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7 インブリー領への招待状

「僕、インブリー領に行ってくるよ。」



セルキーが、ぽてっとオリヴィアの肩から降りて、朝はスクランブルエッグより目玉焼きがいいなっていうような軽さで言った。


な、なに?何領って言った?オリヴィアはもう一度セルキーに問う。



「インブリー領だよ。調べたいことがあるんだ。」



セルキー曰く、近々4竜家の会議が開かれるので、それまでに譜に関わる情報を1つでも多く手に入れておきたいのだそうだ。


もともと、譜は4竜家それぞれが一篇ずつ管理していて、現央竜を輩した北家、西の水脈を治める西家からは現央竜の意向が示されてからほどなく東家に授受された。



ところが、南家からのみ、何の音沙汰もない。



南竜王は4竜家の会議にも、もうずいぶん長く欠席を決め込んでいるらしい。そのため以前より、大病を患っているとも、異心があるとも様々な噂があったのだそう。


セルキーとオリヴィアが出会ったのも、西家の譜を東家に移送する際のことだと教えてくれた。



南竜王は央竜の座を狙っているのではないか。



それが、今回のセルキー襲撃事件で強く思われ始めた。



「なんでインブリー領なの?」


オリヴィアは何気なく問う。


「南家のたくさんある噂の中の一つに、実は南竜王様は水中宮殿にいないのではないかって噂があるんだ。」


セルキーは続ける。


「譜は各家の王が管理している。その噂が本当なら南家に再三にわたる通告をしても反応がないのも頷ける。だって譜を持つ王がいないんだもの。ーじゃあ、王はどこにいるのか。」


「まさか、それがインブリー領なの?」


「そこまではわからない。南竜王に異心ありという噂の方が今は東家の家臣の中でも強く思われているし、それを別に調べているものもいる。ただ、竜族と思われる強い気がインブリー領の方向に残っているのを感じるんだ。」


そこまでセルキーが口にした時、部屋のドア越しに声がした。


「おーいお嬢!入っていいか?」




この流れ、本当に不本意なんだけど、自分の撒いた種だから仕方ないわね・・。


オリヴィアはハアと溜息をつく。


さて、今オリヴィアは何処にいるのか。


答えはインブリー領へ向かう馬車の中だ。

肩にセルキー、向かい側にレオ。


あれから部屋に入ってきたレオはアーサーからの手紙を携えていた。


手紙の内容は、アーサーの商会へのご招待、というか、ポーション製造販売の工房の指導のお願いだった。


オリヴィアに相談に来て提案を受けてから、即刻アーサーは商会立ち上げへと動いた。商会も工房も新しく建てるのではなく、条件に合う中古物件を選び、離婚前にオリヴィアのポーション販売に携わっていた者の中から特に優秀な人材を数名引き抜いてきたと手紙には書いてあった。実を取る早い仕事が何ともアーサーらしい。


レオは職人をこちらに呼んで、現地に行くのは断っても良いんじゃないか?と言ってくれたけど、ポーションを濃縮液から希釈して造るため、品質を一定に保つためには現場指導が確かに必要だ。


質の悪いポーションを販売するのは、濃縮液を提供するオリヴィアのブランドにもマイナスになる。


なーんか出来過ぎてるのよね、と思いながらオリヴィアは馬車に揺られてた。




アーサーの商会に向かう馬車の中、レオが思い出したかのように口を開いた。


「お嬢はリントラムに来てから前と雰囲気が変わったな。」


唐突に言われた言葉にオリヴィアはきょとんとする。


「そうかしら?どんな風に変わった?」


「う~ん、なんて言うか昔のお嬢に戻ったな。結婚前も結婚してからも、いつも嘘くさい笑顔で鉄壁のバリア張ってたからな。ずいぶん楽そうになった。それに、結婚してた時より綺麗になった。ま、俺はお嬢が幸せなら、どんなお嬢でも良いんだけどな。」


いつも冗談ばかりのレオが、真面目な顔をして言ったので少し照れてしまった。


肩の上ではセルキーが、姫様はいつでも1番綺麗だし、竜王様に会ったからもっと綺麗なんだ、竜王様の姫様なんだぞ!と私にしか聞こえない声で、レオに向かってわいわいと言っている。聞いていて恥ずかしくなってきた。


「ありがと。私そんなに嘘くさい顔して笑ってたのかしら。」


「おう。膠で笑い顔を張り付けたみたいな顔してたぞ。お嬢にあんな顔させるヤツは駄目だってずっと思ってた。」


レオに随分心配をかけてたんだなあと改めて思う。


「そういうレオこそ、誰かいい人は出来たの?昔からモテるくせに決まった人がいなかったでしょう?」


近くにいると良くわからなくなるけど、銀髪長身でかなり整った顔立ちをしているレオに熱を上げていた女性は少なくなかった。オリヴィアの友人の中には、レオと結ばれたくて貴族籍を本気で抜けようとした令嬢もいたくらいだ。


「俺は、結婚はまだまだだなあ。なんつーか、俺の魂をかけて守りたいと思う女じゃなきゃ嫌なんだよな。」


「意外とロマンチストなのね。」


オリヴィアは初めて聞くレオの気持ちに少し驚く。一見チャラい雰囲気のレオの意外な一面を見た気がした。


「うーん、そういうのとは何か違うんだよなあ。そういや、お嬢は昔、湖の王子様と結婚するんだって騒いでたよな。」


え、何それ?オリヴィアは首を捻った。


「私、そんなこと言ってたっけ?」


「あんだけ騒いでたこと忘れちまったのか?ガキん頃、リントラムから帰ってきてから暫く言ってたのに。」


その時、セルキーが前に言っていた言葉が急に思い出された。



''姫様は自分で選んだこと忘れちゃったの?"



つきん、と何故だか胸が痛んだ。そして、それは思い出さなきゃいけない大事なことだって誰かが私の中で言っている気がした。


「お願いレオ、私が昔何を言ってたか、覚えてるだけ教えて頂戴。」


気付いたら、そうオリヴィアは言っていた。

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