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第四十四話 山中にて

 ラングドッグ村からソルレイス村までの道を、エルロイとユイ、そしてベアトリスとガリエラのペアは歩調を合わせて進んでいた。

 今回は馬車での交易路を探しながらの道筋である。

 いつまでも影を走らせたり空を飛んでばかりはいられないのだ。

 ウロボロスラントが領地として機能するためには、それぞれの村の有機的な連携が欠かせない。


「この先にも光冠草の群生地があるんですよ」

「そりゃ確保しておくべきだな」


 ベアトリスは荒野の魔女として、何度も光冠草の舞踏を求め彷徨ってきた。

 この近辺もすでに訪れたことがあるのだという。


「山があるのは仕方ないにしても……これじゃ馬車が通れんな」


 標高があがるにつれて、道はごろごろとした岩場を通り抜けるような形になっていく。

 もともと人が通らないのだから道などはなく、ただ通りやすい場所を通っているにすぎないのだから当然であろう。

 将来的にトルケルへ騎兵をもたせたいエルロイとしては、放置してはおけない問題である。

 だが大規模土木工事をしているような余裕は今のウロボロスラントにはない。


「…………つぶすか」

「ある程度は影で飲みこみますよ?」

「いったい何の話をしているんだ…………?」


 エルロイとユイの会話にガリエラが困ったように尋ねた。

 自分と会話の尺度が明らかに異なっている。そんな嫌な予感がしたのである。


「岩がなければ多少の高低差は構わないだろう?」

「できれば二メートル以上は欲しいですね」

「だから何の話だ?」


 不思議そうにエルロイとユイはガリエラを見つめ返した。


「道を造る話だけど?」

「ちょっと試してみましょうか」


 ユイの影が蠢いたかと思うと道を塞いでいた岩が、すぱっと切り裂かれたように影に飲みこまれた。


「う~~ん、やっぱり加減が難しいですね」

「どれどれ? 見たところ火山岩のようだが……斜長石に輝石……安山岩か」


 今度はエルロイが岩の解析を始めたかと思うと、次々に岩を分解し始めた。

 砂状に分解された岩が地面の隙間を埋めることで、見た目にもわかりやすい道のようなものが出現する。


「わぁ、やっぱりご主人様の魔法は便利ですね!」

「便利とか、そういう問題じゃないと思うが」


 思ったより自分が常識人であったことにショックを受けるガリエラであった。

 かつてガリエラも傭兵として幾多の戦場を疾駆し、死にたがりの褐色などと綽名された。

 コーネリアに命を救われてからは落ちついたものの、自分がまともな人間であると考えたことは一度もない。

 しかしこの二人ほどイカれてはいないと思う。


「私はああいう細かい操作が苦手なのよね」

 頭を掻きながらベアトリスは苦笑する。

「細かくなければできると言っている気がするが?」

破壊光線イブセマスジーでなぎ払うくらいなら、なんとか……」

 そう、あれは古代魔法でも最強と言われる……

「十分あんたもあっち側の住人だよ」

 世のなかには隠れた化け物がいるものだ。

 呆れるガリエラが視線を移すと、まるで子供が砂場で遊ぶかのような気楽さで道が開けていく。


「よいさー」

「ほいさー」

「歳がばれるのではないですか? ユイさん」

「なんのことかあっしにはさっぱり」


 もっとも難所と考えられたアルラト山からティナト山のルートは、わずか一日で開通してしまったのだった。



 ああああ、今日も短くてすいません!

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― 新着の感想 ―
[一言] 「イブセマスジー」 懐かしい! 意外と分かる人多いですね。 分かる人の年齢層がバレますね。
[一言] すさまじく懐かしい技名がwww
[良い点] 楽しく読ませて頂いております [気になる点] イブセマスジーはセブンフォートレスオリジナルなので破壊光線のルビには不味くないですか?
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