都市ドルームへ向かうことになった。どうやら世界地図の北西に魔王領があり、魔王領に隣接して南にプルセリア王国があるそうだ。その二つの国の間を走る山脈に魔女村があるとレオンが教えてくれた。
「ここが魔王領の近くなら村を焼いたのは魔王の仲間じゃないのか?」
「その可能性はあるがあいにく俺もここ一か月は外で何が起こったのか知らないんだ。だが一か月前には魔王や魔王の手下に爆発の魔法を使うような奴はいなかった。犯人が魔王軍の可能性は低い。」
「城塞都市ドルームには情報収集のために行くってことか。」
俺たちはドルーム城塞都市に向かって森を歩きながら順調に進んでいた。途中出てきた魔物はレオンが倒してくれた。
空が赤くなったところで俺たちは足を止め野宿の準備をした。薪に火をつけ、テントを張り、昼に捕まえた野兎を使った夜ご飯を食べた後、急いで片づけた。
「やっとお待ちかねの魔法の修行だ!」
旅の前に、寝る前に魔法の修行をつけてくれるとレオンに約束したのだ。
「じゃあまずは魔力を感じることから始めよう。魔力を流したり吸ったりするのが一番なんだが、君の場合魔力が多すぎるから分かりにくい。そのため魔法を発動して魔力を感じることにした。攻撃魔法は近くの魔獣にバレそうだから回復魔法で練習しよう。はい、指切って。」
「はい!あ。ああああああ痛ってあああ」
俺はすぐに人差し指を切ろうとしたが魔法をさっそく使えるという興奮で思わず指を切り落としてしまった。
「お、落ち着け。切り落とした指を断面にくっつけて。回復魔法の詠唱を唱えるんだ。僕と同じ言葉を言えばいい。『純白の精霊たちよ我との契約の元、我に癒しの風を――ヒール』」
俺は指の痛みを頑張って我慢し、レオンの言われた通りに復唱した
「純白の精霊たちよ我との契約の元、我に癒しの風を――ヒール!」
すると切れた人差し指が光る。よく見るとだんだんと離れていた指がつながっていく。
「おい!見とれてないで魔力を意識しろ!」
俺はレオンの言葉で目が覚め、指のあたりに意識を集中した。すると自分の人差し指に何かが集まっているのを感じた。そこをよく目を凝らすと透明な炎のようなもの、おそらく魔力であろうものが指を覆っているのを感じた。
「これが、魔力。」
指の回復が終わった。どこにも違和感はなく、ちゃんと今まで通り動く。いつの間にか指の痛みも引いていた。しかも先ほどとは違い、意識をすれば体に魔力が通っていることがなんとなく分かるようになっていた。
「わかったか?体を巡る魔力が。」
「ああ。なんとなくだがそこにあるってのが分かるくらいには魔力を感じる。」
「寝る前にもう一回指切って魔力を感じてみな。僕は先に寝るよ。」
レオンは大きなあくびをしてテントに入り、眠りについた。
翌朝、目が覚めたレオンはテントを出ると、指から血を出している千之を見つけた。
「もうやってんのか。真面目だねぇ。」
「うわっ!お、おはようレオン。脅かすなよ。まあ俺は真面目だからな。アハハ。」
え?もう朝⁉治癒魔法すんの楽しすぎて寝るの忘れてた!千之の目は赤くはれていた。
「目腫れてるよ。もしかして寝てないのか?」
「…はい。」
「途中眠くなっても知らないからね。」
俺たちはテントを畳み、再び城塞都市ドルームへ歩みだした。




