私、誰か入ってくるなんて知らないよ……
新しいコスチュームを手にした私は、まるで宝石箱を開けたような高揚感に包まれた。しかし、事前に決めた1店舗につき1分という短い時間の中で、次々と現れるコスチュームに、私の集中力はどんどんと消耗していった。そんなことが何度も何度も繰り返されていきました。他のギルドメンバーも次第にマーケットに入ることができるようになった。昨日は買うかどうかわからないと言っていましたが、コスチュームを買っていきます。もうすでに買った私はこれ以外にも何か買おうと思ったがどれを選べばいいのか分からず、時間だけが過ぎた。砂時計の砂のように、あっという間に流れ去っていった。気がつけば1時間が経っていた。多くのコスチュームを見たせいか、私の目はもう何もかも同じに見えてきた。
これほど短時間でいろんな店を回ることは現実下はなかったので私はもう疲れました。大体30分たった頃にはもうあんまり覚えていません。しかしそれでも心に響く服が買えたので全く問題はありません。
みんなで回るように一応言ってましたが、途中で疲れたのか、それとも気に入ったものを見つけたのか、一緒に回るギルドメンバーはだんだんと減っていきました。1時間を過ぎたころには3人になっていました。
「これで行きたい店はだいたい見終わった」とギルドマスターはそう告げさらに私は「今日は用があるので、先に失礼します」といってログアウトした。
初めてギルドマスターの補佐の方と二人きりになり、何を話せばいいのか戸惑いました。初対面の人と話すのは得意じゃないんだよね、まあ知り合いだと得意かと言われると困るけど……。そんな微妙な雰囲気が漂っていた。
「二人で話すのは初めてですね。今日は何か欲しいもの買えましたか?」
あちらから喋りかけてくれ、そんな雰囲気もすこし和らいだ気がしました。そして私は買った服のことを思い出すと少しだけ気分が上がりました。
「はい、買えました!これです!」
「これはDeって人の新作ですかね。人気があるアイテムなので、よく買えましたね。」
見た瞬間に誰が作ったものなのか当ててきた。そして私は作成者情報を開いてみると、確かにそこにはさっき言われた名前が刻印されていた。
「ところで、じゅんさんは他のゲームはあまりやらないのですか?」
いきなりの質問に、そしてしっかり当たっているのでなんでわかったのだろうかと不思議に思い今までの行動を振り返ってみると
「コメントやプレイ中の動きが、ゲーム慣れしている人とは少し違うと感じたんですよ。もしかして間違ってましたか」
まさかそんなことあるのかと思ったが彼がいうのだから間違いない。彼との話はその後も非常に的を得たものばかりだと思った。彼はこのゲーム以外にも複数のオンラインゲームをプレイしていると話しました。そしてこのゲームは、決して作りが良いとは言えと教えてくれた。しかし、ギルドシステム、特にとギルドバトルがプレイヤー層に合致しているおかげで、なんとか続けていけると教えてくれた。むしろ、それ以外の部分で特に良いと言える点は、あまり見当たらないと言ってきた。
「じゃあギルドにも入っておらずにこのゲームを続けている人がいると思いますか?」と私は突拍子な質問をした。
「それは、僕にもよく分からないですね。確かにいるらしいんですけど、あえて言うなら人間関係が面倒になって他のギルドに入ろうか悩んでいる人とかじゃないですかね。そういえば、今のギルドには、人間関係で少しもめている人がいるので、気を付けてくださいね。」
と、彼は言いながらあるプレイヤーのことを少し強調するように表示しました。そのメンバーはギルドの中でも3番目目のランクだ。
「このギルドは、もともと高ランク帯のプレイヤーが集まっていましたが、人数が足りなくなり、門戸を広げることになったんです。その結果、以前は入会できなかったようなプレイヤーも加入しました。彼は、新規メンバーのランクがなかなか上がらなかったり、ギルドバトルに参加してくれなかったりすることには厳しいです。もし困ったら連絡をください。」
彼は話終わるともう少しマーケットを見て回るのか提案してくれたのですが、これ以上見る気力がないので、遠慮して別れた。実は予定では一人でマーケットをゆっくり見て回ろうかと思っていったが諦めて購入したアイテムを眺めることにした。そこで、一人になれる静かな場所を探したが思いついたのはいつもギルドメンバーが集まる場所でした。迷うこともなく、むしろ予定よりたどり着くといつもは賑やかだったメンバーの姿はなく、静まりかえっていました。そこで、ギルド専用のスペースに入り、早速購入した服に着替えることにしました。
アイテム一覧に検索をかけ目当てのものを取り出すと、思わず頬が緩んでしまう。柔らかい素材の肌触りやその柔らかさを確かめながら鏡の前に立った。そこには少し現実の私とは違う、中性的な顔立ちのキャラクターが映った。このコーディネートによってさらにその性別は不明になり魅力的な雰囲気を醸し出している。部屋中を見回し、誰もいないことを確かめてから、服をチェンジした。心臓がドキドキと高鳴り、少し緊張しながら、深呼吸をして、再び鏡の前に立つ。思わず手を口に当てにやけるのを抑えた。自分でも意外なほど、形容しがたい表情をしているような気がした。
普段とは異なる高揚感に駆られ、私は床から大きく跳び上がった。普段の私なら絶対にしないような、無邪気なジャンプだった。そんな時、不意に玄関のドアが開く音がした。まさか、と思いながらも振り返ると、そこには買い物を終えたギルドメンバーの姿があった。彼らの視線が、一点に集中していることに気づいた。それは、まさに私を指している。心臓が鼓動を早め、全身に熱がこみ上げてくる。
「おじさん、可愛いじゃんww」
チャットが表示され私は固まった。あまりの予想外の出来事に、私は言葉も出ず、ただ固まることしかできなかった。全身が赤く染まり、恥ずかしさのあまり、視線を逸らすことしかできない。耐え難いほどの恥ずかしさに打ちのめされ、私は何も言わずにゲームからログアウトした。