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祭響夢幻のセプテット  作者: Gno00
Session.3 弾けろスパーク・エイトビート

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第67話 晴れた『靄』

 立体映像の蓮音より渡された、お守りなる蒼い巾着袋。

 結華が手に感じるそれなりの重みからして、中に何かが入っているようで。

 確認も兼ねて袋を開けてみると、その中には紋章のような水晶の塊が入っていた。



「きらきらしてる。とっても」


「これ、凄い魔力が詰まってるわ……」



 よく見えるよう結華が翳したその物体を、『オヒメサマ』達も目を凝らして見る。

 黒に近しい青色のそれが繊細ながらも力強い魔力を秘めている事を、個々人の魔法センスが認識する。

 色合いとその性質から、映像の蓮音が告げた通り彼女の代わりになり得る物品であった。


 形状と裏表、それらを一通り確認したところで結華は巾着袋に仕舞い込む。

 一旦フードを外した彼女が紐を首に掛けると、明色系をした服装のアクセントとなりすぐに馴染んだ。



「良かったね、ユイカちゃん!」


「うん。大切にする」



 タルチの何気ない一言へ、結華は姿と相応の笑みを浮かべる。

 先程目の当たりにした水晶から『確証は無くとも、蓮音と再会する為の手掛かりを得られた』と感じたからだ。

 彼女の見せる純粋な笑顔に、一同は爽やかな笑みで返す。


 それから、顎に手を当て考える素振りを見せるロギィは、展開し続けている『特別造形物』の方へ向く。

「やっぱり……」と小さく呟くと、視線はペルシェンカの方へ。



「ねぇ、その『特別造形物(ナファルタ・クテム)』? …だったわね。それもレンネさんが作ったものなの?」


「そーだよ。こう、立方体をさぁグイーン! ガシャン! ギュン!って感じで変形させてさ!」


「……何となく分かったわ、もう良いわよ」



 変形生成過程を擬音込みで説明し始めるのに対し、ロギィは呆れ気味に話を終わらせる。

 特殊な構造な為に説明が難しい。これを溜息混じりに思い知るのであった。



「まぁ、とにかく。レンネさんって造形の魔法が得意なのね。『特別造形物』と言いお守り(それ)と言い、凄まじい技術力だわ」


「ネー。今度会ったら作るコツとかあるのか聞いてみたいヨォ」



 ロギィとユドゥの会話を聞いて、いつも通りの無表情に戻った結華は『フェルク・レスタム』2日目で聞いた内容を思い出す。

 『魔深界』での失踪から今日で既に8日が経っており、その前には復興作業に意欲的に取り掛かっていたという事を。

 向こうに行けないからこそ、彼女達『深魔族』の証言も手掛かりになる。

 落ち込んでいた気分が晴れた事で、結華は尋ねる決心を付けた。



「ねぇ。向こうで見た蓮音お姉ちゃんって、どんな感じだった?」


「どう、って……」



 尋ねられたロギィとユドゥは直ぐ様思い出す素振りを見せる。

 顔を見合わせつつ、彼女達は再び口を開いた。



「優しい感じではあったけど、焦っている感じでもあったわね。――此処に来る前のユイカみたいな感じで」


「親切にしつツ、それでいて何か聞いてたような気がすル。…ン? 何か聞いてタ……? ――アァッ!!」



 記憶を辿っていたユドゥが突然叫ぶ。近くで聞いていたロギィとタルチが驚きつつ耳を塞ぐ。

 それから、見開いた緑の眼差しが結華の方を見た。



「……あの人が探してたのっテェ、ユイカじゃン……」


「それが何よ? 当たり前の事じゃない……」


「ユドゥ、いきなり叫ばないでよ……」


「いヤ、あのサ。ロギィの言う通りだけどそうじゃなくっテェ。…ユイカ、この島に来る前の事、覚えてル……?」



 何かを言いたげに、それでいて逸る気持ちを抑えている様子のユドゥの問いへ、今度は結華が思い出しつつ答える。

 


「ぐるぐる、にまきこまれて。気がついたらここにいた」


「確かレンネさんもそんな事言ってた気がするヨォ。…でネ、そうなった切っ掛けハ?」


「おもいだせない……」



 思い出そうとしても、靄のような物が掛かっている感覚に阻まれる。

 それを取り払おうと画策するも、上手く行かない。数秒の後、結華は諦める事にした。


 彼女の様子を見て、「ユイカもそうなんだネ……」とユドゥは呟く。



「…実はネ。これを思い出したのたった今、なんだヨ。今まで意識してなかったんだけど、記憶の中に『靄が掛かった』感じでサ。やぁっとそれが晴れたんだヨ……」



 忌々しいものへの苛立ち混じりに話すユドゥの言葉に、ロギィが反応する。

 

 

「何それ……。初めて聞いたわよ」

 

「マァ、ロギィやタルチに伝えるまでも無いと思ったからネェ。でモ、ユドゥはユドゥでイライラしてたヨ。これって誰かの魔法の所為って事だよネェ?」



 彼女の話を聞きながら、結華は『フェルク・レスタム』で発生していた現象を思い出す。

 リハーサルとは言え放たれた魔法には感情操作の作用があった。バレルドームの外に居る人間に働きかけるものが。

 それに近しい魔法の作用が、ユドゥに仕込まれていた。ユドゥが言いたいのはこういう事だ。



「初めっからこうなってなかったラ、いの一番に言ってたヨ。『魔深界(向こう)』でユイカの事探してたっテ。『べモン・ベルス』が来たのは『間擦界』の連中の所為だっテ。――レンネさんから『雫果(シェザル・トゥ)』に気を付けろって言伝預かってたっテ……!」



 声を荒らげたユドゥは怒りをぶつける。この場に存在しない者達へと。

 直後、自分の発言に対し。彼女は髪を粗雑に掻く反応を示した。



「何でまた思い出すかナァ!? ――何で忘れてたのかナァ!? 伝えるまでも無い訳無いよネェ!!?」

 

「お、落ち着きなさいよユドゥ。どうしちゃったの……」



 取り乱したユドゥへ、ロギィは寄り添う。親友の温もりに背中が触れたからか、ユドゥは少しずつ己を落ち着かせた。

 その間に通り過ぎた他の観光客の注目を集めたものの。ヨウヘイの隠密魔法によって、その視線の数々は逸れていく。



「…騒がせてごめんネ、ロギィ、タルチ、それからミンナ。ユドゥちょっとおかしいかモ」


「おかしいかも、だなんて……。大丈夫、ユドゥは何時も通りよ……」


「私で良いなら、相談聞くよ…?」



 楽しい、和やかな状況から一転、豹変したユドゥと彼女を宥める他の『オヒメサマ』達。

 何が起きたのか。――それは自らの記憶に何らかのロックが掛かっていた、に起因する。


 別世界から来た少女達の、ただならぬ状況。

 それに対し結華は、何者かの作為を感じ取った。


 そして、その何者かは。スーズメッズ暴走にも大きく関わっているのだと。

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