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祭響夢幻のセプテット  作者: Gno00
Opening ジェック・ベッタ アノイマレオル

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第6話 『波及』齎す行動

「27日のよやく、だっけあのお姉さん」


「『サン・トゥ・ラトール』の若いのだね、そうだとも」


「いいせき、とれるといいね」


「速い者勝ちだとは言ったさね。…新参には優しくしろ、とあいつらに釘刺しとくよ、念の為」


「あいつら?」


「よくうちに来る連中さ、こっち来た次の日に見ただろ?」


「そういえば、そうだった」

 


 あるアパレルショップを襲った異形騒ぎから2日後。

 授業を終えて帰宅したジンは頭を抱えながらネットニュースを目にしていた。


 1つ、店舗の付近に突如として空間の異変が発生。

 2つ、異変の内容としては罅割れの後亀裂に変化。そこから灰色の粘体が流れ込んできて、幾つかのまとまりに分離すると被服の姿をした怪物に変化。

 3つ、怪物はアパレルショップと店主を襲撃。するも、近くに居た謎のDJ風魔法使いが守り、怪物を全て撃破し事無きを得た。

  

 ニュース記事の内容を要約するとこんな感じであり、記事の中にはとある写真が添付されている。

 これこそが、ジンの悩みの種であり。エツコとの会話を終え、テーブル下から顔を出した結華と目が合う。



「どうしたの、お兄ちゃん」


「なァ、これオマエだろ?」



 手に持つスマートフォンの画面を見せる。拡大した写真に映る気後れ気味の紫の顔と部屋着姿の結華の顔の特徴が一致している。

 写真を見て思い出した素振りをするという反応が帰ってきた事で、確証一歩手前の疑惑は晴れた。裏付けを得られたという形で。



「うん。お姉さんといっしょにシャシン? とった」


「やっぱりか……」



 これまでと全く異なる、DJの姿ではあるものの結華である事に違いは無い。

 ジンは「オマエが目立ってどうすんだよ」と「探し人の進展を得る為ならアリなのか?」の出かかった2つの意見のどっちを出すべきか少し悩み、結局呑み込んだ。


 切り替えて、別の話をする。



「それで、怪物達と戦ったんだったな。どうだった?」


「どう、って」


「怖かった、とか。強くなれた、とか。色々あるだろ」



 初めて会った頃から怪物達の事を知っている様子だった結華が、単独でそれらを倒せるまでになった。

 たった1週間と少しの間で急成長をしたが、彼女の様子は2日前から大して変わらない。


 敵意と害意を振り撒く存在を同じく目の当たりにしたからこそ、ジンは尋ねる。

 頬を擦り、少し考えた結華がようやく返答する。


 

「おんがくの力ってすごい。そうおもった」


「そうか……ん?」


「あんなことが出来るなんて。ちょっかんてき、って言うのかな。あたまがスッキリしてするべきことが分かってくる。ここちよかった」


「……そりゃ良かったな」



 目を輝かせながら語らう彼女のテンションに、ジンは呆れ気味に相槌を打つ。

 「案外、悩みが無いのか?」と思いつつ。



「…でも。けっきょくお姉ちゃんは見つからなかった」



 新たな力は得られても、当初の目的に進展は無い。

 示すようにトーンダウンするのを見てジンもまた真面に戻る。



「アパレルのお姉さんににがおえ見せるのわすれてた…」


「それは、仕方ねェよ。咄嗟に求められて出来る事じゃねェしな」


「いつになったら見つけられるかな…」



 表情は変わらないが、不安なのは間違い無い。

 出来る手段は可能な限り取ってはいる。が、大した収穫の無いまま時間が過ぎていくと焦りが出てくる。


 悩みながら居心地の悪い静けさが訪れる中、それを破ったのがエツコだった。



「それじゃ、次は『祭り』で探してみるかい?」


「おばあちゃん」


「バアさん、『祭り』って?」


「あるじゃないか。音楽と縁日を組み合わせたとか言う祭りが。5日後に」



 ジンはカレンダーへ振り向き、その日が5月24日の土曜日である事から、エツコの言う祭りが何なのかを思い出す。



「『フェルク・レスタム』か!?」


「なにそれ?」


「そういやユイカは知らなかったな。『フェルク・レスタム』は此処ミュジ市のバレルドーム内で開催される音楽祭だ。確か遠い異国の言葉で『安らぎの音』を言うんだったな、この名前」


「それって、すごいの?」


「そら凄いさね。3年前に始まったばっかだけど広いドームを丸々使うってんだから」


「今年は色んな国から有名企業がスポンサーで来るらしいな。ドタバタしてたからすっかり忘れてたぜ」



 いまいちピンと来ないものの、ジンの盛り上がり様から結華も『フェルク・レスタム』が規模の大きなものだと何となく理解した。

 ひょっとすれば蓮音が来ているかもしれないし、蓮音を知る人が居るかもしれない。思わぬ方向から希望が見えてきて彼女の顔が少し明るくなった。



「『おまつり』なんだ。とってもだいじな」


「そうだな。これだけの規模ってなれば」


「――それにウチに近いからね、忙しくなるってもんさ」


「いっしょに、いけないの?」



 首を傾げながら問う結華に、エツコは少し申し訳無さそうに答える。

 


「アタシの趣味とは言え手は抜けない。2人で楽しんでお行き」


「…何か手伝える事あるか? オレ達だけ楽しむってのもアレだしな…」


「その気持ちだけ受け取っとくよ。年寄りが勝手にやってる事だ、土産忘れてなきゃ良い」


「そっか。じゃあ当日はコイツと一緒に楽しんでくる」


「おねえちゃんさがしてみる…」



 5日後の予定が粗方決まったところで、エツコは夕飯の支度に取り掛かり2人はテレビを見たりカードゲームに興じたりするなどして過ごすのだった。



 



 




 

 結華が助けたアパレルショップ『サン・トゥ・ラトール』。その店の店主が撮影し自身の管理するSNSに上げられた変身した姿の結華の写真は最初はジワっと伸びる程度だった。

 近所に別の店を構える人々がその可愛らしい姿を高く評価し、少しずつだが確実に注目を集めていき、『サン・トゥ・ラトール』の周囲に留まらない人気となる。

 この反響を受け、店主は結華のDJ姿をイメージした新作を思い付き、事件解決の2週間後にはその新作を売り出すに至った。


 新作は発売後店主の想定以上の人気を博し、やがて『サン・トゥ・ラトール』の主力商品シリーズ『アノイーズ・マレ』を打ち出す事になるのは別の話。



 

 波及は、何も良い方向にとも限らないのだ。アパレルショップを襲撃した群を倒した程度では何も終わってはいない。

 襲撃事件を機にミュジ市を中心に、各地にて大気に罅割れが観測されるようになる。それは、長きに渡る異変の始まりを告げていた。


 同時に、ミュジ・シャニティの各地に散らばる実力者達もまた動き出そうとしていた。

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