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その24・魔王のため息



「嫌な予感がするにゃー」


「ほう」

ワタシは、この世界に来た時から嫌な予感で満腹である。


今更少々のことがあっても特に驚きはしない。多分。


「どんな…嫌なことがあるっぽい?」


「知らないよ!」


何故かちょっとキレ気味になるサンダーダー先輩。所詮猫である。


すごく良いタイミングで、ゼロニが


「た、大変だ!」

と部屋に転がり込んできた。


「なんだゼロニ。お前は今晩、野宿組だっただろう…」

とゼロロクが言い終わらない内に


「それが!黒いモヤが…黒い大きな手が、他のみんなを持っていってしまったんだ!」

とゼロニが叫んだ。


ゼロニが言うことはこうだった。


町からそんなに遠くない、平たい野原に10人で野営をしていた。


ゼロニは少し散歩をするために、その場所を数十分離れた。


戻ってきた時、みんながいるはずの場所は黒いモヤに包まれており、

ゼロニが呆気に取られているとそのモヤは形を変えて巨大な手になり、何かを掴みながら、


ザザーとすごい速さで移動してしまったという。


「魔王のため息か…!」

いつの間にか戸口に立っていたゼロが言った。ガイもいる。


「魔王のため息?」


「黒いモヤの話を聞いたときに、もしかしてと思っていたんだが、たぶん間違いない。


魔王がこの世界に地の底から甦る時、

大きなため息をついて地上にばら撒くんだ。


それが“魔王のため息”で、

黒い霧みたいなものが色んなものを飲み込んで魔王の栄養にする…」


「こわっ」

ワタシは思わず叫んだ。

「じゃあ、その霧…モヤはまだまだ至るところにあるってこと?」


「おそらく、最低でも100はある。

人を喰らい尽くすほど大きくなって、太古の昔には一国を覆い尽くすほどになってしまったという文献もある…」


「えっ!じゃあどうすれば⁈」


「魔王のため息を消す方法はただ一つ。

魔王の体の一部をカラフラの水で溶かして、霧に撒くんだ。

それも、次の満月までに…満月になると魔王に栄養が渡って、本格的に復活してしまうからな。」


「次の満月⁈っていつ⁈」


「四日後…」

ゼロロクが素早く答えた。なぜ知ってる。

なぜかというと、満月人向かってサイフを振るとお金が入ってくる、という言い伝えがあるらしく、

満月チェックは欠かさないから、らしい。えらいな、ゼロロク…。


「にしても、4日の間に魔王を見つけて、なおかつ体の一部を手に入れて、しかもカラフラの水を汲みに行かなきゃならないんだろ…厄介だな…」

あのおちゃらけたガイでさえも神妙な顔をしている。


(コレはかなりヤバいのであるな。)

さすがの呑気なワタシも背中に冷や汗が流れてきた。


ちょっと…


魔王って


凄くない?


ヤバくない?


さてその時、ワタシはあることを思い出した。



「魔王のお世話」


この世界にきた時、大山係長もどきが、

奴隷の働き先に


「魔王お世話係」


と書いたチラシを持っていたではないか!


しかもワタシ、今それ持ってる!


ワタシの数少ない持ち物が入っている巾着の中に、小さく畳んでしまっておいたのだ。


(最後の最後の手段として、ないよりマシかな、と。)


「コレコレ!」


ワタシは何も考えずゼロにその紙を見せた。


「よし、ヨッシー行ってこい!」


「はあ⁈」


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