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クリスマス関連作品

北欧カフェとヨウルトルットゥ

作者: 地野千塩

 私、岡辺明日香は元ブラック企業社員。おかげで心身を病んでしまい、実家で子供部屋おばさんをやっていたけれど、最近スキマバイトを始めた。スーパーの品出しやコンビニのレジだけでなく、ちょっと珍しい北欧カフェのバイトもあり、今はそこに働くのが楽しみ。


「店長、もうコンビニではクリスマスケーキのチラシが置いてありましたよ。ハロウィンもあと一週間ぐらいですが」


 そのカフェの厨房にある洗い場でせっせと仕事をしながらも世間話もしていた。北欧カフェだけあり、花柄や鳥模様の可愛い食器や皿ばかり。これは食洗機は使えなそう。慎重かつ丁寧にこれらを洗っていく。


「いや、クリスマスなんてあと少しでしょう」


 店長・天川麦がのんびりと言う。厨房の作業台の上でデコレーションしたばかりのイチゴのケーキを切り分けていた。


 この店長、どうやら北欧の血が入っているらしく、目の色も薄く透明感がある、彫りも深い。年齢はアラサーぐらいだが十分イケメンと表現していいだろう。顔は整っているが、シャツにジーンズ、エプロン姿は親しみやすいお兄さん感もある。それに笑うと目尻に皺ができ、整った顔に隙ができ、優しそう。実際、性格も優しく、スキマバイトの身分の私にも丁寧で優しい。仕事の指示も的確。


「そういえばクリスマスケーキはカフェで作りますか?」

「いわゆるデコレーションケーキは作らないよ。ヨウルトルットゥを作ろうと思う」

「え?」


 その妙な呪文みたいな食べ物って何?


「ケーキじゃないけど、映える料理。パイ生地があればできるから、ケーキよりもコスパがいい」


 そして店長はヨウルトルットゥのレシピをサラサラと書き、メモとして渡してくれた。


「折りたたむ? この作業難しくないですか?」

「やってみれば簡単だから」

「そうですかね」


 半信半疑だったが、材料を揃え、家で作ってみることにした。パイの折りたたむ作業が難しかったが、レシピ通りにすると、なんとか完成。確かにロールケーキやシュークリームよりは簡単かも?


 オーブンから取り出す。大きな風車のようなパイ。確かに写真で映えそうな形。クリスマスの星を表しているというが、日本人には風車に見える気がする。風車だと思うと、ちょっと懐かしい。


 さっそく写真を撮り、SNSにアップすると、普段は誰も見ていないアカウントの割にいいね!が貰えた。


「おー、嬉しいかも」


 別にいいね!が全てじゃないが、手間をかけてお菓子を作り上げると、少しは自己肯定感も回復してくるものだ。


 大きな風車のようなパイを食べながら、今年のクリスマスも楽しみだった。

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