私の悩みを解消してほしいんだけど……?
まさかこんなところでバレるとは…」絶望感が私を飲み込む。まさかあんな姿を人に見られるなんて、悪夢だった。もうゲームなんてしたくない…。地面に顔を埋めたい衝動に駆られる。せっかく買ったコスチュームなのに……。こんな形でゲームをやめるなんて、失笑ものだ。私はそういえば、昔にも友達にある本を読んでいることを見つかった。そして彼女は特に何も言わずにスルーしてくれた。まさか、あの時と同じように、今回も何もなかったかのように過ごせるんじゃないか、そんな期待が頭をよぎる。できっと今回も大丈夫だ、そう自分に言い聞かせる。
時計の針がゆっくりと刻む時間を眺めながら、私はソファに深く腰掛けた。今日は休日、そしてまだ昼。何もしないにはあまり長すぎた。だからといって、急に詰め込む予定もない。さっきの出来事を忘れようと、久しぶりにコラボが始まったボーリングでもしてみようかと思った。しかし気持ちはなかなか切り替えられない。誰か一緒にいれば、気分転換になるかも。昔からの仲の良い遙を誘ってみることにした。遥はいつも暇そうだし、そして2コールで出た。
『遥、今何かしてる?』
『特に?何かしたいん?』
『ちょっと体を動かしたい気分なんだよね。ボーリングにでも行かない?』
『えー、面倒くさい。買い物ならいいけど』運動はできなかったけど、少し気分転換になるかな。」
私と友達の家は非常に近い。おおよそ3分くらいで着く。しかし大人になってから、人の家の前で待つのは気が引けるのでいつからか駅で待ち合わせをするようになった。
連絡をして約1時間経たずに私は駅に着くとすでに彼女はいた。
「やあ、久しぶり。」
「確かに対面で会うのは久しぶりだね」
以前にあったのはいつ頃だろうかと考えるとおそらく1年前くらいだっただろうか。彼女は1年前にフリーのエンジニアになっていた、いつの間にかだった。会社にいる前からフリーになろうとは思っていたが、なんとなく会社に入ってみたいと思ってたとのことだった。その言葉を聞いてみたときは、何を言ってるのかわからなかった。そして私は高校から彼女と同じなぜか仲がいい。
新宿までは10分もかからない。改札の途中に今やっているゲームの広告が出ていた。私はそれで少し更新したのか少しゲームの話をした。熱っぽく話したつもりはなかった。
「もしかして何かゲーム始めた?」
「なんでわかったの?」
「そんなに話したらさすがに誰でもわかるでしょ……。たぶん、A社かS社の新作ゲームでしょ?」
そして確かに私のゲームはA社のゲームだった。予想外の言葉に、私は思わず目を丸くした。
「え、どうしてわかったの?」
「仕事が忙しくて、なかなか時間が取れないんだけど、暇な時は新しいゲームを始めるのが好きなの。大 体やったゲームは覚えてるんだよ。
で、珍しく呼び出してきたけど、今日は何かあったの?」
まだ話す準備はできていないかった。いや、もしかして私は今日喋らずに気分転換さえできればいいとも思ってたから話す準備などしてなかった。
「一緒にゲームをやろうなんて言いに来たわけではないんでしょ」
「ちょっと心の準備が整ってないから……」
「じゃあ、早く入るよ」
そう言って目の前にオシャレなカフェへと問答無用と入れられた。何も考えずにカフェへ続く地下階段へ進んでいった。店内は想像に違わぬ喫茶だ。そこそこ賑わっていたが、運良くすぐに席に案内された。席に着くと私は今までのことを話した。
「ゲームの中では男キャラでやってるいってたけど、これからもずっと男キャラでいる理由はやっぱりないんじゃないの。女だってバレたら色々めんどくさいことあるかもしれないけどさ他のプレイヤーに守ってもらえたり、アイテムもらえたりすらあるんだよ?」
「うわ、さいてい……」
「嘘だってさすがに。じゃあゲームで女だってバレない方法、教えてあげるから」
「そんな方法あるの?」
「あるある。長年ゲームをやってる人間を舐めないでほしいね。一言で言えば、時々ふざけたことを言ったり、いわゆる“おじさん構文”を使ったりすればいいんだよ。」
「おじさん構文? あの、テレビとかでよく見るやつ? そんなんで、本当に男性だと思ってもらえるの?」
すると彼女は携帯をいじりだした。そしてすぐに私の携帯に着信が来た。
「うわ……」
「そう、それ。もしも女性だとしても、そんな口調で話しかけてくる人に、わざわざアイテムあげたいなんて思わないでしょ? 面白い女の子ってのは、やっぱりアニメの世界だけの話さ。」
やってることはめちゃくちゃだけど確かに、そう言われてみれば、私も納得がいった。ゲーム内で「ちょwwマジかよww」とか「うぇーいww」みたいなノリで話しかけたり、ちょっと古臭い言葉遣いをしてみたりするだけで、男性プレイヤーからすれば、明らかに女性とは違う印象を受けるし私も嫌だ。
そんな話をするうちにケーキを食べ終えた、彼女はそそくさと立ち上がり、店を出る準備を始めました。
「え、もう帰るの?」
「実はね、今日ここに来てみたいと思ってたんだ。もう時間だから先に帰るね。」
そうだった。彼女はこういう人間だった。久しぶりに会うからだろうか、もしくは今日の恥が想像以上に聞いているのか忘れていた。
「会計はさっきのコンサル料でチャラね?」
「ええ、前払いなんですか?」
彼女は前よりもさらに自由になった気がした。
「もしも、私が言ったことが間違えてたら、失敗した時に倍で返すよ。」
そう言って、彼女はレジを私に任せたまま、さっそうと店を出て行きました。確かに、このペースだと会社にいるのは難しい。でも、こういうタイプの彼女もいいと思ってしまう私だった。自分も少し急いでレジでお金を出し地上へ戻ると、彼女は一応いた。少し暑い日だったので、彼女は店を出た時よりも薄着になっていました。
「またそのゲームやってみようかな」
そう言って、彼女はどこかへ消えていきました。彼女と話したことで、気持ちが少し楽になったような気がした。気のせいだろうか。