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お嬢様は○○なお年頃

「そう、貴方が帝国にね……」

「あぁ、ルーミア……じゃなくてアミルのことはエリィに任せるよ。ユウキやユイナも王国に残るから問題はないと思うけどな」

「彼女になにか伝えておきたいことは?」

「それじゃあこのペンダントを渡しておいてくれ。そいつには少し特別なまじないを込めている……俺の力が必要になったときはそいつが俺のいる場所まで導いてくれるはずだ」

「確かに預かったわ……ルーミア王女、もといアミルのことはこの夜の王、エアリィ=D=クロフォードに任せておきなさい」

「助かるよ、やはり持つべきものは頼りになる盟友だな」

「……レイ知ってた? その言葉、友人関係とは決して対等なものではないと思い知らされるのよ」


 私が不満げな視線を向けると彼はカップの中身を飲み干し、椅子から立ち上がった。


「いやはや、エリィは不機嫌だしそろそろずらかるとしますかね」

「当分の間、貴方が淹れてくれる紅茶を飲めなくなるのね」

「全部片付いたらまた一緒に紅茶でも飲みながら人族の未来について話そうぜ、今度は俺の部屋でな?」

「そう、それはなかなか魅力的なお誘いね。楽しみにしているわ」

「あぁ、吸血鬼の言い回しを借りるのであれば……俺たちの因果が再び交わるときに」


 そして私の親友にして、人族を愛する大妖怪は空隙を通じてその姿を消した。


「……シルバー、いるかしら?」

「はい、こちらに」


 一切の音を立てず私の背後に、焦茶色の頭髪に茶色の瞳を持つ彫りの深い顔立ちの青年が現れる……そういえばレイは彼のことを、スコットランドのグラスゴー辺りで生まれる者達の特徴に近いと言っていたわね。


「次期クロフォード家当主である私の命令よ、アミルをこの部屋に連れてきなさい」

「お嬢様の仰せのままに」


 シルバーはその場で私に一礼すると、部屋から去っていった。


 *数分後*


「お嬢様、ルーミア王女をお連れいたしました」

「シルバー、彼女はこのクロフォード家の養女、アミル=D=クロフォードよ。ルーネイト王国のルーミア=ルーネイト=アークソフィア王女としてではなく私の妹として扱いなさい」

「承知いたしました。それでは妹様、こちらにお座り下さい」


 アミルが向かいに座ったことを確認した私は、普段のお母様がしているように机の上で手を組む。


「さてと、貴女を王族争いから護るために養女として迎え入れたわけだけれども……クロフォード家の一員となったからには、しっかりとクロフォード家に貢献してもらうから覚悟をしておきなさい。私は王族だからといって特別扱いはしないわよ?」

「は、はい……」

「……お嬢様は『王族のために力を尽くすことは貴族の務め、クロフォード家の一員となったからには貴女様のことを、この命に代えてもお守りしましょう。まずはお互いのこと理解しながら、家族として絆を深めていけたらと考えております』と仰っています」

「え……?」


 シルバーの通訳を聞いた彼女のココアブラウンの瞳が大きく見開かれている。


「まぁ、この夜の王である私にかかれば、王族を我が眷属とするのも容易いこと。貴女がこの地に訪れることも、すべては私に操作された因果によって定められていたこと……つまり貴様の運命は既に我が手中にある」

「お嬢様は『夜の民である吸血鬼を束ねる私がいる限り、貴女様に危害が及ぶことは絶対にないと約束いたしましょう……我が運命は貴女様と共に……』と、このように仰っています」

「……シルバー、余計なことは言わなくていいのよ」

「申し訳ございませんお嬢様、従者でありながら差し出がましい真似をいたしました」

「分かればいいのよ」


 私は居心地が悪くなって椅子から立ち上がった。


「シルバー、私は忙しいから貴方がアミルにこの屋敷のルールを教えてあげなさい」

「お嬢様の仰せのままに」

「それじゃあアミル、また夕食の時に会いましょう」


 私は窓を開け、蝙蝠の姿に変化し窓の外へと飛び立った……


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