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その12・秘密のスパイス



アレクセイはピンクな見かけとは違い結構頭が良いのか、

その日のうちに町中に“宵の黒”軍団がやって来るという情報を流した。


どうも「カシラ組合」という、各一族の代表の組合があるらしく(だいたいオッサンの集まり)、その人たちにことの次第を説明、

そして各々が持ち帰って対策をするといった具合だ。


「大丈夫そ?」

一仕事終えたばかりのアレクセイにお茶を出しながら聞いた。


「あー、ありがとう。やだ何これ、超美味しいんですけど!」


アレクセイはお茶を一口飲んで奇声を上げた。


彼がいつもの感じになってことにワタシはいささかホッとしながら…(シリアス苦手…)


「これ、アップルティーだよ。

紅茶にリンゴの皮を入れたヤツ。気に入って?」


「もちのロンよー!好き好きこーゆーの!

やだやだおかわり〜」


ワタシはハイハイと2杯目を継ぎ足した。


猫のサンダーダー先輩もテーブルの上にいたので、

アップルティーにミルクを継ぎ足してお皿に入れ、勧めてみる。


「美味しいにゃー!」

サンダーダー先輩は猫みたいな(?)喋り方をした。ヒゲがピンの伸びて面白い。


「ま、みんなに伝えたからそれぞれなんとかするでしょ。ふぅ、事前に知れて良かったわ」


「みんなどこかに避難するんですか?」

ワタシの分のお茶はアレクセイの三杯目と、先輩の二杯目に消えていく。


「避難する人もいるけどね。

小さい子や年頃の娘さんとかだけだけど。


みんないなくなっちゃうと、怒ったヤツらに町を滅茶苦茶にされるのよ。

ある町では丸ごと焼き討ちにされたとか…」


「うわ、酷い…」


「だから、ほどほどに襲われるのよ。変な言い方だけど。

奴らを食わせるだけの食料と、女をあてがってやらないと、もっと酷い目に遭うってわけ。

街を捨てて逃げるって手もあるけど、行くあても仕事もないしね。


結局諦めて、軍団が通り過ぎるまで辛抱するしかないの。はぁぁ〜」


そんなこともあるのかー、とワタシは重い気分になった。

今まで呑気にウ○チを操って悦に入っていた自分を深く反省する。

やっぱり結構甘くない世界なのだ。


「あ、で、この宿はどうするんですか⁈」


「もちろん営業を続けるわよぉ…こういうところがないと、もっと悲惨なことになってね。

女の子たちの安全には充分気をつけて…で、そうそう、まあちょっとした作戦もあるんだけどね。」


「作戦?」

面白そうな話にワタシは食いついた。


「男って、まずは腹ごしらえするでしょ?

だから料理に、眠くなるスパイスと、ちょっとした幻覚を引き起こすスパイスを適度に混ぜ込むの。

コレはこの町の影の特産品でね…」


「おいアレクセイ、言っていいのかソイツに。」

先輩は顔をクシャッとさせてアレクセイを見た。


「んー、まあいいのよこの子なら。ボーッとしてるし、そもそもこの世界の子じゃないしね。


いい、スパイスの事は絶対口外しちゃダメよ。


この町の洞窟だけに生える小さな木があって、その実が例のスパイスになるの。


ほんっとに珍しいものだから、町で管理して、こういう一大事に少しずつ使ってるわ。」


「ね、どんな幻覚を見るの⁈」


アレクセイは妖艶に微笑んでウィンクした。


「ふふ、内緒♡」


どうやらかなり色っぽい幻覚らしい。



そんなこんなで、数日が経ち、ついに“宵の黒”軍団が町のすぐそばまで来たという伝達が入ってきてしまった…!


ちなみにワタシは、台所から極力出てこないように言い渡された上、

汚ったないキャスケットを男の子みたいにかぶせられ、服もデブのコックさんのブカブカでボロボロのお下がりを着せられた。


(こんなことをしても、ワタシは襲われない…)

なにせ、ピンクのお宿の女の子たちは、

みんなモデル体型で顔が可愛い&セクシーなのだ。


その点ではワタシは安心してもいい。


まあでも、そんな怖い軍団と目を合わせたら気絶する自信があったので、

ワタシはサンダーダー先輩と大人しく台所に篭っていた。





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