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もう一度、秋が来たなら。

作者: 秋桜星華

最初に言っておきます。ジャンル詐欺の可能性があります。


本作はしいなここみさまの「いろはに企画」に参加しております。

キーワード:枯葉

 その屋敷の庭には、いつでも降り積もっている。


 カサ……カサ……


 踏みつけられる音が鳴り響く。


 赤いものも、茶色いものも。


 躊躇することなく踏まれていく。


 空にはカンカン照りの太陽。


 通りを歩いていく人々の目に、枯葉たちは映っていなかった。


 落ち葉の上には、誰もいなかった。


 ――音だけが、世界をかたちどる。




 ある冬のことだ。ある屋敷の庭に、多くの枯葉が積もっていた。


 秋に役割を終え、永遠の休息に入った葉たち。


 人間たちはひきこもり、踏まれることはない。


 枯葉は安心し、安らぎを得た。



 雪が降り、風が吹いた。


 濡らされ、飛ばされても枯葉たちは何も嘆かなかった。


 彼らの運命は途切れているのだ。



 やがて雪は融け、柔らかい風が吹き出した。


 それでも、枯葉たちは積もっていた。


 その場を離れることも、その土地のものになることも拒んだ枯葉たちは、その庭にいつまでも居座っていた。


 ひと時の風で舞った枯葉は、空中で形を作った。


 まるで手のようだ。助けを求めるような――


 触れてはいけないような。



 雨も降った。


 何日雨が続こうと、いなくなるものはなかった。



 日差しは強くなり、人々は涼しい部屋を我が物顔で使うようになった。


 それでも、枯葉は庭に積もっていた。


 日差しに焦がされることなく。暑さに屈することなく。


 ただそこに、在った。




 やがて、”本来の枯葉の季節”となる。


 その庭に、枯葉はなかった。


 季節が、狂ったのだろうか。


 忘れ去られてしまったのだろうか。


 ――真相はだれにも、わからない。



 この街に、この国に、この星に。


 その後”秋”が来ることはなかった。


 それを、認識できる人間も、もう存在していなかった。


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― 新着の感想 ―
 これは素晴らしい未来予測型ホラーですね。詩的な表現ながら、これからの地球が思いやられて薄っすらと首筋辺りが寒くなりました。「秋」の亡霊たちは、このまま誰からも思い出されることもなく、そこにあり続ける…
お馬鹿なので、解釈を放棄して、ただ感じるままに! うちの前は桜の木からの枯葉でいつも大変なのでこれは助かります!いい感じです! で、自分がいないのはちょいと困ります。並行世界や死後の世界でいいので、ど…
雪降る冬に束の間の春、長雨の降り続く梅雨に長い長い夏。 考えてみますと、今の日本の四季において秋の占める割合は極めて少なくなってしまいましたね。 それがそのまま行きつく先まで来てしまった結果が、本作の…
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