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とある魔女の密会

 スカルディア王国北部に連なる山脈、リーフィエ山脈。


 年中雪が降り続けるこの地域は、スカルディア王国と北のカーディス帝国の国境となっている。


 ただでさえ年中の雪のせいで簡単に山越えをすることも出来ない上に、この山脈にはとある竜が住み着いていた。


 その名を"白き竜"。


 吹雪を纏い、山脈を飛び回るSS級の災厄。カテゴライズ上ではSS級ではあるが、その力は人間の力を遥かに超えていた。


 遥か昔には両国の討伐隊が何度か組まれ、"白き竜"に戦いを挑んだが、そのすべてが全滅という結果に終わった。何人もの冒険者たちも戦いを挑んだが、"白き竜"を倒すことは出来なかった。


 ただ、悪いことばかりではない。

 "白き竜"という災厄が居るお陰で、王国と帝国はその山脈に阻まれ、長い間争うこともなく友好な関係を築いていた。


 何故だか"白き竜"は縄張りを離れることは無く山脈の外に害は無いため、今では積極的に"白き竜"を討伐するという者は現れず、リーフィエ山脈も麓の方を除けば滅多に立ち入る者は居なかった。



 ――そんな山脈の中腹にある、とある場所。


「吹雪いてるわね、相変わらず」


 スタイル抜群の金髪ロングの美女が、フードを外し、雪を払いながらそう呟く。

 切れ長な美しい瞳で今しがた入ってきた後方の出口を眺め、身体を震わせる。


「それ、氷の魔女が言うセリフ?」


 奥から、長い黒髪のこれまた美女が、ゆったりとした黒いセクシーなローブに身を包み現れる。


「あら、私だって自分が出した冷気以外は寒いって感じるわよ」

「ふふ、あなたに寒いと感じる心があったとは驚きだわ」

「心じゃなくて肌の話をしているんだけど、私は。相変わらず話聞かないわね」


 氷の魔女は呆れたように肩を竦める。


「寒いと思わなければ寒くないのよ。心の問題よ。どっちも一緒」

「本当脳筋魔女ね……。まあいいわ。それで、他に誰が来てるかしら」

「ディアドラとエスメラルダはもう着いてるわ。他はまだよ」

「へえ、エスメラルダはともかく、ディアドラが来てるなんて珍しいわね。シャレアン王国の方はいいのかしら」

「たまには人が恋しくなるんでしょ、あの娘意外と寂しがり屋だから」


 そう言って黒髪の女性は笑みを浮かべる。


「まあいいわ。さっさと合流しましょ」

「行きましょうか」


 氷の魔女と黒髪の魔女は薄暗い、細い通路を並んで歩く。


「そう言えば、あなたのところの秘蔵っ子はどうなったのかしら?」

「あなたに言う必要はないでしょ?」

「そうだけれど、あなたが熱心に育てる子なんて珍しいじゃない。余程見どころがある子だったのね」

「……そうね。あの子は圧倒的な才能を持って生まれた。この私を遥かに上回る程にね」


 その言葉に、黒髪の魔女は怪訝な顔をする。


「ただでさえ私達の中でも序列の高いあなたがそんなことを言うなんて……やっぱり余程その子の力をかってるのね」

「じゃなきゃ、ここまで私が入れ込むわけないでしょ」

「怖い怖い。何を企んでいるのかしら?」


 その質問に氷の魔女は薄っすらと笑みを浮かべる。


「ふふ、あなたに言う必要はないわ。……今はまだね」

「ふーん……」


 しばらく歩くと、正面に大きな鉄の扉が現れる。

 ギギギっと重い音を響かせ、ゆっくりと扉が開く。


 中は広く、中央には巨大な円卓が置かれてた。

 その席には、二人の人物が既に座っている。


「おやおや、ヴィオラが本当に迎えに行くとは。仲が良いね、二人とも」

「止めてよエスメラルダ。この黒髪魔女と仲が良いとか吐き気がするわ」

「つれないねえ、シェーラは。いいじゃない、昔は良く一緒にいたでしょ?」

「昔の話よ」


 二人は円卓に座り、残りのメンバーを待つ。

 来るものを拒むリーフィエ山脈で行われる魔女たちによる密会。

 

 外の吹雪は止むことは無く、延々と降り続いている。

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