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15 女商人

地上に戻ったセルキーは迦楼羅族のことを調べると意気込んでいた。


南竜王のことは、北竜王の話をいったん待つため、地上で出来ることは今のところない。


「迦楼羅族ってどこに住んでるの?」


オリヴィアはふとした疑問をセルキーに尋ねる。迦楼羅族も竜族のようにどこかに宮殿でもあるんだろうか。

 

「迦楼羅族は、色んな土地の高山の奥深くにそれぞれ群を作って住んでるんだ。そして、その群を統率しているのが迦楼羅王。迦楼羅王は聖山の山中に居を構えている言われているよ。」


「ひと処に固まって住んでるわけじゃないのね。聖山って?」


「この国の東の外れ、隣国との間にある山のことだよ。」


「あんな切り立った山に・・。」


「人が入る事の難しい所ほど、彼らにとっては良いんだ。人で言う、いわゆる聖域というやつさ。」


ふうんとオリヴィアは相槌を打つ。


「じゃあセルキーは次はそこに行ってくるの?」


「姫様は鋭いね。その通りだよ。姫様は今は竜王様の指輪もあるから安全だしね。」

  

そう言うと、セルキーはぽてっとオリヴィアの肩から降りた。そして、くれぐれも変な男に引っかからないようにと言い残して出掛けてしまった。




そういえば、リントラムに来てから初めて落ち着いたかも。

最近いろいろありすぎたし少し休養しようかしら、なんて考えていたら部屋のドアがノックされた。


「お嬢!入っていいか?」



レオが茶器を載せたトレーに封筒を何通か載せて入ってきた。


封筒の中身はオリヴィアへの面会を求めるもの。少し休もうと思っていたところだったので全部断ろうと思っていたオリヴィアだったが、1通の封筒に目が留まった。



「アイリーン・ウォーカー?最近話題のデザイナーじゃない。」


封筒を手に取りオリヴィアがそう呟くと、レオがお茶を入れながら答えた。


「そうみたいだな。辺境伯領のウォーカー商会の1人娘で、王都に店を構えたり、かなりのやり手の女って話だ。」


「へええ。」


デザイナー、か。女性が頑張ってるのって興味あるわね。けど、なんで私に。他領で、しかもこんな田舎に引っ込んでるのに。


う~んでも服かあ、そうだ、あれ、作って貰えるかも!オリヴィアは竜宮城(ドラゴニアパレス)で気に入ってしまったあの服を思い浮かべ、ニヤついた。


「レオ、私、この方に会ってみようかしら。」




「お初にお目に掛かります、オリヴィア・フォーウッド様。本日はお会い出来て光栄に存じます。私はウォーカー商会 会頭の娘、アイリーン・ウォーカーと申します。」


目の前にいる意志の強い目をした栗毛色の髪の女性にオリヴィアは目を奪われる。


アイリーン・ウォーカーと名乗るデザイナー兼次期会頭は、肩より少し上で切りそろえられた短い髪に、膝下までしかないストンとしたシンプルなラインのドレスとブーツを合わせた姿で、にこやかに挨拶する。


「かっこいい・・!私はオリヴィア・フォーウッドよ。こちらこそお会い出来て光栄だわ。」


オリヴィアは目を輝かせた。

インブリー家へ嫁いでから離婚するまでというもの、自分自身のためというところから少し離れた生活をしていたため、アイリーンのようなこの国の中心で生き生きと働く女性がまぶしい。


アイリーンは話術も巧みで、最近の王都の流行から辺境伯領での話まで次から次へと話題が尽きない。オリヴィアがお願いしたサルワーカミスの製作も快く引き受けてくれて、素材からデザインまで話が盛り上がり、あっという間に時間が過ぎていった。


そして話も終わりかけた時、アイリーンが今までの笑顔から一転、真剣な表情になり口を開いた。



「では、オリヴィア様、本日の本題なのですが・・・。先だって、インブリー領のとある商会が販売開始したというポーションが今、この国の商人の間で密やかな話題となっています。」


アイリーンは落ち着いた口調で話を続ける。


「 従来、ポーションは精霊の子自らが生産せねばならず、そのため生産量が限られ、高価で希少なものでした。質も、製作者の力により様々、偽物も市場に溢れ、高額な粗悪品を掴まされる可能性も多々ありました。それが、その商会は自らの工房で多量の生産に成功し、従来より低価格、しかもその品質は素晴らしく、ばらつきがない。さらに精霊の子自身は生産過程にほぼ関わっていないという。奇跡のような話です。」


情報が早い・・!まだ試験的な販売段階なのに大量生産の話まで。オリヴィアは商人の情報網に驚く。


オリヴィアは少しはぐらかし気味に頷きながら話の続きに耳を傾ける。


「私の故郷、辺境伯領は隣国に接し、軍を有する。それが意味することはおわかりでしょうか。ーーそうです。有事が起こりうる、そして現実問題、小なる有事は幾度も起こっております。もちろん、辺境伯領にもポーションを軍のため、領民のため作る者はいます。けれども、その質と量、どれをとっても新たに販売開始したインブリー領のものに遠く及ばない。」


アイリーンはその意思の強い瞳で真っすぐオリヴィアを見た。


「水の精霊の大いなる加護を持つ、オリヴィア・フォーウッド様。我が商会に、そのポーション製造の権利を売って頂けないでしょうか。」







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