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祭響夢幻のセプテット  作者: Gno00
Session.3 弾けろスパーク・エイトビート

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第54話 いらっしゃい、『お客様』

 5月27日。この日は『サン・トゥ・ラトール』の店主が『魔女の料亭』を訪れる日だ。

 珍しく予約の一部を結華も知っている日なのだが、結華自身は屍守家に居た。

 そもそも、彼女は今の居候生活になった翌日に料理店の場所と簡単な概要を説明してもらい、また別の日にお使いの品を持ち運んで、それきりである。


 遊びに行く、と言っても古風で民族料理を主体とするあの店では食事をして談笑する以外の娯楽は無く。

 また、蓮音を探す手掛かりを掴めそうに無いのもあって、エツコへの用事以外で行こうとも思わなかった。


 そんな結華は、ここ最近と違い朝の外出をせず家に留まっている。

 無自覚の内に出てきた指人形の数々が、外へ出ようとした結華の服を引っ張って、彼女を引き止めた為に。



「今日は大人しくしていた方が良い?」



 尋ねたが、指人形は答える為の声を持たない。

 故に、主である結華へメッセージを伝えようと、彼女の描いた絵の付近で飛び跳ねる仲間を目立たせた。

 その絵を置く机に近付いた結華が見たのは、『オヒメサマ』である3人の少女の似顔絵。……彼女の技量の問題で似ても似つかないが。



「『しんまぞく』が何かかんけいあるの?」



 指人形の数々は小さく飛び跳ねる。結華の言葉に肯定を示すように。

 兎にも角にも、今は家で待つ事が賢明と判断した少女は、ソファで寛ぎながらテレビ番組を見ていた。


 待つ間にも情報収集は必要だろうと、切り替えたチャンネルで放送されているのは、ニュース番組。

 バラエティ色がやや強く、タレントやアイドルがトレンドの店に向かい、店内で大袈裟な程のリアクションを見せたり、店員と番組を盛り上げられる会話を繰り広げたりしている。

 見栄え良く映る料理の数々は美味しそうに思えたが、タレント達のコメントは料理へのもの以外は適当に聞き流す。


 そうしている内に、インターホンが鳴る。

 結華が出ようとするより先に、原木を連ねたような人形が玄関へ出る。

 エツコの使役するウッドゴーレムと呼ばれる魔法人形であり、普段は屍守家の留守や『魔女の料亭』の手伝いをしている。

 その内の1体が出てから少しすると。戻ってきたウッドゴーレムが、ダイニングの結華へと手招きしてきた。

 

 結華に用がある来客だと言うのは明白で。念の為テレビの電源を落としてから彼女は玄関に出る。



「はーい…」



 インターホンとセットとなるワイヤレスモニターを覗くと。

 そこには見覚えのあるマゼンタ、シアン、イエローの肌で、おしゃれに着飾った少女達が映り込んでいた。

『深魔族』でもう1つの世界から遊びに来ている3人組、『オヒメサマ』である。



「約束通り、来たわよ」



 その内の1人――真ん中に立っているマゼンタ少女――ロギィがインターホン越しに結華へ話し掛ける。



「今、あけるね」



 応対しつつ玄関の扉を開け、肉眼でも3人の姿を確認する。

 ロギィ、それからシアンのユドゥ、黄色のタルチ。

 彼女達の背後に、スーツ姿の赤髪の青年、ヨウヘイが立っていた。



「ヨウヘイに此処に住んでるって教えてもらってネェ。上がっても良イ?」


「うん」


「あの、お邪魔します……」


「タルチもようこそ。――あっ、おまつりであった人」


「あの時はご迷惑かけましたね。これ、お詫びの品です」



 小さな手へ渡された紙袋はずっしりと重い。「お菓子の詰め合わせですよ」とヨウヘイは付け加えた。

 


「…ごていねいに、どうも?」


「後でエツコさんとジンくんにも伝えてくださいね」


「うん。分けてたべる」



 玄関でのやり取りを終え、紙袋を提げた結華を先頭に5人はダイニングに入った。

 上がって早々、タルチが部屋の様子に目を光らせる。



「わぁ、結構広いんだね!」


「あんまりはしゃがないの、タルチ」



 気になる物がたくさんあるのか、忙しなく見渡すタルチを、ロギィが嗜める。

 その背後でユドゥがニヤついていた。特に他意は無いようだが。

 そんな『オヒメサマ』達の様子を結華が見つめる。

 いつも通りの真面だが、まじまじと見られてはロギィも気になってくる。


 ちらちらと見ていた彼女は、とうとうしびれを切らして結華に尋ねた。



「…何よ?」


「ロギィって、お姉ちゃんみたい」



 突拍子の無い言葉に面を食らう。が、すぐにロギィは立ち直った。



「……こんな口調だけど同い年よ。タルチもユドゥも。この子達と知り合ってからこうなったのだけど」


「ロギィったら世話好きだからネェ。マァ、そこが良いんだケド」


「アンタ達がいっつもだらしないからでしょ! …世話好きは否定しないけど」


「ふーん」



 結華が相槌をしたタイミングで、一通り見て回って来たのかタルチが戻ってくる。



「何の話をしてたの?」


「ロギィがお姉さんみたいだッテ、ユイカがサ」


「確かにそうかも。キビシイところあるけど、ロギィは良いお姉ちゃんだよ♪」


「なッ……! ――タルチったら、こんな時にフザけないでよ…」


「アレアレェ? その割にうれしそうだネェ?」


「シバかれたいのかしらユドゥ?」



 タルチもユドゥもロギィすらも、ころころと表情が変わる。

 家族とはまた違う仲の良さを目の当たりにした結華はと言うと、夜闇を模した目に煌めく輝きを灯していた。

 ビートの概念を初めて知った時のような興味深さのあまり、少女は紫の髪を荒々しく振り回す勢いでロギィへと抱き着いた。



「――きゃ!? …どうしたのよ、いきなり……びっくりするじゃない」


「わたし、まざってもいい?」


「どういう……まあ良いわ。好きになさい…」


「――ロギィお姉ちゃん」


「そこまで好きにしろとは言ってないわよ!!」



 一連のやり取りを聞いていたヨウヘイが思わず噴き出す。

 それに釣られて笑い出すタルチとユドゥ。

 きょろきょろと2人を見る結華に、照れながら少しだけ口角を上げるロギィ。


 ひとしきり笑った後に、ユドゥはふと我に返る。


 

「……イヤァ、ユイカからすれば十分お姉ちゃんジャ…」


「お黙り、ユドゥ」

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