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祭響夢幻のセプテット  作者: Gno00
Session.2 ヴォルテックス・ノーツ

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第20話 フェルク・レスタム① 昼前・小さな『来訪者達』

「ねぇ、せっかく似顔絵があるんだし活用してみない?」


「前に30まいくらいくばったことある。…だれもしらなかったみたいだけど」


「ビラ配りも悪くないけど、手広くやってみようよ。警察や探偵さんに協力してもらうとか」


「けいさつ? たんてい?」


「味方になってくれる人達の事だよ。試しに聞いてみればアドバイス貰えたりするかもよ?」


「考えてみる」



 結華とシノが歩きながら蓮音探しの方針を相談している一方で。ジンは200m先に交通整理をしている警備員の姿を見る。

 時間経過と共に繁華街の活気も更に増してきており、飲食店の建ち並ぶエリアとグッズなどの雑貨類を販売している店のエリアが大賑わいを見せていた。

 電子掲示板の数々が映す映像のボリュームに負けない程の喧騒に、彼も灰色の双眸を見開く。

 


「歴代最大規模も伊達じゃねェな。まだ1日目の昼の部だってのに」


「お昼近いから、ってのもあるんじゃないかな~。この人だかりの向こうに行くのは無理そうだし、引き返そっか。ユイカちゃんがはぐれちゃったら大変だからね」


「そうだな」



 3人は踵を返して比較的人の少ない道に戻る。少し歩いたところでシノはジンの側へ寄った。



「ん? どうした?」


「ジンくん、昨日の事だけど…」



 その一言を聞いて、ジンは立ち止まって話に集中する事にする。

 子ども達の顛末を知らずに日を跨いだ為、気になっていた事ではあった。



「君が助けたあの子達は無事家に帰れたよ。君があの時、身を挺して守ってくれたから」


「そうか。そいつァ良かった」



 ジンが胸を撫で下ろした束の間、シノはじっと今の彼の姿を見つめる。

 前々から好んで着用している私服姿だが、その上で骸骨の歯をモチーフとした模様のある灰色のバンダナを首に巻いている。

 以前は付けていなかったそれを見て、心境の変化があった事をシノは予測する。


 きっかけがあるとすれば、当然昨日の出来事だろう。そう思いながら。



「ねぇ、ジンくん。魔法の発現に成功したんだって?」


「あァ。骨を作り出す力だ。実態は魔力の塊だがな」



 病院へ体の調子の確認に行く前に、ジンは目覚めた力を家で少しだけ検証していた。

 構成物が大きく異なる為、実際に骨を作り出している訳では無いが、形状は人骨に沿った物となる。


 巨大人型と戦った時に作り出した上腕骨以外の部位も生成可能であり、いずれもかなりの強度を誇っていた。

 生成した骨は手に持つ、蹴り飛ばす、投擲するといった使用方法が可能であり、明確な武器を持たないジンにとっては、丁度良いタイミングで武器を作り出す有用な能力であった。


 また、検査の結果、この能力は段階的に出来る事が増えてくる事も判明している。正しく、渡りに船と言える能力であった。



「色々と便利そうな代物だ。でも、何で骨の形なのかは分かんねェが」


「その能力に目覚めた後、心境に変化は?」


「――大して変わってねェと思うがな。便利なモンに目覚めたなくらいにしか思ってねェよ。……ただ」


「ただ?」



 短く尋ねるシノの一方で、ジンの瞼の裏には両親の葬儀をした当時が過ぎる。

 最も力を渇望した時期。過ぎ去りし歯痒さは忘れてはならない。



「もっと早い内からこの力を得ていれば。……こう思わずにはいられねェのさ」


「ジンくん……」



 事情を知っているシノも、ジンがどの状況を踏まえた上で発言しているかを把握した。

 しかし、そんな事を考えたところで過去の自分への慰めにもならない。

 それでも、容易く割り切れはしない複雑な心境を抱える少年はこれを示す顔を浮かべていた。



「これからも、心配かけさせるかも知れねェが。オレはそんなあっさり変わるつもりもねェ。そこは安心してくれ」



 心配そうな様子だったシノを安心させるべく、微笑みながら言葉を紡いだ後、ジンはふと視線を落として結華の方を見る。

 表情こそ変わらないものの、少しだけ悲しげな様子の彼女が立っていた。


 彼女もまた、魔力を備えても使い道が無い、非力だったが故に。



「お姉ちゃん…」



 かれこれ早2週間。過ごす場所を変えさせられ、共に居ない期間が膨らめば身を案じる気持ちが強まるというもの。

 痛みを理解出来る故に、ジンはかける言葉に戸惑った。


 シノもまた答えあぐねて、居心地の悪い雰囲気が漂う中。これを打ち破ったのもまた結華だった。



「……でも、信じてさえいれば。見つけられるはず」


「そうだな。その意気だぜユイカ。必ず見つけ出そう」


「うん……」



 立ち直った結華を褒めるように、現在の生中継映像に映る曲は明るい雰囲気の曲調をしていた。




 

 ◇◆◇





 10時半に市長室の利用する事務室を出たヨウヘイという名の最年少職員は、スマートフォンのマップアプリに表示された黄色のピンの位置へ急いで向かうべく市役所のとある扉の前に立った。

 念の為に腕時計を再度確認し、10時35分30秒が現在時刻である事を知る。



「……よしっ」



 小さく呟き、他の職員が居ないのを見た上で。褐色の秘書より預かっているアンティークの鍵を目の前の扉の鍵穴へ差し込む。

 解錠音が聞こえると同時に、鍵を抜き取り扉を開けた。すると、扉の先は市役所内では無く屋外へと繋がっていた。


 屋外の方から扉を閉めると、その扉は消失する。そして、マップアプリの現在座標は黄色のピンと重なる位置を指し示していた。

 まだ、通知が来ないので『ゲート』は出現していない。その間に服装の乱れを直していると、整った頃合いに小さな輪が何も無い場所より出現した。

 その小さな輪がある程度広がったところで展開は止まる。輪の内側には謎の空間が発生しており、そこから輪を掴む左手が出てきた。


 最初に出てきた左手は鮮やかなまでの赤紫色で、鱗らしき模様が表面に存在する。やがて、手の持ち主が謎の空間を通り抜けようとする。



「ん…着いたようね」


 

 液体のように表面が弾ける空間より出てきたのは、より濃い赤紫の、肩よりやや下まで伸ばした髪と吊り目。左右を見て異常が無いのを確認し、片方ずつ出した足で『ゲート』の先へ降り立つ。

 鰭の付いた耳と足を持つ彼女はノースリーブ且つフリルの付いた服に膝丈までのスカートとおしゃれ且つ動きやすさを意識した服装をしていた。


 続いて、出てきたのは大量の海藻……もとい、特徴的な青緑の長い髪。気だるげそうな緑の目が『ゲート』の外を確認すると、髪が触手のように伸びて床に触れた。

 その髪が本体を引っ張り、『ゲート』から完全に姿を現す。薄い青緑の肌の少女でワンピース姿をしていた。海藻に似た触手の髪が自らを束ね纏める最中、片目だけを露わにする彼女は大欠伸をする。



「ふワァ……ねム……」

 


 最後に出てきたのは、黄色く輝く宝石のようなものが散らばる岩石のような大きな両腕。『ゲート』の枠をそれぞれが掴むと更に広げた。

 宝石のような黄色い耳が見え隠れする、白の点在する黄色い髪と黄色の肌の少女が姿を現した。

 先に出た2人の姿を見て、急いで『ゲート』の中から出る。出たところで枠を縮めて『ゲート』を消失させた。彼女こそ、『ゲート』を扱える能力の持ち主である。

 

 肩からストラップの見えるボートネックのトップスに、ショートパンツの服装だが、鉱石のように変質した四肢もまたファッションのように見えた。



「みんな、おまたせ……」



 黄色い少女のおどおどとした声が他の2人へそう告げると、マゼンタの少女が黄色い少女の姿勢が前のめりになっている事に目を付け。



「タルチ! また姿勢がだらしなくなってるわよ!」


「んひぇ! ごめん…」



 背中を強く叩かれた、タルチと呼ばれた黄色い少女が姿勢を正しながら素っ頓狂な声を出す。

 一方の、マゼンタの少女は不満気な声を漏らした。



「もう…。いつも言ってるけど、ムトンチャクが過ぎるのよあんた! ユドゥを少しは見習いなさい! 来てから髪まとめたし、大欠伸もしたけど!」


「あはハ、ロギィ的には及第点なんダ?」


「あんただから大目に見てるのよ!」


「うぅ、いつもごめんねロギィ……」


「ユダンしてはダメよタルチ。分かったなら気をつけなさい」



 会話を切り上げたところで、ロギィと呼ばれたマゼンタの少女を始め、一同の視線がヨウヘイの元へ向き直る。

 彼女達こそ市長室の言う『オヒメサマ』の正体であり、異界からの来訪者達であった。

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