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祭響夢幻のセプテット  作者: Gno00
Session.2 ヴォルテックス・ノーツ

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第23話 フェルク・レスタム① 昼・穏やかで、賑やかな『ひととき』

「では、皆さんこれをどうぞ」



 軽く騒ぎになったのが落ち着いた頃合いで。赤髪の青年が合流した一同に缶ジュースを配る。

 近くにある自動販売機から購入したものである事を、手に持った時のよく冷えた感触が証明した。


 木陰の下、結華とシノがフルーツジュース、丁度揃った事で3原色となった少女達がそれぞれ振って中身を崩すタイプのゼリー炭酸を飲む中、ジンは微糖コーヒーに口を付けた。

 甘さの少ない渋味と苦味を味わいつつ喉へ流し込み、それから気になっている事を口に出す。



「そういえば。さっきから目立つな目立つなと言ってるが……」


「ああ、それ。ワタシ達別の世界から来たもの」


「えっ?」


「何?」



 シノとジンがマゼンタ少女――ロギィの発言に動揺する中、結華だけは平然と振る舞う。

 その一方で。青い少女ユドゥはくすくすと笑みを零し、タルチと赤髪の男たるヨウヘイはしれっと切り出して良い話なのか、とこちらも動揺していた。



「だって、もうジン達に隠す必要無くない? タルチ助けてもらって『じゃ、忘れて』はあんまりじゃない?」


「それは…えっと、市長室(こちら)の事情もありますし……」


「そんな事アンタ達がどうにかしなさい。ワタシ達に押し付けるんじゃないわ」


「そんな……」



 一蹴され項垂れるヨウヘイを無視してロギィは話を続ける。



「別の世界…『魔深界』って知ってるかしら?」


「いや…」


「それっぽいワードすら聞いた事無いけど……」


「ふぅん、そんなものなのね。ワタシ達は此処が別世界の『地上界』だと知ってるのだけど」



 理解の差、というものがこの短いやり取りだけでも(つまび)らかになる。

 知らなければ恥になる程では無いものの、さも当たり前かのように言ってのけるロギィの姿を見て、無知を恥じざるを得なかった。

 「『オヒメサマ』という呼称もあながち間違いでは無いのか?」とジンは思う。


 

「で、異なる世界からどうやって来たんだ?」


「『魔深界(向こう)』と『地上界(こっち)』を『ゲート』で繋いできた。そこのタルチの魔法でね」



 「マジか」というジンの驚きを込めた相槌へ、「うん…」とタルチはすぐさま答えた。

 世界間を跨いで来た、手段の方の理由は分かったがそこで新たな疑問が過ぎる。



「じゃあ、何ですぐに『ゲート』を使わなかったんだ?」



 間を置かないジンの問いへ「それは…」と言い淀むタルチ。

 すぐに答えられない様子を見て、隣に座るロギィが代わりに答える。



「『ゲート』の運用には『開通先への接続をするイメージ』を固めるだけの集中力が要るのよ。少しの距離でもそれなりの正確性を持てるだけは要るし、世界間を跨いでの移動なら尚の事。慌ててる状態で無理に『ゲート』を展開なんかしたらどうなるかしら?」


「それは……大変な事になるのか」


「分かるならよろしい」



 全く異なる異空間に繋がるだけならまだ不幸中の幸いだが、もしそこに吸い込もうとする力が働いていたなら? ……最悪を想像したジンはこれ以上の言及を止める。

 一番最初に世界間を繋ぐ『ゲート』を開通したのは何時の事なのか? 何故、成功したのか? と疑問は更に過ぎるが、それはまたの機会に持ち越す事をも決め、ジンは別の話題を振る。

 


「話は変わるが。さっき怪物がどうとか聞いたぞ」


「最近向こうでも出てきてるのよね。こっちでちょくちょく出没してるような奴が」


「我々市長室は『べモン・ベルス』と呼称する怪生物ですね。文化の産物を模した姿をしているのですが……ん? 皆さん?」



 ヨウヘイの発言の内に、心当たりがある顔をするジン、シノ、結華の3人。記憶が鮮明で、尚その特徴と合致しているからだ。



「すでになんどか会ったことある」


「あの巨大人型もそうだったかもな……」


「いかにも、ゲーム機から飛び出したような姿してたもんね…」


「遭遇していたのですか!? 良くご無事で!」


 

 「無事じゃなかったけどな」と言いかけたのをジンは飲み込む。市役所職員を無駄に心配させる事は伏せておいた方が良いという判断から。

 一方の結華も戦った結果どうなったかを黙っていた。この上でヨウヘイへとジンは返答する。



「しかし、厄介事が最近増えてきてる…ますね。ミュジ市以外もそうなってるんですか?」


「ええと、まあ、はい。『べモン・ベルス』は基本海から来ますので……」


「海から、か」



 会話の中でジンは結華と会って間もない内に起きた出来事を思い出す。当時、遭遇した『べモン・ベルス』と思しき怪生物は鮟鱇のような見た目でぬめりを感じる程に表面が濡れていた。

 実際に殴りつけた時の感触を今でも思い出す。骨の能力を得る初めの切っ掛けとなった出来事故に。

 握り拳を作るジンを見て、結華も反応を示した。



「海の生き物みたいなのもいた気がする。文明じゃなくてもいいの?」



 ヨウヘイへの問いだったが、ロギィが代わりに答える。


 

「生物の姿をするタイプね。勿論居るわ」



 間髪入れず、ユドゥも続いた。

 


「取るべき形が分からない時ニィ、生物の見た目になるらしいネェ。『魔深界(向こう)』の学者さんが言ってたヨォ」


「言うなれば斥候役、か。後から送り込む奴らが取るべき形を調べる為の。役割分担なんて軍隊みてェだな」



 文化の種類によって姿形を分け、その姿に沿った物を破壊しようとする目的がある以上、辿り着く可能性だった。

 侵略行為だけを命ぜられ、それに隷属する軍隊。実態が分かったところでロギィの顔が険しくなる。



「奴ら、空間に開いた穴がある限り何度でも送り込まれて来るわ。それで『魔深界(向こう)』のお店の幾つかが滅茶苦茶にされたの」


「『地上界(こっち)』のお店もめちゃくちゃにされそうだった。早めに気づけたのはうんがよかった、と思う」


「当事者の口ぶりね。…現場に居たの?」


「うん。わたし、まほうしょうじょだから」


「「「???」」」



 自然な流れでのカミングアウトの内容に、今度は『オヒメサマ』の3人が一斉に困惑を浮かべる。

 聞き覚えの無いフレーズ故に、ジンもシノも反応に困り、固まった。

 その中で、結華はマイク型の杖を取り出す。


 

「これ使って、へんしんするの」


「……へぇ、そう…」


「じつえん、すればいい?」


「しなくていいわよ、別に…」



 ロギィの呆れ気味の返答に、結華は少々残念がるも、「再び目立つような行為をするのもどうなのか」と思い杖を手放し消した。

 ジュースを飲み干したらしく、空になった缶を軽く振り、ロギィは立ち上がる。



「まぁ、アンタ達も怪物…『べモン・ベルス』だったわね。そいつらに対抗出来るのは分かったわ。でも、対抗出来るからってユダンしないでちょうだい」


「言われなくても、分かってるさ」


「殊勝ね。…奴らは慢心や恐怖に強い反応を示すから、それだけは覚えておきなさい。じゃあね。行きましょユドゥ、タルチ」


「マァ、解散するには良い頃合いカァ。ジンに、シノに、ユイカだっけ。縁があったらまた会おうネェ」


「あ、あの。ありがとうございました…それでは」


「僕からもありがとう。じゃあ、お祭り楽しんでね」

 


 ロギィを先頭に、『オヒメサマ』達は自販機エリアを後にする。缶を回収し専用ゴミ箱へ投棄したヨウヘイは軽く手を振った後、彼女達へと同行した。

 街路樹の木陰で涼みつつ、4人を見送ったところで。休憩スポットに座っていたジンもまた立ち上がる。



「さて、オレ達も飯食いに行くか」


「そうだね、丁度良い頃合いだし。…ああ、でもこの近くは行列が出来てるかも」


「あまりならばなくていいとこ、ある?」


「チェーン店辺りは全部並んでるだろうしな。…何処が良いか」



 ジンと結華が悩む素振りを見せる一方で、シノは不敵に笑う。妙案があるらしい彼女へと、ジンは発言を促した。



「実はねー。穴場スポットを知ってるんだぁ」


「そう? あんないしてくれるの?」


「お姉さんに任せなさーい。2人共、しっかり付いて来てよ!」



 駆け出すシノの指示に従い、ジンと結華は彼女に続く。そんな中でミュジ市に暖める熱気は、まだ強まりつつあった。

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