新設、008!file3
のんびりとこそこそとやってます。
「………………。」
「では、先に話した打ち合わせ通りにいくぞ。」
「………………。」
「なんだ、緊張してんのか。初捜査は大体皆そんな感じだが、すぐ慣れるさ。別に俺たちが相手にするのはヤクザでもテロリストでも無いんだ、話を聞くだけ聞いて………」
「この昭和パワハラ脳!全部にツッコミどころが在りすぎて処理しきれてないだけです!少しだけ黙って貰えますかねえ!?」
おかしい。なぜこうなったのか。私の隣で運転をしているのは天鷲警部。 今年38となるベテレラン刑事にして、私のバディとなる人である。なぜ彼と一緒にいるのか。そもそもなぜ課の設立初日に初捜査をし始めることになったのか。
──少し、時間を遡る
怜さんが案内してくれた部屋には異様な空気が漂っていた。多分ここが自分達のオフィスとなるであろう部家は何故か暗い。
しかも、三人の男が既に仕事とおぼしきものに取り組んでいる。パソコンで何かしらの作業をしている者、電話を取る者、休憩しているのか缶コーヒーを手元で遊ばせている者。明らかにどこか別の会社……しかもブラック企業の一室のような風体であった。
「もしもし、伶さん?伶警視?どういうことですか、これ。今日新設された課の雰囲気じゃないですよこれ。何で皆既に仕事に取りかかってるんですか………」
「あー……。そうよね、そうなるわね。」
目を反らされた。ただでさえ無機質で感情を欠落させたような顔でそんなことをされると、アニメの中のギャグのように感じてしまう。
「まあでも、彼らが誰か分かったらそこは納得して貰えると思うし、課の紹介と一緒に教えるからまずはそこのソファに座ってちょうだい。飲みたいものはある?」
「ソフトドリンクならなんでも。」
「じゃ、オレンジジュースでも持ってくるわね。ここのドリンクバーはこれから好きに使ってちょうだい。」
「え、ちょ」
………行ってしまった。何なのだここは。先ほどから男どもは見向きもしないし。しかも他の部署からやたらと離れており、人の目の届かない日陰のようなところだ。早く状況を説明してほしい。
「お待たせ、それじゃ飲みながらでも良いから聞いてちょうだい。」
伶警視、自分だけ珈琲を持ってきやがった。いや、指定しなかった自分が悪いのだが、子供扱いされてるのかと思うと何やら癪である。
「それじゃ、少しずつ話していくわね。」
珈琲で口を少し濡らすと彼女は喋り始めた。こんな堅苦しいスーツじゃなくて、きちんとお洒落すればどれほど艶っぽくなるのだろうか。なんて思いながらも話に耳を傾ける。ここで聞き逃したらロクな子とにはならいことはもう理解できていた。
「じゃ、私たちの課……チームの仕事について。杉浦から殆ど話は聞いてると思うけど、復讐代行サービスの取締り。機捜や一課のサポートに入って事件の捜査をしたり、公安と協力して反社会的組織で行ってる復讐代行を検挙したり。まあ、殆ど捜査の裏方業務ね。」
「わりと普通なんですね。」
「そうなのよ。というのも、正式に認められた部署でもなくて。あまり大っぴらなことは出来ない、というのもあるわ。」
「でしょうね………」
薄々気付いていた。こんな場所、この人数の課など聞いたこともない。本来驚くべきことだろうが、まあ想像の範囲は決して越えてた事態ではない。だが一応上司となる人だから我慢してきたがもう限界である。オレンジジュースで喉を潤しながら嫌みったらしく返してやることにした。
「だからわざわざ署から離れて情報伝達が不便なこのビルで活動してるんですね。」
中々良い嫌味が出た。洋画の吹き替えであったらきっと観衆から笑いを取れた場面だ。もっとも聞いている者など、伶警視と三人のロボットのような男どもだけだ。伶警視は機微の薄い顔に笑みのようなものを浮かべると
「半分は正解」
「え?」
何やら意味ありげな事を言い出した。
「ちょっと、半分は正解ってどういうことですか。何か理由があるんですか。」
「ええ。この課の新設に関わる重大なことがね。」
それはなんだ、と伶警視に詰め寄り聞こうとした瞬間の出来事。
「すみません、伶さん。早急に調べたいことが出来たのでこいつ借りてきます」
さっきまでパソコンと見つめあっていた男の一人に掴まれ、部屋をでていくこととなった。
天鷲 恢。冒頭で話した私のバディ。私たちはここから始まる。
天鷲警部については次のお話にて




