13.美人は筋肉男子と両想いになる
エリーゼとアンセルは再び精霊の泉を訪れた。
前回とは違って美しい緑が生い茂り、木々に囲まれ日が差し込んで湖の水面をキラキラと照らしている。
「綺麗…」
思わずそう呟いた言葉をアンセルが拾う。
「全部エリーゼのおかげだよ。」
そう言われて隣のアンセルを見上げると彼もエリーゼを見つめていた。
エリーゼの鼓動が早くなる。
ーーどうしてかしら、アンセルといると落ち着くのにドキドキもする。でもそばに居て嫌だと感じたことがない。むしろ…
「そういえば王家への報告なんだけど」
ハッとしてアンセルの話に耳を傾ける。
「本来なら精霊使いが国に戻り、泉と精霊王を浄化した功績も大きいし、直接王や王妃に会う必要があるんだ。しかし今回の発端がそもそも王族が精霊使いに接触したことが発端だから…。同じ事を繰り返さない為に王族は今後精霊使いに干渉しない事になったんだ。」
つまり、また王様が精霊使いであるエリーゼを見初めたらなんかしたら大変だ、という事だ。
「分かったわ。それなら私も安心して暮らせるわ。」
その時、泉の水面が揺れ、精霊王が姿を現した。
『精霊使いよ、恐れずとも魅了の力は永遠では無い。』
精霊王の出現よりも、魅了の言葉にエリーゼは驚いた。
「精霊王様!っというか魅了ですって?」
『精霊使いと我との縁はもう長い。その中で精霊使いは当初短命の人種でな、確実に子孫を残し精霊使いを絶やさないために、命をのばし、子をなすまで周囲の男を惹きつける魅了の力を授けたのだ。』
なんてことだ、今まで苦労した男関係は全部精霊王の仕業だった。だが精霊王にとっても精霊使いは外界と繋がる大切なもの。仕方ないと言えばそうなのかもしれない。
「じゃあ結婚して子供を産めば、私はもう男の人を気にせずに普通に暮らせるのね。」
「でもエリーゼは綺麗だから…一応気をつけた方が良いんじゃないか」
そんなアンセルをじっと見つめて考えるエリーゼ。
「でもおかしいわ、魅了の効果が出なかった人も多いもの。アンセルもそうだし。」
『心に大切な人が居る者には効かない。そもそも恋愛に興味ない者もな。我も節操なしな力を授けはしないぞ』
ーーなるほど。今まで魅了が効かなかった人たちには想い人がちゃんと居たのね。…あら?じゃあザビーネの婚約者は…。ううん、もう私には関係ないわね。
妹の婚約者が妹を大事に想っていない事が判明してしまったが、もう隣国にいて家を出ているエリーゼには何も出来なかった。
『見たところお主の魅了ももうじき終わりそうだな』
「「えっ?」」
思わぬ発言にアンセルと被って声が出てしまった。
精霊王は言いたいことだけ言ってまた泉に消えて行ってしまった。
後に残された2人はなんだか気まずい雰囲気になった。
「あー、その。精霊王に色々報告とか謝罪とかするつもりだったのにな。何か思ったより気さくな感じだったね。」
「えっええ。ほんとに。でも精霊王だもの。きっと全て分かっているのよ。」
「じゃあ、帰ろうか。」
「はい。」
だが数歩行ったところでアンセルガ立ち止まる。
少し後ろを歩いていたエリーゼも一緒に止まる。
ーーどうしたのかしら?
するとアンセルは顔を少しだけ後ろに振り向いて言った。
「俺はこれからモラードで暮らす。エリーゼも居るし。公爵家は継がないが、今回の事で爵位が貰える話も出ている。」
「凄いじゃない!おめでとう!」
「…俺は何もしていない。だから断ろうと思ってたんだが…」
勿体無い、なんて思っていると何故かアンセルの首も耳も真っ赤に染まっている。
「エリーゼと一緒になら…爵位を賜ってもいいと思ってる。」
「一緒に…」
「本来ならエリーゼの功績だから。でもそれとは別に、俺自身が君と一緒になりたいという気持ちがある。」
それを聞いてボンと自分の顔が火照っていくのを感じる。なんて不器用な告白だろうと思って相手を見ると、相手も顔がだいぶ熱そうだ。
なんだかそんな自分達が可笑しく思えてエリーゼはふふっと吹き出してしまった。
「エリーゼ…」
「違うの、ごめんなさい何だか可愛くて。」
笑いが落ち着くとエリーゼはアンセルをしっかり見つめて返した。
「私もアンセルと一緒にいたい。貴方がそばに居ないと、私ダメみたい。」
そう言うとアンセルは身体ごとエリーゼに向き直りガシッと、しかし優しく抱き締めた。
温かい。
穏やかに好きな人の体温を感じることができる喜びに、エリーゼは静かに目を瞑ってそれを堪能した。
泉に差し込んでいた木漏れ日が、いつの間にか2人を照らすように注ぎ、周囲は祝福の光で満たされていた。
ーー終ーー
これにて完結です!
番外編を書くかもしれませんが、本編は終了です。
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