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9. 戦いに

 ベルナールは通信車両から情報を受け取る、まだこんな手を隠していたのかとスピリット国の底力には驚きを通り越して呆れてくる、ココまでやってまだ届かないのならもうどうしようも無いじゃないかと諦めかけて、深呼吸を一つ入れて気を入れなおす


 さらに悪い事に通信車両からの情報が途中で途切れた、おそらく撃破された。旧市街地へ援護射撃を行った車両もおそらくほとんどが撃破されているだろう。仕方がない、元々その予定の作戦だ、ベルナールは中隊に全速での進軍を命じる、たとえ酸化剤を使い切ったとしてもたどり着いてプラントを破壊するつもりだ、破壊されたプラントはスピリット国にしてみれば価値は低くなる、プラントを放棄してくれれば一番だが直すにしてもその時にでるゴミなどからプラント技術を盗むチャンスが生まれるはずだ


 プラントが地平線の向こうに見えた時右後方から悪夢がやってきた


「くそ、もう来やがった、各機武器使用自由とにかくプラントを破壊しろ」


 ベルナールは中隊に命令をしつつミサイルをプラントに向けて1発放ち、残ったミサイルのすべてをキルリオに向けて発射した、味方のロイクも同じ行動をする、そんな中ミサイルを半分ほどキルリオに向けて発射しつつその場で立ち止まったロイクが居た


「おい!フーゴ何してる!?」


「俺が足止めする、皆は行け!」


 馬鹿が、自分を低く見積もるにも限度がある、精鋭の中でも特に操縦技術が高い者をベルナールの中隊に入れたのは誰の為だと思っているんだ、ベルナールはそう怒鳴りたいのを我慢し再び呼びかける


「命令だ!今すぐこっちに飛べ!」


 他にプラントに迫るロイクが見えない、おそらく増援に来たキルリオにやられたのだろう、ならば自分が最後の戦力だ、失うわけにはいかない。それでも、最悪小隊を2個潰してでもフーゴを生存させようと思ったベルナールだが


「駄目だ、それだと間に合わない」


 フーゴは命令に背いた、このやり取りの間にすでにベルナール達とフーゴの距離はかなり離れていた、今から救出に戻っても共倒れにしかならない


 ベルナールは自分の歯が軋む音を聞きつつフーゴのバディであるルクレツィアが援護に行こうとするのを止めて残った中隊に前進を命じ、フーゴに向かって最後に光無線通信を飛ばす


「死ぬなよフーゴ」


 無茶な事だとわかっているが言わずにはいられなかった


「まだ死ねないさ、でももし俺がやられたら・・・」


「わかってる」


 フーゴが最後に頼んだのはアンネの事だ、自分がいなくなれば妹を養ってくれる人が居なくなる、ずうずうしいとは思いつつも頼める相手はベルナールだけであった




 フーゴは飛んでくるキルリオに立ち向かう、キルリオはまだミサイルと踊っていた、しかしミサイルは次々と迎撃されている、程なくしてすべて迎撃し終わるだろう、フーゴは酸化剤の残量を確認する、飛べるのはもって3分という所、しかし時間いっぱいまで逃げ回れたのならむしろ大勝利である、おそらく30秒も持たないだろう、だがこれと同じことを残った中隊が行っていけば、あるいはプラントにたどりつくことができるかもしれない、フーゴはそう考えた、残る問題は一つだ


 キルリオはミサイルを迎撃し終えて、ベルナール達の中隊に向けて飛び始めた、足元にいる一機のロイクの事なんかどうでもいいからだ。フーゴの作戦では相手にされない場合どうするかという問題が残る、ソレに対抗する方法は一つ


「止まれ!」


 フーゴは叫びながらキルリアの進行ルート上に向けて飛ぶ、2機が衝突する直前でキルリオは急停止してよける、フーゴは停止したこの瞬間を逃さず残ったミサイルを発射しつつ右手のライフルも連射する、そして回り込んでベルナールの方へ向かおうとするキルリオの進行ルートに再び割り込む


 キルリオはロイクとは比べ物にならない性能を持っている、この程度では足止めになどなるはずがなかった、しかし幾度もの戦闘行いミサイルを100発以上使い、さらに切り札である大規模爆撃まで使った、キルリオの動力の一つは魔力と呼ばれる物であり魔力タンクからパイロットを経由して機体に供給されている、その残量はもはや5%を切っていた、その消耗の所為でキルリオの性能は格段に落ちている、そんな戦闘を続けてきたパイロットは魔力だけでなく体力的にも精神的にも消耗しており、そんな状態ではフーゴを抜いて中隊に向かうのは難しかった、さらなる時間の消費を覚悟でライフルをフーゴに向ける、せめて少しでも早く倒さなければと焦るキルリオの攻撃をフーゴは回避していく


 何度目かの空中戦で、ロイクのライフルが何発か当たりそろそろキルリオのバリアも怪しくなってきた、これ以上はバリアを保つのも厳しくなってくる、キルリオのパイロットは残った力を振り絞ってミサイルを一発放った、空中では回避は出来ない、そのはずだった


 フーゴはミサイルに向けてスモークを展開した、そしてそのスモークの中を飛びミサイルとすれ違うようにキルリオに向かってきたのだ。さすがのキルリオのミサイルもミサイルそのものがスモークに包まれていては敵を発見できない、まして向かってくる敵機の軌道は読めるはずがなかった、キルリオの手動操作によってミサイルが爆発したがすでに遅かった、爆発はロイクの背後で起こりキルリオに向けてライフルを連射しつつ迫る、バリアの出力が低下している今の状態でロイクの衝突なんて受けたら無事では済まない。


 だがこのタイミングをチャンスと見たキルリオのパイロットはフーゴの特攻を上に避けてそのままベルナール中隊に向かおうとした、幾ら性能がダウンしたとしてもそれでもキルリオの方が性能は上、見てから合わせようとしても間に合うはずがない、キルリオのパイロットはそう考えて機体を上昇させた


 しかしフーゴはその軌道を読んでいた、キルリオが避ける寸前にその軌道に合わせて一手早く上昇して合わせてきたのだフーゴのロイクはバリアを突き抜けて見事に正面から衝突した、ロイクはバリアによって表面が焼け衝突によって深刻なダメージを受けて黒煙を上げながら落下していく、損傷は大きいながら何とかジェットを使い降下速度を緩めようとする、キルリオはダメージは受けたがいまだ健在だった、そしてライフルをロイクに向ける、キルリオのパイロットは少し悩んだ、こんな事をしでかしたロイクのパイロットに少しだけ興味があったからだ。しかし、と思い直し引き金を引く、ライフルは光の筋を描いてロイクのコックピットと燃料タンクを貫き機体は爆散した




 キルリオは改めてベルナールの中隊に向けて飛ぶ、今ならギリギリ間に合う、ダメージを受けて魔力も不足して出力が大幅に低下した今ですらロイクよりも速く飛ぶことができる、だから間に合う・・・そのはずだった


 ベルナールの中隊に追いついて今度こそ撃墜しようとライフルを構えたその瞬間にキルリオのコックピットにアラートが鳴った、ミサイル警報だ、もうロイク隊にはミサイルは無いはずだった、しかし実際にミサイルが飛んできていた、ソレを発射したのは


「飛行機!?」


 キルリオのパイロットは目を疑った、モニターには地平線ギリギリに戦闘機が映っていたのだ、あんなものただの自殺でしかないはずだった、現にスピリット国の基地から発射されたミサイルに撃墜されてる最中だ、航空機は撃墜される前にキルリオに向けてミサイルを撃ってきたのだ、性能が低下したキルリオに向けて放たれた200を超えるミサイル、空飛ぶ棺桶に乗りそして命と引き換えに打ち出されたミサイル、ソレはキルリオのパイロットには怨念や執念あるいは呪いが襲い掛かってくるようにすらみえた


 キルリオに襲いかかる亡霊たち・・・・・・それでもキルリオは倒せない、キルリオは性能が低下してなお健在でミサイルを回避し迎撃しバリアで防いだ、コレをアスファルト国の軍人が見ていたのなら理不尽さに奥歯を噛みしめて砕いていたかもしれない、しかしそれでも散って行った戦闘機のパイロット達の命は無意味にはならない


「プラントが・・・」


 キルリオのパイロットはプラントが燃えているのを横目に見るながらつぶやいた


 プラントの破壊を終え有用な物資の強奪を終えたベルナール達は待っていた、プラントの破壊は終えた、後は少しでもこの物資や技術を本国に持ち帰るための手段を考えるだけだが、ソレは残った本国の人たちが考える事だろう、ミサイルは撃ち尽くし酸化剤もない、戦う事も逃げる事も出来ない状況の中ベルナール達はキルリオの攻撃を待っていた


 キルリオのパイロットはミサイルをすべて撃墜し終えるとロイク隊を見下ろした、今なら倒せる、まだ完全に負けたわけじゃない、そう思ったが、次にどんな隠し玉が飛び出してくるかわからない、すでに限界ギリギリでバリアも切れている、次に攻撃を受ければロイクのライフルですら撃墜されかねない、おまけに撤退命令が下され今はプラントよりもキルリオの方が優先されている、これ以上の戦闘は任務違反ですらあった


 飛び去っていくキルリオを見て中隊は歓声を上げる、本当に勝ったんだと、本当に生き延びたのだと、もちろん油断は出来ない、だから手に入れた物資を速やかに運び出す、ソレが生き残った彼らの次の任務となった。


「隊長、私に救出任務を下さい」


 撃墜されたフーゴの救出の為ルクレツィアがベルナールにそう要求するが、ベルナールは即座に断った


「駄目だ、まだココはスピリット国の領土内だ、援軍に来た別のキルリオだってココに向かっているかもしれない」


「しかし・・・」


「少尉の発言は記録しておく、バディとしてはソレで十分だ」


 ベルナールはルクレツィアの任務をフーゴの護衛だと認識していた、フーゴが死ねばルクレツィアの昇進に響く、生存が絶望的な現在ではせめてフーゴの事を助けようとする発言をしておかないと、始末書どころでは済まない事態になると考えているのだろう


「違います、私は!」


 ルクレツィアには軍の上層部からフーゴ護衛の任務が下っていた、ベルナールの考えも間違ってはいない。だがルクレツィアにとってフーゴはソレだけではなかった、フーゴが直接かかわったわけでは無いのだが、フーゴのおかげで死なずに済んだルクレツィアの弟がいたのだ、そのお礼をまだ返していなかった


「落ち着け、アイツの行動を絶対に無駄にするな、せめて・・・それくらいは・・・」


 ミシミシとなる奥歯を噛みしめながらベルナールは帰還命令をだし彼らは国へ帰っていく、生き残ったのは彼らの中隊だけだった。スピリット国の境界線では演習という名目で集められたアスファルト国の部隊がそろっていた、歩兵から戦車まで様々だ、これらを投入していればフーゴは死ななくて済んだんじゃないか、少しだけそう思ったベルナールだがソレはありえない事だった、ソレをすれば今回の作戦終了後に隣国の領土からアスファルト国まで護衛無しで移動しないといけない、そんな事をして無事で済むはずがない、実際に遠方ではアスファルト国と隣国とで小規模ながら戦闘が起こっていた

三行要約のターン

フーゴの機体爆散!

戦闘機軍団爆散!

おかげで時間稼ぎできてプラント破壊出来ました


っということで次かその次あたりで終わります。続きはないこともないですが、そもそも見てる人いるか不明ですし書き溜めてからそのうち投稿ですかね

以上誰も読まない後書きでした

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