12.美人は真相を知る
精霊使いとして覚醒したことで身体へ負荷がかかったエリーゼは、精霊の泉での出来事から丸2日間眠り込んだ。
アンセルはその間にモラード現国王に呼び出され、ウィリアムと共に泉での事やクロエが前王妃から頼まれた薬の件など、調査や報告などで忙しくしていた。
そんな中でも、エリーゼが目を覚ましたと報告を受ければアンセルは急いで屋敷に戻り駆けつけた。
「エリーゼ!良かった…」
「アンセル…私倒れたみたいで…迷惑かけてごめんなさい」
「何言ってるんだ。全て君のおかげだよ。説明するからまず水を…」
そう言って侍女が用意してくれた水を少しだけ飲んだエリーゼは、丸2日寝込んでカラカラになった喉が優しく潤うのを感じた。
どうやら自分が寝ている間に、あらかたの事情が判明したようだ。
アンセルの話によると、全ては先代王妃の嫉妬心から来るものだった。
先代の王様は大変な女好きで、政務はしっかりしていたが女性関係はだらしなかった。それでも先代王妃は彼を愛していた。彼女はもともと魔法の研究に長けていて、魔力のない王様を支えるために尽力していた。
しかしある時、コンラードへ視察に出掛けた先でトゥーリアという美しい精霊使いに恋をしてしまった王様は、異常なまでに執着を見せ王妃を完全に蔑ろにしてしまった。
結局トゥーリアは隣国へ恋人と逃げていき、エリーゼへと繋がっていく。
残された王様は不貞腐れていたが暫くして精霊使いへの未練は無くなったように見えたが、嫉妬の激しい王妃に辟易していた。
王妃は王妃で精霊使いにまだ気持ちがあると勘繰り、自分がそれになれば良いと色々調べ、精霊の泉にも何度も出向いたが精霊王は応えなかった。
やがて王位が息子に引き継がれ隠居生活になっても心が止まったままだった先代王妃は、自分の死期を悟ると孫であるクロエ王女に復讐の代行をさせることとなる。クロエが渡された薬の瓶、それは密かに研究して作成された精霊王を呪う汚れの毒薬だった。
クロエはただ「精霊王が病気になっているから、月に一度この瓶を泉に流しなさい」と言われていただけらしい。
まさか実の祖母から復讐の駒として扱われていたとは想像もしなかったらしく、今も憔悴して部屋で療養しているという。
「クロエ様…大丈夫かしら」
「大丈夫さ。ウィリアムがついてる。」
その言葉に、もしかしてウィリアムはクロエ王女のことを…と勘付きながらも人の恋愛沙汰を想像するのは野暮だと頭を振って思考を払った。
「落ち着いたら精霊の泉にもう一度行こうと思ってるんだ。」
アンセルの提案にエリーゼもすぐに同意した。
「私も、あのままではいけないと思ってた。」
そうしたエリーゼの体調が回復してから、2人は再び泉へと向かうことになった。




