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4.美人は筋肉男子と語り合う

アンセルの馬はイメルという名前で、手入れがきちんとされた艶のある黒の毛並みが美しい牡馬だ。主人に似て馬まで体格がいい。修道院まで数日かかるということで、イメルの負担にならないように2人乗りである程度距離を稼いだあとは、エリーゼを馬上に乗せたままアンセルが降りてイメルを誘導しながら横を歩き、ゆっくりと進んだ。その間に2人はお互いの色んな話をした。


「そっか、それは大変だったね。でもエリーゼさんは何も悪くないよな。」

「私が周囲に迷惑をかけたのは事実よ。父の期待に応えたい、だから誰かと結婚しなきゃって。でも結局男の人が苦手で気持ち悪くて断り続けて…」

「うん…でも義妹さんの婚約者とか、その…男性に襲われそうになった件とかはさ、もう全く君のせいじゃないからさ。」

「ありがとう…優しいのね、アンセルさん。」

「アンセルでいいよ。」

「じゃあ私のこともエリーゼで。」

「わかった。じゃあ、エリーゼ。」


そう呼ばれてエリーゼは擽ったい気持ちになった。

ーー男の人とこんなに砕けて話したり、名前を呼ばれても嫌じゃないなんて。アンセルといるとホッとするし、心地いい。


アンセルの方も、エリーゼとの会話を楽しんでいた。彼もまた女性嫌いであったが、穏やかに会話ができる相手に出会うなど思ってもみなかった。しかもエリーゼはとても美しい。ピンクブロンドの長い髪に深い緑の瞳、陶器のような肌、血色のいい唇。これは男がほっとかない、さぞ苦労しただろうと想像できる。


「家格が上だったり、王族に目を付けられなくて良かったね。」

エリーゼは確かに、と頷きながら答えた。

「でも公爵家や王族には私と合う年齢の独身が居なかったのよ。それが幸いしたわ。」


しばらくして小さな森の中に入ると、綺麗な泉を見つけたのでイメルを休ませるため2人も休憩をとることにした。泉のほとりに腰を下ろすと、アンセルが自分自身のことを話し始めた。

「俺さ、隣国のモラード出身で、公爵家の次男なんだ。」

驚きの情報が飛び出てエリーゼは目をいっぱいに見開いてアンセルを見た。

「3人兄弟で兄は神官になって家を出て、俺が家を継ぐって話になったんだけど、弟の方が相応しいだろうと思って俺は冒険者になったんだ。」

「そっ…そうなん…ですね」


今更すぎるが、突然の公爵家次男坊のカミングアウトで思わず丁寧語になる。

「ははっ普通でいいよ。俺は今冒険者だから!」

そう言われてホッと肩の力を抜いていつも通りの口調に戻す。

「弟さんは納得してたの?」

「うーん、反対はされたよ。兄様が継いでくれ、僕はそれを支えたいって。でもそうすると結婚が付き纏うわけで…」

エリーゼはすぐに理解した。きっと国中の貴族の娘が彼に殺到したことだろう、と。

「兄が家を出て最初は俺も頑張ろうとした。でも中には過激な人もいて、媚薬を盛られたり、パーティの最中に空き部屋に令嬢と2人閉じ込められたり…」

ーーうわぁ…

エリーゼは思わず同情した。だがこんなに素敵な公爵家男子がいたら、適齢期の令嬢が必死になるのは当然だとも思った。


「それで俺も女性が苦手になってね。ちなみに俺はその頃もっと細かったんだよ。だから家を出てから無我夢中で鍛えて冒険者として仕事に打ち込んだよ。こっちのカネリス国に来たのは3年前かな。」

「苦労したのね。」

まさかの細かった情報にエリーゼは頭の中で細身のアンセルを想像してみたが、目の前の彼があまりにも逞しいので上手く想像できなかった。



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