4 Jack's
私の名前は、ジャック・インブリー。
この国の古くからの名門インブリー侯爵家の長男だ。
私事になるのだが、つい最近、離婚をした。
離婚をする際、友人達はみな早まるな、とか考え直せ、とかわけのわからないことを言っていたが、私はとても嬉しい。あの別れた元妻は私のことをいつも小馬鹿にしていたからウンザリしていたし、あの女の妹とは思えない美しく可愛らしく女らしいディアナという存在が私にはいるからだ。
あの女は、やれ、そんな投資はしてはいけない、やれ収入に見合った生活をすべき、やれ付き合いをする家を絞れだの女のくせに領地の経営や男の社交に口を出してくるのだ。
確かにあの女は頭が良かった。家の中の者たちを上手く手懐け、なぜだか召使いどもは次期当主の私の言うことよりあの女の言うことを聞いていた。知ったかぶりで口が上手く、精霊のギフト持ちのあの女は、社交場に出かけると、インブリー家次期当主の私を差し置いて、有力な家の者と話している。妻ならば夫にその場を譲るべきだろう。胸糞悪い。
さらに、あいつの持つギフトで作ったポーションとやらを欲しがる物好きがいて、その話になると私はあの女の話など聞きたくなかったから妻に言ってくれと言って内容は聞かなかった。
どうせあんなもの三流の粗悪品だろう。
それに、私は・・・・アイツ相手だと全く勃たないのだ、、、、
言っておくが私は不能ではない。結婚前も顔が良く品があり女にモテた私はソコソコ遊んだし、行きつけの高級娼館で女たちには、こんなの初めて、とか、まあご立派、などと言われるほどのスペシャルな男なのだ。
あれでも新婚当時は初々しく少しは可愛げがあった。
親の決めた婚約者で渋々結婚を決めた女ではあったが、結婚式の日は不覚にもあの水色の瞳と亜麻色の髪を美しいと思ってしまった。この凛と美しく賢い女が私の妻になるとは、と浅はかにも誇らしく感じてしまった。結婚式など女なら誰でも化粧や髪型でそれなりになるだろうに。
しかし、新婚初夜、あの女を抱こうとしてベッドで下着に手を掛けた時、私は猛烈な恐怖を感じて、それまで感じていた美しい初物を手折る興奮は一瞬で萎れてしまった。
それは何だか言い表し難いが、あの女の背後にとんでもない化け物がいて私を殺そうとしているかのような恐怖だ。
それから何回か、あの女を我がものにしようと試みたがいずれも・・ピクリとも反応もしなかった。
あの女は、水色の美しい目で私を見つめながら、今日は疲れているのよ、と言っていた。
まあ、私は結婚しても遊びを止める気はサラサラなかったし、結婚前からの愛人も何人かいたので何も問題はなかったが。子も愛人に産ませてあの女に育てさせれば良い。
結婚して2年目の夏、我が家に訪れたあの女の妹のディアナは、大きな琥珀色の目に美しくやわらかなウェーブの金の髪、ふっくらとした胸に細い腰、女っぽい上目遣いに甘えた言葉遣い、べったりと腕にしがみつき頼ってくる可愛らしさ、どれを取っても男の庇護欲を掻き立て奮い立たせるものだった。
そして・・夜伽のテクニックも抜群なのだ。
私が指先ひとつ動かすだけでジャック様すごーい♡と言って尊敬してくれるディアナに私はどんどんのめり込んだ。あの女が口うるさく止めた方が良いと私に言うことも、ディアナは肯定してくれ、あのお姉様はおかしいわ、と言ってくれる。やはりおかしいのはあの女なのだと確信した。
このディアナこそ私の運命の女神、彼女がいれば私は男らしく素晴らしい能力を今度こそ発揮できる。
あの女と同じ家だし、姉と妹を挿げ替えても何も問題ないだろう。我が家の方が家格が上なのだしな。
ディアナと結婚すれば、私の運命は薔薇色だ!
素晴らしい男の能力を発揮させないのは全て女の責任なのだ!