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ギルティスノウ  作者: JUN
8/8

吹雪

 毎日ビクビクと怯えていたが、ある日、先輩達の様子が変わった。

「は?何言ってるんだよ。死んだはずって、こうして生きているじゃないか。こんな元気な幽霊がいるか?」

 黒川先輩はシニカルに笑って、そう言った。

 そして草津先輩は、真っ青な顔で口元を抑えていた。

「そんな……」

 そして放課後、草津先輩は僕を拉致するが如く、家に連れて行った。

「これ、食ってみてくれ」

 そして、そう言って、冷蔵庫から出したタッパーを突き付ける。

「何ですか?」

「照り焼き」

「……」

「一口でいいから」

「……わかりました」

 嫌々、一口齧る。

「あれ……」

 しっかりとした食感ながら、ジューシーだ。タレの絡みもいい。

 気付くと、一枚、完食していた。

「これは一体!?」

 再び冷蔵庫を大きく開け、中を見ろと指し示す。

 塊肉があった。

「黒川だ」

「──!?」

「どういうわけかわからないが、この部の人間だけは味がするんだ。そして、食われた部員も甦る」

「く、黒川先輩まで……何で……」

「味がしないのかどうか、気になってな。向こうも同じで、限界だったんだな。お互いに、やりあった」

 淡々として、草津先輩が言った。

「黒川先輩も、今日、いましたね」

「ああ」

「スキーに行く前みたいな雰囲気でしたね」

「ああ」

 原理はわからないが、そういう事らしい。

「草津先輩。世の中には、他にもこういう人がいるんでしょうか」

 足が震えて来る。

 よく見ると、草津先輩も震えを腕組みで無理やり抑えていた。

「わからん。わからんが……普通に、葬式もあるだろ」

「死に方?死ぬ時の気持ちとか……」

「どうだろうな。でも、3人に共通してるのは、納得して死んだって事だな」

「納得……」

「この仮説を試してみないか?」

 草津先輩は、流し台に歩いて行って、出刃包丁を取り上げた。


 今日も、部室は賑やかだ。草津先輩と別府先輩が言い合いをして、黒川先輩がシニカルに切って見せる。それを翔子がケタケタと笑って、僕は気弱そうに笑って見ている。

 あの日、出刃包丁を振りかざして来た草津先輩に、僕は握りしめていたスタンガンを押し当てた。痙攣しながら動けないでいた草津先輩は、苦笑を浮かべていた。

 本当に、どういう事だろうな。この先僕は、どうしたらいいんだろう。

 ()()()()()()()()()()()()


 ふと気付くと、翔子の冷たい手が額に当てられていた。

「え?」

「まだ、下がらないわね」

 辺りを見廻すと、そこは、別荘だった。

 窓の外では風の音がしていて、ストーブではパチパチと薪がはぜている。

「水分を摂らないとだめよ」

「う、うん」

 どういう事だ?混乱のせいか酷く喉が渇いていて、一気にコップの水を飲んだ。

 夢を見ていたのか?そうか。そりゃあそうだ。あんな突拍子もない事、あるわけがない。

 僕は、クツクツと笑った。

「どうしたの?」

「いや、何でも無いよ、翔子」

「お、起きたのか。食べられそうか?鹿肉が保存してあってな。納屋に」

 草津先輩の顔を、僕は愕然として見た。

「あの……ええっと、別府先輩は?」

「別府は、助けを呼びに、山を下りてみると主張してな。行ったよ」

 鹿の赤ワイン煮が、いい匂いをさせているのを、僕は凍り付いた目で見つめた。


 2周目は、僕が生き残れるのだろうか。それとも、これは、何週目の世界なんだろう……?

     





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