新設、008!file4
かなり遅れました、みんなレベル高いなあ。僕も頑張らないとと思う次第です。
話半ばで無理やり連れ出された私は早口で作戦らしきことを説明する天鷲警部に引っ張られ、調査の現場へ向かうこととなった。
「で、警部。早急に質問に解答して欲しいんすけど。」
「それが新入りの口調と態度か?」
「うるさいです、誰だってこうなりますよ。んで、答えてくれるんです?答えないなら何も喋らないでください、ムカつくので。」
「……。まあ、現場までに時間はある。それまでなら008のことも、話そう。たしか伶さんと話していたのは008が何故本部から離れた薄暗いビルの一室なんかで活動をしてるか、というかことだったか。」
こくり、と頷く。他に聞くべきことはたくさんあるはずだがとりあえず一つずつでも解決していかないとストレスで寝れない夜が続いてしまいそうだ。警察というのは体が資本だというのに。……そう思った矢先、彼の口にした事実に目眩をおこしてしまった。
「警察組織内に俺達の敵が既に根深く潜伏してる可能性が最近浮上してきた。よって他の課と行動を共にするのは情報の漏洩についてつながるため、わざわざ不便な所に本部を置いてるわけだ。あそこに出入りが可能なのは基本俺達だけ。」
「へ?」
一組織が、日本の司法の中枢を乗っ取り始めてる?そんな三文小説のスパイのようなことがホントにあるのだろうか。しかし、そんな理由でも無ければこんな課が新設されるわけがない。
「ま、ろくでもない理由だわな。疑わなければならないのが内側にいるなんて。」
「…………。」
ここで黙りこくってはいけない。いけないのだが……。やはり、とんでもない組織だったのだ、ここは。日本の司法の衰退は誰もが実感をしているところだが、まさか一組織の手が伸びているような惨状であったとは。そんなことは露知らず、ペラペラと警部は続ける。意外と強引である。まさに昭和の刑事がドラマから出てきたようだ。
「そんな訳で、警視庁のお上から信頼のおあつ〜い伶さん選りすぐりのメンバーを集めて我らが008の完成、というわけだ。」
「へえ。そんなエリートの面子になんで私が選ばれたんでしょうね。」
これも、伶さんに聞きそびれたことである。警察の在り方は隔世之感、そして狂乱怒濤の世間でそういった組織が出てくるのはまああり得ないわけでもない。が、そんな警察暗部の秘密組織のような所に新人である自分を置くのはどのような意図があってか。決して有耶無耶にしてはいけないところだ。
「それは聞かされてないな。寧ろ俺も聞きたかった所だ。」
天鷲警部の口調が少しだけ変わる。さっきまでベラベラとしゃべってたオヤジとは別人のような雰囲気を醸し出す。
「なあ、お前こそ何か知らないのか。成績が良かったとか、復讐代行の類いに因縁があるとか。何でも良い、話せ。」
……今、一つ理解した。天鷲警部。かつて一課にて数多の事件を解決した刑事の中の刑事。彼の『天狗道事件』を阻止した大英雄。そして私の憧れだった一人。この男の目からは何者も逃れ出でることはできない。如何なる魑魅魍魎、魔人化生の類いであれ白日の下に暴き、追い詰め、息の根を止める。この男が英雄になったのは一重にこのためだ。私の一挙一動、呼吸から産毛にいたるまで見透してくる。今、私は信頼に値する人物なのか値踏みされている。やましいことなど何もないし嘘をつくつもりもない。しかし、流石に伝説のそれといざ対峙すると震えが止まらない。返答を間違ったらこの鷲はすぐに強襲に移るだろう。
「私は…………」
しかし、運が良かったのか、悪かったのか。現場へ到着したようだ。
「まあ、続きは後だ。これからの捜査でイケる口かどうか、見極めさせて貰うぞ、新人」
profile
名前:天鷲 恢
性別:男性
年齢:38
所属:捜査一課→対復讐代行サービス課008
階級:警部
ユイナ曰く、昭和の刑事。熱血漢であるが頭はキレる。捜査一課として常に前線へと立ち、『天狗道事件』をはじめとした難事件をいくつも解決しているため警視庁の英雄であり、彼を慕う人間も数多くいる。ユイナのハードボイルドへの憧れは彼の伝説によって培われた。
モデルはドラマ、あぶない刑事の鷹山 敏樹