その32・プラザのブラシ
新年明けましておめでとうございます!
今年もゆるゆると小説を書けたらと思いますので、どうぞよろしくお願い致します〜!
今日は久しぶりに雪が降りましたって日ですよ〜
そこには…
なんだろ
表現できないような“黒いモノ”がボヤッと、しかし存在感はかなりある感じで
お腹の真ん中辺りにあった。
今まで見てきたウ◯チの影とは明らかに違う。
黒い、黒い影…
まあ私もバカではない(はずだ)から、その黒い影をいつものように下に下ろして出させようとするのはやめた。
しかし、何か…勘なのだけど、
その塊は“意志”を持っているような気がした。
さて、となると、
魔王の体の一部の採取は難しくなってしまった。
「ウ◯チが取れないとなると…うーん」
そもそもそもそも、魔王ともなるとトイレとかいかないんじゃないか、
という疑問をサンダーダー先輩に投げかけてみる。
「まあねぇ」
先輩はサラリと答えた。
「余裕ぶっこいてますけどね先輩、あんまり時間はないんですよ!
魔王の体の一部…どうやってゲットするんですか⁈」
先輩は、何も残ってないコロッケの皿を眺めながら言った。
「夜這い、しかないでしょうね!」
「夜這い⁈てか、もう魔王ともなると寝ないんじゃないですか⁈」
「昨日寝てたわよ。
魔王って言っても、まだ完全な形じゃないから、休息は必要みたいね。
夜中忍び込んで、髪の毛の一本でもいいから盗んできましょ」
「えー、えー、バレたら絶対殺されるやつジャーン!
髪の毛一本か…あ、じゃあ、髪の毛をとかしてあげるって言ってさ、
櫛に引っ掛かった髪をもらえばいいんじゃん?」
「どーゆーシチュエーションで魔王の髪をとくことになるのよ…でもまあ、やってみるか、とりあえず。」
さてここで大変役にたったのが、
モノ入りの杖。
もう忘れてたりいきなりここから読んでくれちゃった読者ちゃま☆が多いと思われるので
もう1度ご説明致しますと、
必要なものが出てくる杖なんです。
あー便利…
私はワクワクで唱えた
「プラザで1番高いブラシ!」
(ちなみにプラザとは、おしゃれ女子のためのコスメや雑貨がたくさん売っているお店です)
ポン、と手のひらに、
箱に入ったブラシが出てきた。
静電気除去とか、なんとかオイル配合とか、色々書いてある。
「3,000円はするやつよね…」
もし元の世界に戻れることがあったら、絶対持って帰ろうと誓う私。
試しに自分の髪をといてみたら、サラサラになった。
良いブラシだー。
サンダーダー先輩の毛も軽くブラッシングしてあげたら、
何これ素敵
みたいなウットリした顔をした。
もしかしたら早々に先輩に取られちゃうかもしれない…。
そんなこんなで、私はコロッケの追加を作った後、
魔王くんにお届けに行った。
魔王くんは城の中庭に面した広い部屋のベッドでゴロゴロしていた。
「コロッケ、揚げたてですよー」
「よし!」
魔王くんは山盛りにコロッケが乗った皿を奪い取り、
あぐらの上に置いてパクパク食べ始めた。
「あっ、そうだ!
ワタシ、いいもの持ってるんですよ〜!
ジャーン!」
我ながらちょっとわざとらしいかなと思いつつ、プラザのブラシを取り出す。
「ふーん」
魔王タクアンくん、甘いもの以外は大して興味ないご様子。
「これ!すごく髪にいいんですよ〜!
髪をとかしてあげますね!」
ワタシは返事も待たずに魔王くんの後ろに回った。
コロッケを食べているこの隙に…
恐る恐る手に取った魔王くんの黒髪は、とかす必要がないほどツヤツヤしている。
多分シュシュでまとめても、つるりと落ちてしまうんじゃないかと思うほど。
特に文句も言われなかったので、
とりあえずブラッシングを始めた。
「気持ちいいな…」
意外にも魔王くんに好評のようである。
「昔母さんがやってくれたな」
(母さんがいるんかーい!)
「神をとかすとき、いつも母さんが言ってた。
あなたは世界を救うんですよって」