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名前?自己紹介

暗雲立ち込める空に杖をかざし、稲妻が走りそうなシュチュエーション感を漂わせているようだが、実際にはただどんよりとした空に老人が杖をかざしただけのシーンであった。1人だけ妄想しているのか鼻を脹らませ鼻息だけが周囲に聞こえてくる。少女たちは“キッモ”と思ったが、その中の1人の少女がいつの間にか老人の足元に体育座りをし老人を見上げながら話始めた。


「行うこと?な~に?」


「そうじゃった、そうじゃった!行ってもらうことじゃ!それはなぁそれは~……とその前にお前たち今の今まで不思議に思わなかったか?お互い名前もまだ知らんじゃろ?」


 老人が少女たちに問いかける。


「あれ?そういえばそうだね?今まだ気が付かなかったよ。ふしぎだね~?」


 老人の足元で体育座りしていた少女がふしぎそうに他の少女に向かって、なぁぜなぁぜ?と人差し指を唇につけて説いてきた。


「そうだね!そうだよね?!」


「確かにそうですね」


「よく考えたら皆初めて会ったみたいだったし、私含めて何故普通にしゃべっていたんだ?」


「気が動転していたのだとしても、みんなの存在が普通になっていてしまって鈍感になっていたのかな?」


「それもあると思いますが、意図的に意識を向かないようにしていたということも考えられます」


 老人は少女たちが話している様子を相変わらず髭を撫でながら頷き良きかなとみている。


「ひょっとしておじいさんですか?私たちの部分的意識をスルーさせたのは?」


 少女たちが一斉に老人をみると、髭を撫でていた老人は杖を地面に一突きして少女たちに言い放つ。


「せーかーい!よくわかったの。わしがお前たちの意識の中から、それぞれの認識を一時的に麻痺させ疑問に思わないようにしたんじゃ、どうじゃ、すごいじゃろ~」


「何のために麻痺させたの?しなければならない理由でもあるということですか?」


「あると言えばあるのう。今から行ってもらうことに関係しているからのう。じゃが、先ずは自己紹介してからのほうが話を進めやすいじゃろうて、ほれ、それぞれ紹介せい」


 ほれほれと顎を動かし少女たちに自己紹介をするよう催促した。


「そうだね、それじゃあ私から。名前は瑞原紫音です。16歳です。好きな色は水色、6月生まれ、ふたご座です。よろしくお願いします」


 少し気恥しそうにしながらも大きな声で言葉を発した。


「つぎ、次、わたしわたし~」


 体育座りをしていた少女がぴょんと立ち上がり両手を振りながら喋りだす。


「え~っと、私は麻生かなめ(あそうかなめ)で~す。歳は15、うお座、好きな色は瑠璃色、それから、3月11日うまれで~、あとは~あ!?そだ!好きな言葉は、いつまでもあると思うな菓子と金です」


「菓子と金?ん?誰かの言葉なの?」


 かなめが発した分かるような分からないような言葉に思わず反応してしまった紫音は、その疑問をかなめに聞き直した。


「うん、そうだよ。えらーい、私の言葉なのだ!えーっとね、意味は、お菓子を食べているといつの間にかなくなっていて、お菓子を買って食べているとまたなくなっているのだ。すると不思議なことにお菓子を買うお金が無くなっているのだ。つまりお菓子を食べるとお金が無くなっているのか、お菓子を買ってお菓子を食べるからお金がなくなるのか?ひじょーに難し問題なのだ。つまるところ、お菓子とお金はずーっとはないぞということです。はい。」


 話を振ってしまった紫音と二人の少女たちは、かなめが何を言っているのか理解できずにキョトンとしてしまい、その言葉を右から左へと聞き流し何事もなかったように次へと進めてしまった。


「つ、次は私で良いかな?と、その前に良かったよ今の言葉。意味は分からなかったけど耳に残るいいフレーズだった。では、改めまして私の名前は矢次原蓮。AB型。生まれは8月25日、星座は、えー、お、おと、おと、おとめ座…です」


 蓮は自分の性格からして、おとめ座であることを皆に言う事に抵抗があるらしく、言った言葉にどもってしまい、それがさらに恥ずかしさを増したようで、少し頬を赤らめながら俯いている。


 「かっかわいい~!」


 三人は一斉に声をそろえて蓮の仕草に反応した。


「かっかわいい?!そんなこと、ないないないない!」


 蓮は頬を更に赤らめて両手をうちわ代わりにしてパタパタと扇いでいる。


「そうそう!かわいいのではないのだ!かっこかわいいのだ!略してかっか!今日から蓮ちゃんはかっかね」


 かなめが連の周りをかっか!かっか!と蓮の顔を見ながらクルクルと周りはじめる。


「や、やめて~!や、やめろー!]


 両手を顔に押し当てながら恥ずかしそうに内またで立ちすくむ。


「かなめその辺で終わりにしてあげて蓮が困っているから」


「え?!なんでなんで?かわいいかっかのこともっと見ていたいのに?」


 蓮の周りをクルクルと回っているかなめが少しふしぎそうに紫音を見る。


「だってそんなに見られたら蓮だって恥ずかしいし、自己紹介もまだ済んでいなさそうだから」


「そうなのか~ごめんね気がつかなくて、ごめんちゃぃ」


 お座りの格好をしたまま蓮の足先に右手をポンと置いた。蓮はうろたえつつも自分の足元にじゃれている小型犬のような小さいかなめをかわいい、抱きしめたいと思ったが、気が付かれるとまたじゃれてくるのはわかっていたので、グッと堪え自己紹介を再開することにした。


「え~話の続きだけど、趣味は音楽でベースを弾いているよ。地元では少しだけ名前を知ってくれている人もいます。あ?!自慢じゃなくて、音楽が好きってことを分かってほしくて、今度学園祭でライブをやる予定なので良かったら来てください。以上!です。次どうぞ」


 蓮は話が終わったことに少しホットしながら、最後の一人へと話を振った。


「4人目は私ですね。先ほどは話を勝手に進めてしまい申し訳ありませんでした。改めて初めましてグレーバー海藤です。10月15日生まれ、星座はてんびん座、A型です。私は癖でついつい物事を考えすぎるきらいあります。突然無口になったり、突然しゃべりだしたりとするようで、知人からはよくない習慣だと注意されています。なので初見の方は、変な人、嫌われているのかな、意味わからないなどと思われがちなようですが、決してそのようなことはなく、私自身は皆さんと仲良く友達になりたいと思っています。あと、よく名前のことで聞かれるので、一応付け加えておくと祖父が外国籍なのでクォーターになります。どうぞよろしくお願い致します」


「かっけ~!いや変な意味ではなくてごめん。純粋に憧れから出てしまったよ。生まれは選べないけどうらやましいよ」


 蓮の言葉が終わるや否やかなめが言葉を続けざまに重ねてきた。


「グレーバーだからグレープちゃん?フルーツちゃん?グレーちゃんかな?」


 かなめのあだ名付けにぞっとしたグレーバーは静かに大丈夫、グレーバーでとかなめをなだめた。


「そう?気に入らない?じゃぁ~もう少し考えて、イイのが浮かんだらグレーバーちゃんに話すね」


 かなめは少し不満そうだったが、グレーバーはもし良いあだ名があって私が気に入ったらと提案者のかなめに答えた。


「これで全の紹介が終わったのぅ、おっと!?その前に主役の紹介が終とらんかった」


「しゅやくって、だれだれ?どこにいるの?あ!?わたしたちのことかな?でも、みんなおわったよ?」


 かなめは頭をふるふると左右に振り老人が言っている主役を探している。


「わしじゃわし!主役は最後に登場するもんじゃろ!ということはわしはまだ語っておらんからな、ばばんとわしの存在を皆に理解させ、やっぱり私たちとレベルが違うなってことを肌で感じとってもらわんとの」


 分かるかな?みんな!と言わんばかりに頷きながら手を腰に当て偉そうに少しのけぞって見せた。

蓮はわなわなと身体を震わせ開いていた手の平をぐっと握り拳に変え、じじーと言いかけたところで、グレーバーは素早く言葉を滑らせ蓮が行動に出る前に二人の間に入り込んだ。


「はいはい分かりました。ある意味私たちの今の状況を作った本人なのですから、この際きちんと紹介を含めすべてを是非さらけ出していただきましょう」


「ほっほっほ、良い心がけじゃ!わしの事が知りたいだろう。さぞそう願っておるのじゃろう!よしよし、いい子たちじゃな。先ほどは少し呼んだことを後悔するところじゃったが、ではでは」


 蓮は握った拳にさらに力込めグレーバーをキッと睨みつける。それを見たグレーバーは肝を冷やしながら、まあまあ、ね、ね、とここは私に任せてと蓮をなんとかなだめ、取り敢えず話が進むように取り繕った。


「え~わしは、お前たちが言うところの神じゃ!厳密には神的な存在じゃがの」


「へ~神様だったのかぁ?なら一瞬の内に私たちをこんなへんぴなところに連れて来たのも納得だね」


 かなめは上半身を屈め人差し指を下唇に当てながらフムフムといった感じで納得しているようであった。


「フムフムじゃなーい!納得してどうする。私はどうしてここにいるのかを聞くためにじじーの戯言を含めひじょーに納得はしていないが我慢しているんだ。ここで神様かーって終わらせられないでしょ」


「た、たしかに!?だまされそうになったよ~。あぶない、あぶない。じーじ、はなしを続けるのだー」


「あーはいはい。先ほどメガネっちゃが話をしたように宇宙は1つの生命体なのじゃよ。もっと言えば、お前さんやお前さん、メガネっちゃの中にも宇宙が存在し、その身体の内側から宇宙を見て、わぁー宇宙ってどんだけ広いんだろうと見上げているのじゃ」


 メガネっちゃと言われたグレーバーは、ネジが一本ん飛んだ魔法使いの様な呼ばれ方に不服であったが、そのことを言い始めてしまうと話が進まないことは分かっていたので、言いたい気持ちをグッと抑えて、神と名乗る老人の話の続きを黙って聞くことにした。


「それって、宇宙は1つじゃないってこで、神様はこの宇宙どころか沢山ある宇宙のすべての神ってことなの?」


 今まで話を静観していた紫音が神の言葉に反応した。


「そ、それな~、せ~か~い~ではない。惜しい及第点じゃな。お前たちがクエクトより更に小さな存在なんじゃが、ワシは臓器の中でいうところの心臓という存在になるかのう。つまり宇宙という生命体の中では脳の次ぐ第2位の存在ということになる」


「クエクト?なにそれ?」


「なんじゃそんなことも学んでいないのか?うーん、メガネっちゃは分かるか?説明できる範囲でいいから話をしてやれ」


「理解している範囲でいいんですね。分かりました。クエクトとは単位の事ですね。私たちが学んだもので㎝とかは長さを測るときに使っているでしょ。クエクトはそれと一緒で大きさ小ささを用いるときに使うものですね。私たちが肉眼で見えるものは、せいぜいミリぐらいまでで、それ以上小さいものは電子顕微鏡などを用いて確認しています。神様が言われたクエクトは確認されている限りで一番小さい単位としての名称になりますね。つまり、神様が言いたいことは、私たちは目で見えないほど小さい存在であるということが言いたいのだと思います」


「まあそうじゃの、その小さきものが心臓や他の器官、身体自体を想像してみぃ途方もなく大きな存在で、お前さんたちの小さな眼から見たらもう何かわからんじゃろ。まさに宇宙を見ているよじゃとな。この宇宙において、ワシの上にはさらなる上位種が存在しており、わしらの宇宙の他にもまた宇宙が存在している。ワシはそんな宇宙の一つを管理している存在にすぎんのじゃ」


「私たちが見ているこの宇宙は、沢山ある宇宙の一つに過ぎないということなの?それは凄いということを通り越して凄すぎて、何だかワクワクしてくるような話ですね」


 紫音は神様が話した事を妙に納得した様で、内から湧き上がる感情をどう抑えようかと考えている。かなめの方はやっぱり何を言っているのか分からず目をパチクリして、それでそれでを繰り返している。


「ワクワクではなくて、真実で理なんじゃがのぅ。まぁともかく、お前たちは宇宙という身体の中に存在している気にも留めない存在から、注視していかないといけない存在に変わろうとしておる。お前たち人類が観測できている限りで言うと、ワシやお前たちがこの宇宙に誕生してからおおよそ138億年が経ち、お前たちが存在している星は約46億年ほど経つのじゃが、この度お前たちはこの宇宙に強い影響を及ぼす癌であるのではないかという疑念が生じておるのじゃ」


「癌ってあの癌細胞のことですか?」


「そうそう、総称としてのじゃが、癌細胞と同じぐらい厄介な存在ということじゃな。宇宙からしてみればでみじんも感じないものなのに、宇宙を蝕む非常に厄介で憎むべき害になろうとしているのがお前たちという訳じゃ」


「私たちがその癌細胞で宇宙に何かをするようなことになるってことなの?」


「うーん、ちょと違うがお前の理解ではそうじゃのう合っているかのう」


 紫音は即座に神の言葉に反応した。


「そんな、そんな厄介な存在じゃないよ。だって私たちはただの一人の人間だよ。こんなに広い宇宙なら、私たちが及ぼす影響なんてな考えられないし、ここにいるみんなが何か悪いこと考えているなんて到底思えないよ。私たちは善行しかしないとは言わないけれど、さっき自己紹介をしたとき皆いい人だったよ。1人1人が正しいと思うことを日々しているはずだよ。きちんと立っているよ」


 神が言う癌細胞自体が何なのかを理解はしていないが、自分を含めここにいる四人を否定されているように感じた紫音は表情を少し硬くしながら、熱の入った言葉で神が話していることを否定しようとした。


「私たちが悪行をするかしないかは別として、神様が言うことには一概に間違っているということはないと思います」


 腕を組み左手の指を顎の下にあて思考しながら聞いていたグレーバーが話始めた。


「どういうこと?!先ほどお髭の神様は私たちは非常に小さい存在と言っていたよ。そんな存在が無限に広がる宇宙に影響を及ぼすなんてあるわけないじゃない」


 神の言葉を肯定しようとしてきているように感じた紫音はグレーバーの発した言葉にかぶせるように自分たちはそのような存在ではないと強く主張した。


「紫音や私、ほかの2人を否定しようなんて思ってはいないわ。ただ、仮説の話をさせてほしいの。私たちの身体の中では、癌細胞と言われているものは日々作られているの。正常に身体の流れが作れている人なら、その必要のない細胞は体外へと排出することができるわ。でも身体の中に不必要な細胞が残ってしまうと、やがてその細胞が身体への影響を及ぼす細胞へと変化してゆくの。それが分裂を繰り返して増殖していき、やがて癌細胞と呼ばれるものに変化していってしまうの。私たち人間の身体の中でそのような悪いものが毎日毎日何年と作られていっているなんて知識があれば別として、そのようなものを感じることできる?死に刻々と近づいていているなんて実感して生きている人間なんていないわ。先ほど神が言っていたこの宇宙が1つの身体として捉えるならば、私たち小さき存在が癌細胞のように増殖して、宇宙にとって弊害になるようなもであると認定されたってことになるわ」


「まぁメガネっちゃが言うことがほぼほぼ正しいかのう。お前たちが直接宇宙を壊すということではないが、少しずつ宇宙を蝕むような存在が増殖していることは視認しておる。これから先、ビックバン並みに増殖する可能性を秘めているんじゃが、そのトリガーになるかもしれないのがお前たちの存在なんじゃよ。1つ1つは微々たるものでも、それが何千億何千兆と分裂、増殖され続けられては流石に宇宙もダメージを受けるのじゃよ」


 2人の話を聞いていた紫音は無言になり、一瞬静寂が生まれ時が止まったかかのようだったが、かなめがそれを打ち破り明るく大きな声で話始めた。


「138億年?46億年?癌?う~ん???わからないのだ。でもそうなのかー。そうなんだね。あたしたちが意識しようが意識しなかろうが、うちゅうっちに迷惑を掛けてしまうのかー。でも、でも、なら何故神様は私たちをここに呼んでいるの?あれ?あれあれあれ?!ひょっとして私たちを消すために呼んだのか!いやだ~消されたくはないのだ~!」


 かなめは神に向かい両手両足を上下させバタバタしながらぷんぷんと怒った。


「ワシはお前たちを無に帰するとは言っておらんじゃろ。ただ、厄介なものだとは思っておるが。いいかよく聞け、お前たちが言う宇宙が誕生したときから92億年程経ったとき、宇宙が腹を下してのぅ、ワシは良かれと思って下痢止めを作ったんじゃが、それがそもそもの始まりじゃ。今までも何度となく作っておったから大丈夫だと思ってたんじゃがそれがいけなかった。慢心しておったんじゃなー。それがお前たちの星でいう処のアダムとイブじゃ」


 神はウンウンと納得したような頷き遠くを見つめ、理解できていない少女達はポカーンと話を聞くのみであった。

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