その16・任命
この声はもしかして…⁈
そんなワタシの予感は、多分的中している。
この、丸っこい可愛い声は…
…
………
ウ◯チの声
なんじゃなかろうか⁈
なかろうかっ⁈(動揺)
しかもどうやら、金髪イケメン"宵の黒"のリーダーのウ◯チ君だと思われる…
いやね、ほらね、
腸って第2の脳みそとかいうじゃないですか?
緊張するとお腹が痛くなるとかあるし、腑に落ちる、とかいう言葉もあるし、
まあそんなわけで
腸を旅したウンチ君が(あ、はっきり書いちゃったけど大丈夫だろうか)、少し意識をもったとしてもおかしくなんかないはずなのです。
などど自分を無理やり納得させ、ワタシはリーダーのお腹をついつい凝視した。
他の人のものより黒っぽい塊が、結構な範囲で腸に留まっているようだ。
(可哀想に…)
ワタシは、さっきまでのリーダーに対する恐怖心が消えて、同情心が芽生えていた。
最強の軍団のトップに立つということは、きっと想像以上に大変なのだろう…
ウ◯チがあんなにも貯まるほどに…
可哀想に…まだ若そうなのに…
金髪イケメンはいきなり涙ぐむワタシに大いに引いていたが、「コホン」と咳払いしてから言った。
「すまんが、私もお願いしたい」
「いいですとも、いいですとも!」モチロン二つ返事でOKだ。
いつもより多めに念を込めて、リーダーお腹にそっと触る。
((あったかーい))
あの丸い声が聞こえて笑いそうになったが必死で堪えた。
(あ、あったかいんだ。ウ◯チ君的に…)発見である。
((こんな可愛い子に触られて嬉しいな。やっと楽になれそうで嬉しいな))
もはやこの子に愛情すら感じる…
((ぽかぽかぁ〜))
手をくるくるさせると、ウ◯チ君は柔らかくなっていった。
一度に入口に持っていくと量が量なので大渋滞を起こしかねない。
(君たち、ちゃんと一列に並んで、順番に出てね)
((はーい))
ウ◯チが可愛いなんて感情初めてだった。
金髪は「う…」と小さく呟き、トイレの方にゆっくり、しかし一直線に歩いて行った。
「さよなら、ウ◯チ君!」
ワタシは心で話しかけたつもりだったが、しっかり口に出ていた。
その場にいる全員が白い目で見ていたが、キニシナイ!
だってアラサーだもん!(まさにヤケクソ)←上手い⁈
しばらくしてトイレから出てきたリーダーは、何というかオーラが明るくなって顔がハッキリと見えてきた気がした。
イケメンだとは思っていたが、いやいや本当にかなりのイケメン、しかも意外にも可愛い系のイケメンだった。
20代前半かと思っていたが、もしかすると10代の可能性すらある。
肌艶が良くなって頬に赤みが差し、瞳がキラキラ…物騒な色合いのマントやら鎧を脱げば王子様みたいになりそうだ。
「おまえ、名前は?」
「ヨッシーです。」
「そうか、ヨッシー。おまえの能力を高く評価する。
よって、おまえをこの旅に連れていくことに決めた。」
「え?」
「ウ◯チを操りし者ヨッシー、これより我が"宵の黒"軍団が貰い受けた!」
いやいやいや、カッコよく言ってもダメだろ!
ワタシは何のことやら理解できずに、助けを求めるべくアレクセイの方を見る。
アレクセイは、ただただ「あーーあ」という顔をしていた…
つまり
これは断れない決定事項なのだろう…
ワタシは、よりにもよって"宵の黒"と戦場に行かねばならんのだ…
大好きなこの町を離れて…(ぶっちゃけるとそれほどまだ愛着は湧いてなかったけど、せっかく場所や人に慣れてきていたので悲しい)
いやね、イケメンにモテモテの異世界転生ならいいんです、どこにだって行きますがな。
もしくは俺強えぇぇ、でも、錬金できます系でも悪役令嬢系いいですけど。(タグに入れておこうかしら)
ウ◯チ系で行きたくなぁぁいーーーーーーーーーーーーー!!!
流石に同情したのか、アレクセイは
「あの、ご所望されるのは仕方ないですけど、あまり危ないところに行くのでしたら、その時はこの子は返してもらえないかしら?
ウチの奴隷ですし、ウ◯チ職人としてもコックさんとしても重宝してるんです。」
と言ってくれた。
「命の保証は出来ない」
「じゃあ僕がついていくよ」
そうイケメン発言したのはサンダーダー先輩!
嬉しいけど先輩がついてきての役に立つのかしら!
「それなら安心ね」
アレクセイがホッとしている。
それなら安心なわけないと思うんですけど!!
「よし、予定より早いが、明日ここを発つ。
皆、用意をしておけ」
なんだかよくわからないうちに、ワタシは明日から"宵の黒"のウ◯チ係として旅に出ることになったのであった。