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W・O・8 "業を絶つ者"  作者: ねるすけ
6/8

新設、008!file5

ようやく捜査パートへ。応援、ありがとうございます。

「入谷探偵事務所……」


町中でチラシを見たことがある探偵事務所だ。正直、今時探偵行なんて儲かるのだろうか。彼らは民事担当と警察とは領分が分かれてるので実際に仕事をしてるのなんて見たことがない。一体、どのような感じなのだろうか………。


「さて、ここで復讐代行を受け持ってるとタレコミがあった。なんでもここ一ヶ月におきた不審死、暴行の被害者の関係者がここを使っていたらしい。捜査の方法は一応聞き込みも行うが、どうせのらくら逃げられるだけだ。本命捜査は戸棚からPCから何やら証拠になりそうなものがあったら撮影、押収。シンプルでいいだろう?」


「ホントにいいんすか?この008、公に捜査出来ないって言ってるのに、捜査差押え許可書も無しの状態で公安紛いなことして。」


懸念を口に出す。さっき伶さんはまだ非公式の部隊だからこういった踏み込んでの捜査は出来ない、と言っていた。それなのに、天鷲警部は特殊部隊か何かのように踏み込む気でいるのだ。そんな私の冷ややかな視線に気付いたのかやれやれ、といった様子で天鷲警部が口を開く。納得のいく説明があるなら早くして欲しいものだ。


「お前、会ったときから思っていたが、素直というか純朴というか無知というか……。」

「ま、要するに。公な捜査は出来ないって伶さんが言ったのはだな、つまるところ」


「|公では出来ないような方法を取って調べろ《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》ってことなのさ。」


「……違法行為をしてもOKで、何とか犯人をあぶり出せと?そんなことが警察組織内で罷り通ると?」


「そういうことだ。いった通り、008はお上が作った特殊部隊。使い捨ての飛び道具。多少手荒な手法を使っても、自分達に害を及ぼす犯人を刺すことの出来ればそれでよし。まあ、ある程度の不祥事ならあっちも必要経費ってことで握り潰してくれるさ」


「………。」

司法権力がここまで腐っていたとは。かつての理想が、夢が崩れ落ちていく音が聞こえたような気がした。今日一日で何度この絶望感を感じれば良いのか。


「ほれ、分かったなら行くぞ。情報筋は確かだ、二人も頭数がいれば直ぐに見つかる。」


「……あー。なんかムシャクシャする!!」

正直、奥多摩の交番に帰してほしかった。何故私は司法に息づいた小説の悪党の手先のようなことをしなければならないんだろう。そしてその事実を容認し、仕事として割りきってしまってる天鷲警部にもこれ迄にないほどの苛立ちを感じていた。憂鬱のまま、彼女は彼の後を追った。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「それで、警察の方が我々に何かご用で?」

事務所へはいると、とりあえず高級そうなソファへ案内された。ローポニーテールのお淑やかな秘書と思わしき女性の淹れてくれたお茶の湯気が立ち上る。テーブルに先に置いてあったカップ2つをいそいそと片付けると彼女は下がっていった。相当いい茶葉を使ってるらしく、品のある香りに思わず頬が緩んだ。目の前の彼はどうでしょうとばかりに少し得意気である。このイケメンは入谷天馬(いりやてんま)。この探偵事務所の社長さんらしい。

爽やかながら、どこか険のある問いかけに天鷲警部は開口一番にこう切り出した。


「単刀直入に聞く、あんたら『復讐代行業』を知ってるだろ?というかお宅でやってんだろ?」

いくらなんでもストレート過ぎる。はい、そうですなんて答えてくれる筈もないだろうが相手はどのように出てくるのか。


「…………。例えば浮気の証拠を掴んだら、私たちは依頼人にこれを開示し、今後についてどうするか、アフターサービスとしてお話をする機会があります。その中で、復讐を望まれる方は確かに居ます。」


「が、それはあくまで法の範囲内。相手側の会社に証拠を持っていき話を通す、離婚をちらつかせて此方に有利な条件を飲ませる。ね?私たちの行動に何か問題でもありますか?」


穏やかな口調で諭すように語る。目は泳いでない、呼吸も変わってない、よって嘘はついてない。だが、天鷲警部の追撃は止まらない。


「話をすり替えんなよ。そっちは好きにやってくれて構わない。俺達が今回聞きたいのは法に外れた方についてだ。お宅らのとこを使った奴等の関係者が一ヶ月で2名が不審死、3名が行方不明に。一名重傷。こんな偶然あり得るわけ無いだろう。実行犯かどうかはともかくアンタらが関与してないは無理がある。」


被害者の写真とこの探偵事務所に依頼した人物の関係性を綺麗にまとめた資料を叩きつける。さっきまでいそいそと作っていたのはこれだろう。


「では、証拠は?我々がその、復讐代行と関係していると明らかにできるもの、それはあってしかるべきでしょう。我々がそれを請け負ったという帳簿でも目撃者の写真でも指紋でもなんなら自白ですら構わない。出してみてくださいよ。」


「確かに、それはまだないな。」


「では、今から事務所内を漁るつもりで?」

私に目を向ける。天鷲警部に呆れたのかお前が答えろ、ということだろう。仕方ない、天鷲警部に任せるとホントにグレーゾーンの捜査を始めかねない。ここは自分が穏便にビシッと決めねば!


「まあ………そうなりますね。」

「捜査差押え許可書も無しに?」

「だから任意になりますが……。」

「ではお帰りください。」

「……何か見られたくないものでも?」

「ありますとも、ここには個人情報や人の触れられたくない傷が山ほど眠ってます。正当な理由がない限りお見せするなんてとんでもない。我々は信頼第一でやってるのですから。」


見事に言い負かされた。ぐうの音も出ない正論である。確かに怪しいことこの上ないが、こう言われてしまえばなんとも言い返せない。

「ったく仕方ないな。」

天鷲警部がやれやれと立ち上がる。……マズい、本気で許可書も無しに差押えの類いを始めるつもりだろうか。

「おや?何かするおつもりで?こちら、物品は何一つお見せすることはありませんよ。強引にしようと言うなら、こちらにも考えが……………。」


「いや、そのつもりはない。そうするつもりも無くは無かったが。」


何と、天鷲警部は大人しく引き下がった。出会ってまだ数時間とたってないが、そんな殊勝なことができる人物には思えなかったが。どういう心変わりなのか。などと考えてた私を戦慄させる答えを返す。


「証拠品の押収などは今はしない。その代わり、そちらに隠れてる、この場で最も不釣り合いな奴に話を聞かせてもらう。」


天鷲警部が指差した方向。そこには作業用のデスクが配置されていた。何を、と誰の口からか出かかった瞬間、ガツン!!!と小気味の良い音を事務所内に響かせる。どうやら、驚いて頭をぶつけたらしい。つまりビンゴ。


「くうう……」

そして隠れてた者が出てくる。その場で最も不釣り合いな(・・・・・・)近隣の学校の学生服を着た少女だった。

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