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「はあ、はあ、はあ……!! はあ、はあ……!!」


 ヴェールの森、深部。

 青い髪をした男が、息も絶え絶えに駆け抜ける。


 木々を身体で押しのけ、死に物狂いで前へ進む。


 右腕は血にまみれだらんとぶら下がっている。

 その腕を抱えるようにしながら、男は後ろをチラチラと確認しながら必死の形相で前へ前へと走る。


「ち……くしょう……!! なんだありゃあ!! 聞いて……ねぇ……!!」


 A級冒険者、ジャック・ローズ。

 簡単な任務のはずだった。


 国から依頼されたヴェールの森の生態調査。


 リーダーはモンスター研究の権威でもあるA級冒険者だった。いつもの依頼。ジャックは長年彼とタッグを組んで冒険者活動をしていた。


 しかし、それも数分前に終わった。


 リーダーは突如"《《謎の霧》》"に飲み込まれ、そして死んだ。


 同行した他のB級冒険者たちも、同様に消えて行った。


 冒険者をやってきてあんなものは見た事がなかった。ジャックの手のひらは震え、歯はがちがちと音を鳴らす。


 モンスターかどうかさえ分かる間もなく、ジャックを除く十三名の冒険者は跡形もなく消えた。


 一人逃げのびたジャックは、ただひたすらに"ヴェールの森"の出口を目指し走る。


 魔力はとうに尽きていた。

 そもそもジャックは体力に自信のある方ではない。


 しかし、"死"という恐怖がジャックの脚を突き動かしていた。


「ありえねえ……!! ありえねえありえねえありえねえ!! はぁはぁはぁ!! ジャック様だぞ……! A級冒険者、ジャック! その俺が……こんな醜態晒して……――」


 ――――ゴォォ。


「――――」


 背後から聞こえる、不気味な音。

 森が喉を鳴らしたかのような、低く響く音。


 ――《《あれだ》》。


 ジャックの額に汗がにじみ出る。

 体力の限界で出た汗ではなく、恐怖と混乱で噴きだした冷や汗。


 だが、止まることは出来ない。

 ここで止まれば、確実に死ぬ。それだけはわかっていた。


「くっそおおおお!! こんなところで死ねるかよおおお!!」


 最後の力を振り絞り、全力で腕を振る。


 血が流れ既に動かなかった右腕さえ、強引にふり、血を振りまきながら走る。


 しかし、その振った手が霧に触れる。


「――――ッ!」


 まずは右腕、そして左足。

 右足、左腕。


 身体が徐々に迫りくる"霧"に飲まれ、そして――――。


「ぐっ……あぁ……!!」


 ドプン。


 っとまるで水に落ちていくように、ジャックは霧に沈んでいく。


 その場には、何も残っていない。


 ヴェールの森、最奥。

 A級冒険者二人を擁した実力派の調査隊は、黒い謎の"霧"によって全滅した。


 その知らせが王都に届くのは、まだ先の話だ。

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