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祭響夢幻のセプテット  作者: Gno00
Session.2 ヴォルテックス・ノーツ

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24/71

第24話 フェルク・レスタム① 昼・『個性的』というもの

『セルクトゥルスのグラタン工房』なる本格的な雰囲気を持つ洋食店に入店したシノ達は、昼時であっても円滑に店の受付へ向かえる事に安堵する。

 来て早々に空いている席へ案内され、備え付けられていたメニューより各々欲する注文をする事が出来た。

 待っている間、ジンはスマホでニュース記事を見漁る。『オヒメサマ』と会話した事で気になる事が増えたからだ。



「お兄ちゃん、何してるの?」


「あァちょっとな。『べモン・ベルス』とか言う怪物の法則性聞かされたろ。『娯楽』も関係あるんじゃないかって思ってな」



 結華側の目撃例と合わせて得られた情報を纏めると。

 『べモン・ベルス』は灰色を軸としたマーブル色の粘体状の姿を素体とする生物で、自身の姿形を模倣先へと大きく変える変身能力を持つ。

 模倣する物を見定める場合は仮初の姿として海洋生物の形を取るが、ある程度調査が進んだ場合にポップカルチャーに関連する物体を模倣する事が既に判明している。

 模倣先によって定まった性質を有するようになり、ある時は突進だけを能とする生物、ある時はクリームや絵の具を噴射する生物、またある時は対象となる人物を甚振る生物へと変化する。

 

 出現する前兆として大気に罅を入れ、それを更に破砕し広げた亀裂が発生する現象が必ず起こる。その亀裂により生じる穴から粘体を出し続けるが、穴は攻撃を受ける事によって塞がり、完全に塞がると粘体の供給も絶たれる。

 出没場所としては海から発生し海岸線へ上陸してくる場合が殆どだが、稀に海から川を経由して上陸する場合もある。ジンが遭遇した巨大人型の個体がそうである可能性が高い。

 今現在は対策案となる自動迎撃用術式の配備によって無人あるいは少数精鋭による海岸線からの上陸阻止が行われているとの事。まだ配備したばかり故に成果報告は上がっていない。


 また、亀裂の発生箇所は大気であれば何処でも良いらしく、海路を辿らず直接陸路から攻め込んでくる場合もある。結華が遭遇した個体いずれもがそうだった。

 海岸線からの侵攻勢力、結華が過去数回対処した奇襲勢力共に増加の一途を辿っており、早急かつ根本的な問題解決が求められている。


 ジンは過去数回の遭遇例から、「人集りは避けつつも完全に無人では無い場所を狙って出現している可能性もあるのでは無いか?」と考えたが、海岸線の場合を知らない為に答えを決めかねる。

 この疑問への参考情報として、レクリエーション施設での遭遇報告が上がっていないか、ネットニュースを調べていた。

『フェルク・レスタム』関連のニュースが数多く表示されるホーム画面から検索のカスタマイズ設定を行い、5月23日以前のニュースを調べる。

 

 そして、彼が望ましく思うニュースがヒットした。ミュジ市中央部に存在するあるテーマパーク絡みの記事が。


 『魔導警備隊4番隊の大手柄! 平和を守るヒーローに裏表無し』という見出しのそれを閲覧すると、テーマパークを襲撃した『べモン・ベルス』を現場に居た非番の魔導警備隊員が対処した旨が事細かに記載されていた。

 『べモン・ベルス』の体格が如何ほどは簡潔に、対処した隊員の性別と年齢が表記され、インタビューに応じた彼のコメントも乗っている。


 興味深いと思いながら閲覧していた記事を、向かいの席に座っていたシノもいつの間にか身を乗り出して覗き見ていた。

 彼女の胸が近い事に、視線を移したジンが顔を赤くするも、彼女の衝撃的な一言で彼は冷静に戻った。



「そう言えばこの記事。怪物騒ぎを対処したっていう人は身に覚えが無いとも言ってたような」


「…何?」



 インタビューに応じたと記事にはあるが、記事の内容と本人の発言が矛盾している。

 尋ねるより先に、シノは補足を加える。



「現場に居たのは事実みたいだけど、怪物は既に対処された後だったんだって。それと、肌の赤い女の子を見たとも言ってた。後で見間違いだった、と訂正したみたいだけど」


「……まさかな?」



 『オヒメサマ』達の口癖のようになっていた、目立つな、という言葉。

 そして、隊員の引っ掛かりを覚える発言。恐らく偶然の類では無いだろう。


 だが、少年は敢えて深堀りをせず心の内に留めておく事にした。時間がいずれ答えを示し合わせてくれる、そんな気がしたから。



 そうこうしている内に、座り直した3人へ注文通りのグラタン料理が運ばれてくる。

 結華には子どもサイズのシーフードグラタン、シノにはジャガイモの入ったミートグラタン、ジンにはチキングラタンが配られた。


 3人ともそれぞれが料理に手を付けている間にも、昼の部は7組目のアーティストの番に移っていた。

 店内に備わる竈のようなカバーが備えられたテレビを見ると、可愛らしいドレスと犬の肉球を模した大きな手足に、各々特徴の異なる犬耳カチューシャを装着した20人と、同じように猫の特徴を備えたドレス姿の20人が舞台上へ姿を現す。


 個性的を通り越して異様な姿を一度目にしたジンは、思わず凍りついた。

 固まった彼の様子を見て、シノも視線の先を見る。ジンと違い、軽く流しながらアーティストの概要を語る。



「ああ、『ポップラブリー☆アニマルン』。日本発祥のアイドルグループなんだって。犬の『わんわん組』と猫の『にゃにゃ組』に分かれて、アクロバットを混じえたストーリー性のあるパフォーマンスをするんだとか」


「ぷわぷわ。かわいい」


「ユイカちゃんってああいうの好きなの?」


「手足と耳のしつかん。すごくいい」


「確かに、良く手入れされてるね。ああいう品種も居るんだっけ?」



 『マクアケロックンロール!!』なる曲が始まった瞬間、可愛らしくも野性味を感じる豪快なパフォーマンスが繰り広げられる。

 猫と犬の喧嘩とすら思える壮絶な競争はプロ仕込みの身のこなしと、有線楽器を扱いこなすプロ顔負けの技巧によって成り立っている。


 ライトの反射で一層輝いて見える髪もただ乱暴に扱うので無く、一挙手一投足を計算に入れた、高度な演技が見受けられる。パフォーマンスの最中雄々しい歓声が聞こえてきたのは言うまでも無い。



「まだ始まったばかりなのに、飛ばすね~」


「まほうを上手くつかってるみたい。きそくてきで、きれいな流れが見える」


「そうなの? そう言われると気になっちゃうなぁ」


「見る目を、おすそ分け出来ればいいんだけど」

 


 結華の見ている光景を裏付けるように、激しい運動でありながらメンバーの発汗量は控えめで、時折ウィンクや他メンバーを紹介するような手振りで、1人1人の魅力を欠かさずアピールするファンサービスを合間に差し込んでさえ見せる。


 まだまだ序の口に過ぎないと言うように、彼女達の演技には余裕の色さえあった。

 そのまま曲の佳境へ突入し、演技は更に盛り上がっていく。

 結華の見ている光景は、ジンの目にも映り込んでいる。魔力の流れは綺麗な軌道を描きながら、メンバーの容姿や状況の確認を妨げない。


 他の魔法使いがこれを見ているなら、どう思うのか。判断をしかねるジンは、冷や汗を垂らしながら一言だけ呟いた。



「ギャップが大き過ぎるだろ……」



 最終的に一同が一糸乱れずの動きで最初の曲を締め括る。

 続けざまの2曲目もまた可憐な衣装から連想されるイメージと程遠いパフォーマンスが繰り広げられ。結局、店を出るまでジンは頭痛に悩まされる事となった。

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