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その13・だだんだんだだん




だだんだんだだん


だだんだんだだん



てぇれれー


頭の中に、どっかで聞いたことがあるような映画の音楽が流れてくる。


曇天の雲、生温い風、


“宵の黒”軍団はまさに映画の冒頭シーンのようなカンジでやってきた。


町は静まりかえっている…わざとらしく通りのマルシェが数店、店主が青白い顔になりながら営業しているだけだ。


“宵の黒”の戦士たちはその名の通り、黒いマントをたなびかせて町に入ってきた。


(ちなみにワタシは店の半地下の台所からこそっと見ている)


総勢20人程度。

いや、思ったより少ないかも。


「町の人たちが一斉に襲いかかったら、

ワンチャン勝てるんじゃない?」


ワタシは極力小さな声でサンダーダー先輩に言った。


「まじバカねーアンタ。

アイツらの背中の剣、見てみなよ。」


「剣?」


彼らをよく見ると黒いマントの中に、背丈ほどある長〜い大きな剣をそれぞれ背負っている。


「アイツらは一人一人がとんでもなく強い剣士なの。

少数精鋭ってヤツ?


戦士を育てるための国に生まれて、大陸で1番と言われる刀鍛冶の剣をオーダーメイドで仕上げて、剣と共に生きていくの。


そうね、この町のヘナチョコたちなんて、

2人ぐらいで全滅させられるわよ。」


「ふ、2人…」


ぶるっと身震いした。


小さい町とはいえ、数えた事はないけど千人以上はいるはずだ。


勘弁して欲しい…戦争とは無縁の時代に生まれ、ぬくぬくと育ち、ゆるゆる働いていたアラサー女(新婚)なのだ。

この状況はキツい。


「あ、アレがリーダーよ」


サンダーダー先輩が、額を押さえながら言った。

何かと思ったがすぐに分かった。


額に大きな傷がある、一際目立つ男が列の中程にいたのだ。


金色の立髪のような長い髪がヒラヒラ揺れる、

顔はイケメンっぽい男。

黒光りする胸当てをつけている。


背中の剣の柄も金色で、光の加減で眩しく瞳に刺さって来た。


「アイツらは、まずこのお宿に来るわ。心して。

ご機嫌を損ねないようにせいぜい、美味しい料理を作ってやるのね」


猫はいいなぁ、と喉元まで出かかった。


美味しいもの(例のスパイス入り)を作って、早く眠りこけてもらわねば。


ワタシはメニューを決めているコックさんたちの元に走った。



ザザッ


20人の男たちが「ピンクのお宿」に入ってくる。


「あーら、オニィさんたちぃ、いらっしゃーい!」


宿の主人アレクセイが、わざとらしく甲高い声でお出迎え。


「酒を」

先頭の戦士が言った。


「お酒〜!お嬢さん方、皆様にお酒をたーくさんお運びしてぇぇ」 


「はぁーい」


ピンクの女の子たちは総出で給仕する。


顔は笑顔だが、お酒を持つ手がカタカタ震えていて可哀想…

「や、やっぱりワタシも給仕します!

女の子たちが頑張ってるのに、自分だけ安全な台所にいるなんて出来ません!」


「やめな!」


先輩に強く止められた。ワタシのことをそんなに心配して…


「アンタが行っても、誰も喜ばないでしょ!」


そりゃそうだが。まあね。


ワタシはとにかく濃いめの味にスパイスをモリモリ入れ、

少しでも早く女の子たちを解放してあげられるように頑張ることにした。


途中、

ジャガイモが足りなくなり、ワタシは外にある樽まで取りに行った。


この世界にはないらしいコロッケがえらく好評で、ワタシはコロッケ係に任命されているのだ。


ザルを忘れたのでとにかく持てるだけジャガイモを持つ…と、案の定一つ二つと、抱えた腕の中からジャガイモが転がり落ちた。


「あー」


一つを追いかける。


ジャガイモころころ…


その先に、靴のつま先。


「ん?」


視線を上げると、


そこには、額の傷。


“宵の黒”のリーダーが立っていた…!!







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