2話 外の世界
レオンが言うにはここはレオンの実験小屋にある地下室らしい。村の人たちにバレないようにこっそり地下で研究してたそうだ。
早く外に出たかったため、俺とレオンは地上につながっている階段を上っていた。階段はレンガでできており、壁には松明が掛けてあった。さっきの真っ白な部屋とは様子がガラッと変わったため、こいつの感性にちょっと引いた。
「慣れないな。」
まだこの手足が短い体に慣れていない。たまに段差で転びそうになる。さっきレオンにもらった服の代わりの大きめマントもちょっとチクチクして痒い。裸よりはマシだが。
「てか、この体って元々誰なんだ。」
俺にとっては純粋な疑問だったが、言ってからその過ちに気付いた。俺はレオンが良い人だと思ったから結構気を許していたが、俺の良い人の判断基準がこいつに慰められたっていう事だけじゃないか。もしかしたら今の俺の体はレオンが儀式のために殺した死体なんじゃないか。儀式を成功させるための犠牲は大きかったんじゃないか。そもそも異世界召喚って基本勇者がされるものだ。だが俺が召喚されたところには聖女も王様もいなかった。何のために俺を召喚したのか。
俺の頭にはネガティブな思考でいっぱいになった。だが千之の頭には犠牲になった人たちに対する気持ちはなく、ただ自分がすでに巻き込まれているかもしれない事に恐怖してた。
「さすがに騙せないか。でももう遅い。」
とレオンは不気味な笑みを浮かべた。
俺は本気でやばいと思った。額からは冷や汗が滝のように流れ、手も震えていた。
レオンが口を開いた。俺はとっさにしゃがみ、頭を手で守る。
「なーんてね。」
「ふぇ?」
予想外な行動のレオンに俺の口から思わず情けない声がこぼれた。
「ていうか君が早く外に出ようと僕に何も聞かなかったのが悪いじゃないか。」
そういえばそうだったような。
「まあ大丈夫だよ。僕は君の召還に犠牲は出してない。その代わりにネズミを使ったのは許してくれ。」
ああそっか。人じゃなくても魂はあるか。俺は完全に自分が早とちりしていたことに気付いた。
「俺の早とちりで疑って悪かったよ。でももう脅かすのはやめてくれ。心臓に悪い。」
「ハハハハハッにしてもさっきの君の情けない姿には思わず笑いがこぼれてしまったよ。」
さっきにやけてたのはそういう事か。くそーいつかぜってーやり返してやる。そう心に決めた千之であった。
「じゃあ結局今の俺の体は誰の体なんだ?」
「それは僕の体だよ。」
「え?」
死んだ弟とか来ると思ったら予想の斜め上過ぎて驚いた。
「まず魂のない人造人間を作るだろ。そこに俺の魂を入れて、元いた体に君を入れれば犠牲無しさ。」
「人造人間ってとこが引っかかるけど、つまりはお前が作った人間ってことか。道理でイケメンなわけだ。」
そうだ。こいつを見たときから思っていた。ありえないくらいイケメンなんだ。しかも綺麗な銀髪に高身長足長の理想的なスタイル。
ん?おいおいちょっと待てと。なんでわざわざ魂だけ異世界召喚させたんだ?しかもわざわざ俺を人造人間の方に入れずに今の体に入れるなんて明らかにおかしい。
「おい。まさかお前ブサイクだから人造人間に移ったとかじゃないよなあ。」
俺の声は少し震えていた。怒りもあったし恐怖からも来る震えだ。
ちょうどその時階段の頂上に着いた。梯子の上に窓のような形で扉がついている。おそらくそこが地上に繋がるのだろう。
「まあまあ落ち着け。自分で言うのは恥ずかしいがぜんぜんブサイクじゃないさ。ただ僕が作った人造人間の方がかっこよかったからそっちに移っただけさ。そんなに不安なら上の風呂場に鏡があるから見てきなよ」
そう言われ俺は急いで梯子を上り、扉を開けようとした。
「ん?レオンこれどうやって開けるんだ。」
「開かないか?特に特別な仕掛けはないんだけど。」
「あ!ちょっと開いた。けどこれ無理だ。」
扉には上から何か重いものが乗っていて子供の腕力じゃ持ち上がらなさそうだった。俺は梯子を下り、レオンにそれを伝えた。
「本当だ。何か乗っかてるな。ちょっとどいてろ。」
俺が少し離れるとレオンが右ストレートで扉をブチ開け、そのまま上っていった。
「先行ってるよ。」
千之はレオンのとんでもパワーに驚いていた。あれが魔法?すごいな。属性で言うなら身体強化ってやつか。俺も魔法使ってみたいな。あとでレオンに教えてもらお。
「風呂場ってどこにあるんだ?」
梯子を上りながらレオンに聞いた。
「・・・・」
「レオン?」
どうしたんだ。急にレオンの声が聞こえなくなったぞ。
すると千之の鼻にとんでもなく臭い匂いが漂った。
「うっ、クッサ。おいレオン。なんか臭いぞ。いるんなら返事し」
そこで千之は言いとどまった。なぜならそこにはおそらく小屋だったものが瓦礫になっていたからだ。ところどころには異世界召喚に使ったであろう計算式が書かれた紙や食器、本などのレオンが生活に使っていたであろうものが散らばっていた。
最後まで梯子を上りきるとさらにひどい光景が広がっていた。
「な、」
おそらくここは村だったのだろう。だが今目に移っているものはすべてが瓦礫の山だ。ところどころには腐りかけた死体や骨が転がっていた。千之は先ほどの臭いが死体が腐った死臭だと気づく。
千之は自分が巻き込まれなかったことに心底ホッとした。




